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第7回:多様化で悩む買い手はブランドを求める

コラム・連載
前回は「買い手をラクにさせることがブランドになる」ことをご紹介しました。いわゆるブランド論やブランドという言葉からのイメージとはかけ離れているので、この定義は驚いた読者の方も多いのではないでしょうか。
ブランドというと「お客様との絆」「信頼の証」などと説明され、だから絆や信頼を大切にしましょう、という解説が多いものです。もちろんそれも間違いではありませんが、それではその絆や信頼を構築するためにはどうすればよいのでしょうか。実行するためにはあいまいな精神論ではなく、具体的に可能なものでなければなりません。その一つが「買い手をラクにする」ことです。
買い手をラクにする」ためのことをされて嬉しくない人はいないはずです。もちろんあえて悩む、あるいは大変な思いをすることがブランドになる場合もありますが、ほとんどの人は大変さよりもラクな方を選ぶものです。それが積み重なれば、「あれにしておけば間違いないよね」というブランドになります。
その背景には裏返しとして、今の買い手はラクではない、ということが挙げられます。あらゆるジャンルについて多様化、細分化が進み、その中から最適なものを選ぶことが無意識のプレッシャーになっています。(余談ですが、書店でトイレに行きたくなるのは「膨大な本に囲まれてそこから最適なものを選ぶプレッシャーのため」という説があります)
例えば30年前に電子レンジを買おうとしたらどのように選んでいたでしょうか。おそらく近所の顔なじみの電気屋さんに行って相談し、店頭商品かカタログから選んでいたはずです。操作法に迷わないよう近所の人と同じ製品を指名買いする、という人もいたかもしれません。
ところが今だったらどうでしょう。電子レンジを売っている店は電気屋さんはもちろんのこと、大型量販店、カタログ通販、さらにネット通販もあります。機能も単純に温めるだけのものから、ヘルシー調理を売り物にした高機能のものまであり、価格も数千円から十万円超までさまざまです。各社がターンテーブルがない、スマートフォンと連携してレシピを読み込む、などと様々な機能を売り物にします。
このように選択肢が多くなると買い手はかえって迷います。昔は馴染みの電気屋さんにおまかせでよかったのが、より適切な機能・適切の価格の電子レンジを選ばなければ、失敗してはいけない、というプレッシャーに晒されるのです。
こんな実例もあります。アメリカで、スーパーマーケットで数種類のジャムを試食販売する、という実験が行われました。ある日は3種類のジャムを、別の日は100種類のジャムを試食販売しました。どちらがより多く売れたかというと、3種類の日の方でした。一見、100種類の方が選択肢の多さから買い手のためになっているように思えます。しかし実際には100種類だと選択肢が多すぎて選ぶことがかえって苦痛になってしまうのです。
今の買い手は情報や選択肢が多すぎて、本来は楽しいものであるはずの最適なものを選ぼうとする活動がかえって苦痛になっています。そのような苦痛を取り除き、根拠と共に「ウチの商品を選べば間違い無いですよ、ラクですよ」と推奨することがブランドにつながるのです。
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