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経営をITで変える

事例 No.006
山王テクノアーツ株式会社 独自開発の生産管理システムとSharePointによる文書管理が従業員の力を引き出した

山王テクノアーツ株式会社
代表取締役社長  田中祐氏
導入効果 情報共有 業務効率改善

企業プロフィール

企業名:山王テクノアーツ株式会社

所在地:東京都中野区

業種名:製造、販売

従業員:38名

工業用ラベル製造の山王テクノアーツは、生産管理と文書管理システムを新規に導入し、業務の圧倒的な効率化を実現した。システムの構築は、社長がたった1人で行ったという。このようなことを可能にするWindows Small Business Serverのパワーとは?

Before:IT導入前の経営課題 After:ITサービス導入後の効果
紙ベースの業務フローの為、工程管理の共有に問題があった
ISO 9000準拠の文書管理を紙ベースで行っていた結果、大量のコピーが発生するなど、非常に煩雑な作業を繰り返していた。
生産管理システム導入により、受注状況、生産工程の情報共有が可能になり、ミスも減少した。
文書管理をSharePointに一元化することにより、文書の承認処理も驚くほど簡素化することができた

導入ソフト

Windows SB Server 2003

SharePoint

 

業務上のネックとなっていた紙ベースのやり取り


東京・中野の山王テクノアーツは、工業用ラベルの製造を行っている。
その耐候性と識別性は業界でも評価が高い

 さまざまな交通機関で使われている識別標識、あるいは工業製品のロゴマークなどに利用されている貼り付け式のラベルは、われわれの生活の中でもなじみのあるものが多い。山王テクノアーツが手がけているのは、そうした特殊な工業用ラベルの製造だ。同社が製作するラベルは航空機内の案内表示や新幹線の車両マーキングなどに幅広く使われており、その耐候性と識別性は業界でも高い評価を得ている。

 こうした印刷技術には定評のある山王テクノアーツだが、2年ほど前までその業務フローは紙ベースの極めてアナログなものであった。まず、取引先から注文を受けたら、本社(東京・中野)で作業仕様書を作成。この仕様書と図面データを八王子にある自社工場に配達業者を使って送る。工場では、受け取った仕様書と図面をもとに、印刷用の版と抜き型(指定された形にラベルをくり抜くための型)を用意し、印刷を行う。印刷物は工場と本社で検査し、取引先に納品 という流れだ。

 この業務フローには問題がいくつもあった。1つは、本社で作った作業仕様書をそのまま工場に送るため、本社側では工程管理が行えなくなってしまうこと。もう1つは、工場側でどれだけの仕事をいつまでにこなさなければならないのか見通せないことだ。

 「かつては、工場の製造ラインマネジャーが毎週月曜日に早朝出勤をして、その週に行う仕事のリストを作って指示を出していました。」(山王テクノアーツ 代表取締役社長 田中祐氏)

 このようなやり方は効率が悪いだけでなく、事故の原因にもなりかねない。事実、作業仕様書が紛失してしまい、あやうく納期遅れを起こしそうになったこともあったという。

Webサーバから文書管理機能まですべて欲しい、そこでSB Serverを導入


Windows SB Server導入前のネットワーク構成。全部で4台のパソコンが使われていたが、ネットワーク化はされていなかった。拠点間の通信には、プロバイダのメールアカウントを使用

 2004年4月、常務取締役として入社した田中氏は、半年間の工場研修を体験して、業務フローの改革が急務であると痛感した。最重要課題は、工程管理がきちんと行えるようにすることである。そのためには、作業の進捗状況を本社と工場のどちらからでも確認できるWebアプリケーションを導入したい。とはいうものの、IT化のための予算が潤沢にあるわけではない。以前IT系企業に勤めていたこともある田中氏は、ExcelやAccessによる簡易的な生産管理システムを作ったことがあり、それを発展させた仕組みを自分で構築しようと考える。また、請求書や納品書などの販売管理もすべて手書きで行っていたため、莫大な処理作業が生じていた。これを、販売管理ソフトウェアを導入することで効率化したい。

 社内のメール環境も刷新が必要だった。以前より本社と工場には2台ずつのPCが導入されていたが、LANは組まれておらず、インターネットへのアクセスもISDNによるダイアルアップ接続という有様だった。


Windows SB Server導入後のネットワーク構成。Windows SB Serverに含まれるExchangeを利用して、社内・社外のメールを管理している。Webアプリケーションなどもすべて本社のWindows SB Serverに集約し、工場からはVPN経由でアクセスする構成になっている

 さらに、同社では時期を同じくして、ISO9000の認証を取得したものの、紙ベースの文書管理の煩雑さに頭を悩ませていた。「ISO規格の要求事項」を満たしつつ、より簡素化・効率化された文書管理のために、まだまだ工夫の余地があるように思えた。

 Webアプリケーションを動作させるためのWebサーバとデータベースサーバ、メール環境を構築するためのメールサーバに、文書管理システム。そして専門家でなくともシステムを容易に構築できて、できる限り低価格に導入できるもの……。何とも欲張りな要求ではあったが、この条件を1パッケージで満たす製品が、マイクロソフトのWindows Small Business Server 2003(SB Server)であった。

 田中氏は、Windows SB Serverプリインストールのサーバマシンを購入して中野の本社に設置。八王子の工場にはWindows 2000 Serverマシンを置き、工場と本社はNTT東日本のBフレッツで結ぶことにした。この2台のサーバマシンの下には全部で15台のクライアントパソコン がぶら下がり、サーバどうしの通信はVPNで行われる。元IT企業社員とはいえ、これらのシステムをセッティグするにはかなり苦労したのではないだろうか。

 「私も専門家ではありませんから、ブロードバンドルータの設定で少し悩んだりしました。しかし、Windows SB Serverについては、何とかなるだろうといじり始めたら意外なほどすんなり行きましたね。SQL ServerやExchangeもウィザードがあるおかげでほとんど迷いませんでした」

自前で構築した生産管理システムで、不良率が大幅に減少


山王テクノアーツで製造されたラベルは、東北新幹線の車両マーキングにも使用されている

 サーバの導入が終わると、田中氏は肝となるセルフメイドのWebアプリケーション、生産管理システム「SOS」(Sanno Order System)を稼働させた。取引先から注文を受けると、本社では紙の作業仕様書を作ると同時に、SOSへも同じデータを入力する(紙の仕様書も作るのは二度手間のようだが、この仕様書に仕上がり見本となる印刷サンプルを添付することになっているため)。工場側では紙の作業仕様書を受け取ると、SOS上で「仕様書の受け入れ」をチェック。個々の工程や検査についてもチェック項目があり、各工程の担当者がすべてをチェックしないと作業が完了しないようになっている。これにより、工程飛ばしや作業仕様書の書き間違い・読み間違いといったミスがなくなり、不良率が大幅に減った。もちろん、どのパソコンからも注文 がどの工程にあるのかを確認できるのはいうまでもない。

 さらにSOSでは工程に重み付けのポイントを設定し、それぞれの注文について作業ポイントを算出している。これにより、工場で行う大まかな作業量の目安が付けられるというわけだ。今週は余裕があるが、来週はかなり詰まっているから、今週のうちに前倒しして作業するといったマネジメントができるよう になる。


注文ごとに、ラベルの製造工程は大きく変わってくる。SOSによって、どの担当者がどの工程をどの順番に行えばよいか、一目で分かるようになった

 SOSを導入したことで、現場も営業も仕事全体を見通せる「目」を持った。これまでは目先の仕事を片付けるのに精一杯だった現場も、進捗状況や不良率が把握できるようになると俄然効率を上げようという気持ちが盛り上がる。

 このSOSは田中氏が自ら開発したものだが、彼はプログラマだったわけではなく、あくまでも趣味的にVisual Basicでのプログラミングを楽しんでいたのだという。なぜここまで実用的なWebアプリケーションを構築できたのか? その秘密は、Windows SB Serverを支える基盤技術の1つ、ASP.NETにある。ASP.NETはWebアプリケーションを開発するための枠組みで、マイクロソフトから 「Microsoft ASP.NET Web Matrix」という開発ツールが無償で提供されている。これを利用すると、ボタンなどの要素をドラッグ&ドロップして画面設計が行え、データベースへのアクセスなども簡単にできる。

 もちろん、田中氏のようにWebアプリケーションを開発するにはさまざまなノウハウが要求される。しかし、外部に開発を委託する場合でも、高度なWebアプリケーションを少ない手間で構築できるASP.NETのメリットは大きい。

ISO 9000準拠の文書管理を手軽に行えるSharePoint

 SOSと共に業務の効率化に大きく寄与しているのが、Windows SharePoint Servicesだ。

 山王テクノアーツでは、Windows SB Server導入前からISO 9000シリーズの認証を取得しており、これに基づく文書管理を行っていた。しかし、紙ベースの文書管理では大量のコピーが発生するなど、非常に煩雑な作業を繰り返して行わなければならなくなる。そこで、文書管理をWindows SB Server上のSharePointに一元化することにした。文書の履歴を手軽に閲覧できるのはもちろん、文書の承認処理も驚くほど簡素化することがで きたという。

 「ISO 9000の審査員の方からも、こんなによいものがあるんですね、と感心されました」(田中氏)

 さらに、SharePointの掲示板機能を使い、商品の不良やクレーム管理も行っている。これによって、どのような案件があり、それぞれの対応 状況を全員が把握できる。田中氏によると、クレーム対処が迅速になったおかげで、Windows SB Server導入前に比べて顧客満足度もアップしたという。ちなみに、SharePointについてはほとんど標準状態のまま使っており、クレーム登録用 の文書テンプレートに少し手を入れた程度だそうだ。

 また、Windows SB Serverはシステム管理上のメリットも大きいと田中氏はいう。例えば、工場のスタッフから操作方法が分からないという問い合わせが来た場合、リモートアシスタント機能を使って、クライアントパソコンを本社側から操作できる。


 そして、特に役立っているのがマイドキュメント フォルダのリダイレクト機能だ。Windows SB Serverには、クライアントパソコンの「マイドキュメント」フォルダをサーバ上の共有フォルダに割り当てる機能が備わっている。つまり、ユーザーはどのパソコンからでも、自分が普段使っている作業環境を呼び出せるわけだ。データのバックアップもサーバ側で一括して行えばよく、クライアントパソコンごと にバックアップをする必要がない。

 いうまでもなく、システムベンダーの仕事は、顧客が事業に専念できる情報通信インフラ・サービスを実現し、提供することだ。それが技術的な側面を持つのは当然として、それと同時に、会社のビジョンを共有すること、あるいは月並みな言葉で表現すれば、“夢”を共有することが大切なのだということだろう。また、そうでなければ、満足できるサービスを提供することは難しいということかもしれない。

 山王テクノアーツがWindows SB Serverを導入してからまもなく1年半になる。現在は、SOSやSharePointに加え、サードパーティー製の販売管理ソフトや営業支援ソフトも Windows SB Server上で稼働している。また今後は、自社ホームページのホスティングや、携帯電話からもアクセス可能な見積支援システムなども、全て Windows SB Server上に構築していく予定だ。

 「Windows SB Serverは、いまや水や空気と同じくらいなくてはならないものになりました。工場や営業のスタッフと飲んでいて、『1年半前から考えると、信じられないくらい会社が改善された』と言ってもらえた時はうれしかったですね」(田中氏)

 田中氏に、中小企業におけるIT化のポイントについて聞いてみた。

 「トヨタ流のカイゼンやQC活動、シックス・シグマなど、いろいろな業務改善手法はありますが、どのようなやり方を選ぶにせよ、原点は業務の問題点をいかにすくい上げるかということにあると思います。ベンダーさんにシステム導入や開発をお願いするときも、自社の現状の問題点をいかに的確に伝えることが出来るかが、最大のポイントになるでしょう。『ITを入れればこんなに効率化できる』と頭ごなしに決めつけるのではなく、現場の当事者の意見を傾聴し、現場の視点からの問題点を捉えることも重要です。しかし、せっかく問題点をすくい上げても、改善手法を思い付かなければ『うん、分かった。でも今は、とにかく頑張るしかない』という結論になりかねません。ITに限りませんが、今の技術でどのような改善を図ることができるようになっているのか、経営者が 常に情報収集を怠らず、引き出しをたくさん持っておくようにすべきでしょう」(田中氏)


SOSの新規注文入力画面。顧客や作業情報等もリストから選択するだけで簡単に入力できる。また、この画面から工場側のキャパシティを確認可能だ


SOSの仕事量確認画面。作業量がキャパシティを超えている場合、赤く表示される


SharePointを利用して、クレームや不良品の情報を共有している。各案件の対応状況や担当者を確認できる


クレーム案件の登録画面。テンプレートを少しカスタマイズして、ラジオボタンなどを追加。必要事項を入力しやすくしている


社内マニュアルなどもすべてSharePoint上に置いて、従業員全員がいつでも見られるようにしている


【企画:アイティメディア 営業局/制作:ITmediaエンタープライズ 編集部/再編:経革広場】

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