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⑥攻めと守りの「事業承継」息子に莫大な相続税も

コラム・連載
■中小企業の事業承継の現実
中小企業の大半は上場していません。その会社の株式は上場株です。非上場株式の事業承継は大変厳しいのです。特に先代経営者が創業し高収益を上げている会社は、企業の株式は高く評価され、息子である承継者が負担する相続税は大層多額になるのが現実です。
例えば、その会社の株価総額が20億円だとすると、その会社の株式を相続すると、ざっと息子には約10億円の相続税がかかります。この前提で貴方の息子が30台半ばから御社の役員をしているとして、年間に役員報酬を毎年2000万円受取った場合、生活費・所得税を支払って貯金できるのは年間700万円程度です。そして息子の年齢が50台半ばになって親父である貴方から事業承継に直面した場合、息子の預金は1.6億円程度です。株式にかかる相続税10億円には遠く及びません。
この足りない納税資金8.4億円はどうして工面しているのか?というと、この会社が納税資金の不足分を息子に貸し付けるしか手はありません。会社は返済を受けるための原資として、息子の役員報酬を増額しますが、この役員報酬これも所得税・住民税が約50%程度かけられますので、息子の手元には支給額の半分しか残りません。
とどのつまり8.4億円の返済を受けるため、会社はその倍の17億円の支払いをしなければならないのです。これは会社の株式価値総額の85%です。親父から会社を相続した新社長である息子から「親父が死んで莫大な相続税で借金に追われる人生だ」なという悲しい愚痴を聞いた経営者も多いと思いますが、まぎれもない優良な中小企業の事業承継の現実なのです。
■相続対策よりも大きな視野で見据える
かつてバブルの時代には、事業承継問題イコール相続税対策ということでいろいろな奇をてらった節税策が横行しました。しかしバブル崩壊後、採用した節税策は大きな負債となって資産家の破産が相次ぎました。これからの事業承継は、単に相続税対策ではなく社員、販売先や仕入先などの取引先をも巻き込む問題となっています。つまり、一般的な「相続対策」より大きな視野で見据える必要があります。
ですから事業承継の対応策は事前に時間のゆとりを持つことが大切です。まずは現状の分析から始めましょう。今相続が発生したら、どれだけの負担を後継者は負うことになるのか試算します。
次に会社の承継者はいるのか?会社を継がない息子は何を相続するか?遺言書を書いた方がよいのか?納税資金の準備はどうするのか?起こりうるご親族のトラブルを回避する方策を専門家とともに検討します。もし事業承継対策に失敗すると先ほど述べた悲劇的な現実がやってきます、数年をかけて慎重に対応策を実行します。拙速は禁物です。
■成功のポイントは

事業承継対策は、後継者とその周囲にいる人間に関する人的対策と、自社株の評価、移転時期、相続税の納付対策等の物的対策を片付ける必要があります。

人的対策としては後継者の決定、育成、社員と経営者との関係など、いろいろな人間関係に係わる問題点を、事前に解決しておくことが重要です。
物的対策としては相続税、贈与税を考慮したうえでの経営権の移行を考えることが必要です。土地の承継には、正確に評価できる専門家のサポートしてもらうと同時に社長に万が一のことがあった場合の金銭面での対策を講じておくことが必要です。
要するに問題の先送りが一番の問題なのです。会社の成長のため新しい制度も検討しながら前向きに事業承継に取り組んでいきましょう。専門家の意見が必要であればいつでも、NPO東海事業支援機構(TEL:052-231-0078)までご連絡ください。

 


執筆
木全美千夫(きまたみちお)

税理士(きまた会計事務所所長)。社会保険労務士。NPO東海事業支援機構・理事
財務、税務、労務の専門知識を生かした事業再生や事業承継コンサルタントとして活躍。「黒字に転換させる劇的経営 その手法」など著書多数。

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