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中小企業に対する基盤強化
税制の上手な活用の仕方
 

【6回シリーズ】
中小企業に対する基盤強化税制の上手な活用の仕方

(1)経営戦略と中小企業の基盤強化税制の活用
  

税理士・中小企業診断士・ITコーディネータ 吉川 孝
税理士法人 さっぽろ経営センター 社員税理士
日成コンサルティング株式会社 代表取締役社長
NPO法人 地域経営改善研究会 理事長
全国IT推進研究会 副会長
NPO法人 電子決算公告推進協議会 理事




「中小企業の経営基盤の強化」を促進することを目的とする政策があり、これに呼応する税法の規定が、いわゆる「中小企業基盤強化税制」といわれるものです。

この「中小企業の経営基盤の強化」という表現は、中小企業基本法の第二章の表題にあり、日本の中小企業政策の中でも重要な位置を占めていることを示しています。
中小企業基本法というのは、日本の中小企業に対する政策の基本理念や方針、その活動の方向を規定する基本となるもので、中小企業政策の憲法とも言えるものです。

中小企業基本法における「中小企業の経営基盤の強化」とは、経営や管理の改善や技術の向上その他のために必要な「経営資源の確保」を意味します。
一般に「経営資源」を、ヒト・モノ・カネと表現しますが、他に、時間、情報、技術、信用、マネジメント力、組織文化、チャネル、アライアンスなど様々な資源が経営の維持存続と発展には必要となります。
また、「経営資源」を、「目に見える経営資源」と「目に見えない経営資源」に分けるという考え方もありますが、これからの中小企業にとって特に大切なのは「目に見えない経営資源」、或いは“ソフトな経営資源”や“知的資源”といっていいと思います。

「目に見える経営資源」の代表は何と言っても大切な“お金”、企業の「財務力」です。そして、情報通信機器や製造等設備機械などの「設備力」です。
商品力も目に見えるモノではありますが、市場における競争力を決するのはモノ自身ではなく、そのモノが顧客や市場に提供するサービス価値や満足の差別化であったり、価格や提供方法の利便性であったりします。
一方「目に見えない経営資源」の代表は“ヒト”です。
企業経営を成長に導くには、必ずそこに明瞭で的確な経営戦略・市場戦略が存在します。これも紛れもなく経営の基本となる「目に見えない経営資源」です。
経営戦略の実現を可能にし、かつ、実践を支えるのは、「人材力」(個人の有する意識、知識、および技能など)であり、「人材力」が担う「情報力」、「技術力」その他の経営の革新や新たな事業に挑戦するための事業活動に活用される知的資源があります。

つまり、適切で効果的な「経営資源の確保」を図ること、すなわち、経営戦略を実現するために有効な経営資源への投資こそが、企業を維持存続させるために最も重要な経営者にとっての仕事なのです。
これらの「経営資源の確保」による「経営基盤の強化」を側面的に支援し円滑にするために設けられた税制面の施策が、中小企業のための基盤強化税制です。

ですから、中小企業のための基盤強化税制は、単にその制度を知っているだけでは経営に活かすことは難しく、それぞれの企業が理念ビジョンや目標、戦略を持ち、計画的に特定の経営資源の確保のための投資を行おうとするときに使える制度といえます。

多くの中小企業の経営者には、税法といえば既成や束縛、税金を取るもの、或いは、経理会計の延長線上で事務処理として会計部署の担当者か、税理士等の外部の専門家に任せておけばいいものとして捉えられがちですが、このような中小企業の健全化や成長促進の政策と一体となった基盤強化税制を活用するためには、その意識を変えて経営に密接な事柄として取り組むことが必要です。

主な中小企業のための基盤強化税制を、自社の経営戦略や経営課題と照らし合わせて検討し活用すること容易になるように、経営基盤の強化の五つの側面(「財務力」「設備力」「人材力」「情報力」「技術力」)に分けて理解してみましょう。

「財務力」
留保金課税制度の不適用又は課税要件緩和

「人材力」
人材投資促進税制=教育訓練費の増加に対する特別税額控除制度(~17年度新設)

「情報力」
情報基盤強化税制=ネットワークと情報セキュリティ投資に対する特別償却と特別税額控除制度(平成18年度新設)

「設備力」
中小企業投資促進税制の拡充=特定の設備投資に対する特別償却又は特別税額控除制度、並びに、少額減価償却資産の損金算入特例

「技術力」
中小企業技術基盤強化税制=試験研究費に係る特別税額控除制度

次回、(2)「財務力という経営基盤の強化」 6/14(水)公開予定