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第4回:ブランド化で石ころは宝石にならない

コラム・連載

前回は「ブランドは買い手が決める」というテーマでした。我が社はこういうブランドでありたい、と思うだけではダメで、その認識は100%買い手側の判断に委ねられる、ということです。

あなたもおそらく「ちぐはぐで残念なブランド」を見たことがあるのではないでしょうか。その例として、ある農産物のブランド化のケースを紹介します。ある地域が、地元で採れる果物の品種をブランド化しようとしました。専門家を呼び、会合を開き、さまざまなことを決めたのでしょう。品種名を決め、かっこいいウェブサイトを作り、包装や箱などのデザインをリニューアルしました。確かにどれも洗練されていておしゃれで、一流デザイナーが手がけたことがわかります。
でも、「それだけ」なのです。パッケージもウェブサイトも、確かにおしゃれでかっこいい。しかしそれが果物として「買いたくなるか」「食べたくなるか」とはまったく別の話です。もっと根本的なところで、「なぜ他の品種ではなく、その品種を買うべきなのか」の明確な理由が見当たらないのです。デパートの店頭で少しでもおしゃれなパッケージの果物が買いたい、という人であればそれを買うかもしれません。しかしそれ以外には「約束」も「信頼」も何もありませんでした。そのためいつしかそのブランドは立ち消えになってしまいました。
おそらく「農産物もブランド化の時代だ」といった声に影響されてこのようなプロジェクトを始めたのでしょう。あなたも同様に「かっこいいのはわかる。で、何なの?」という商品やサービスに接したことがあるのではないでしょうか。ブランドを理解しないまま表面的なブランド化に邁進した悪い例です。
私がブランドを説明するときによく使う例で「石ころをきれいな紙に包んでも宝石にはならない」があります。ブランド化、というと「見栄えを良くするためにどうやってきれいな紙に包めばいいか」という視点になりがちです。しかし、包み紙をきれいにしたところで、石ころは宝石にはなりません。「ブランド」や「ブランディング」という魔法を使えば突然何かが変わるわけではないのです。
「ということは、宝石を一生懸命に磨いてきれいにすることが大事だ、ということですね。ブランドなんて関係ない、いいものだったらブランディングしなくても売れる、ということですね」
こう解釈されがちですが、必ずしもそうではありません。正しいブランド・ブランディングは効果があります。しかもそれは「石ころをきれいな紙で包む」ことではなく、かといって「いいものを作って売る」だけでもありません。
ここでの大事なポイントはおさらいになりますが「ブランドは買い手が決める」のです。では「いいものを作って売る」の「いいもの」とは何でしょう。これも売る側が「いいもの」だと思ったらそれは「いいもの」になるのではありません。「いいもの」かどうかを決めるのは売り手ではなく買い手です。この徹底した顧客目線がブランドのためには重要です。
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