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新会社法

『新会社法』 〜 6回シリーズ 〜

4.新会社法の活用で事業拡大はできますか?

  

BFL経営財務研究所 杉田 利雄
SAS-Web Partner
NPO電子決算公告推進協議会 理事



新会社法の施行(2006.5)に企業経営者として、どのように対応したらよいのか?
筆者の推奨する対応スタンスは「あわてる必要はないが大いに勉強すべし」というものです。 これは、日本の法人企業の9割以上を占める一般的な中小企業(株式譲渡制限会社)に対しても言えることで、 新会社法はうまく活用すると、企業の経営戦略に大いに役立つのです。

1) 新会社法の特徴

新会社法は、法人格としての会社について規定したもので商法改正の延長線上にあります。ただし今回、商法の改正ではなく「会社法」というあえて新法典としてデビューさせたのは、次に示すような大きな変化があったからといえます。

1-1) 法のメインターゲットを一般的な中小企業にフォーカスした

旧商法が想定していた株式会社は、公開会社(株式譲渡制限のない会社)や大会社(資本金5億円以上)でした。会社を運営するための資金を株式という方式を用いて広く(金融・資本)市場から調達するものして立法されていました。
しかし現実には、資本金が5億円以上の会社は、9,900社(2003年国税庁法人標本調査)に過ぎません。この比率は、新会社法が規定する株式会社(特例有限会社含む)約250万社の0.4%に過ぎません。そこで、新会社法では、法のメインターゲットを一般的な中小企業(株式譲渡制限会社&大会社以外)にフォーカスしています。つまり同法が想定する原則的な株式会社は、「株式譲渡制限会社」であり例外として「公開会社」を位置づけています。
つまり例外と原則が逆転したわけで、商法(第2編)と会社法の一番の違いがここにあります。

1-2) 定款自治の範囲が拡大した

定款には、事業目的や組織など、会社経営の基本的ルールが定められています。定款自治の範囲拡大とは、会社が決めることができるルールの幅が拡大したということです。旧商法においても定款自治の範囲を変えることができましたが、法律に明文規定が少なく、いわゆる解釈に委ねられていました。
これに対し会社法では、定款自治について網羅的に明文化されました。このため商法規定の解釈よりも定款自治の範囲や内容が大きく拡大しました。
定款自治の拡大により一般的な中小企業(いわゆる株式譲渡制限会社)では、次のようなことができるようになりました。(一例)

  1. 商法では3名以上必要だった取締役を1名、2名とすること
  2. 監査役を置かないこと
  3. 取締役の任期を2年から最長10年に、監査役の任期を4年から最長10年にすること
  4. 取締役会を置かないこと
  5. 種類株式を複数発行すること
  6. 取締役会決議による剰余金の分配

1-3)規律の明確化が進んだ

会社法は、会社にかかる利害関係者の行為規範としての機能を持っています。このため、裁判法規としての色合いの濃い民法等とは異なり、法律の適用範囲やその解釈、法律効用等をできる限り明確にする必要がありました。そこで、新会社法では以下の点に留意したとされています。

  1. できる限り準用規定をなくして、共通規定として1箇所にまとめた
  2. 法律の適用関係・効果を明確化した
  3. 解釈にゆだねられていた規律を明確にした
その結果、会社法は口語体となっただけでなく、マニュアルに近い規定の仕方となり実務的に利用しやすい法典となりました。

2)会社法を活用した企業戦略の多様化

会社法が口語体としてわかり易くなったり、定款自治が拡大されたりしたといっても、経営上のメリットやダメージがなければ、会社法の研究や対応に関わる必要がありません。ここでは、会社法の変化(商法から会社法へ)に着目して経営課題の対応や採りうる企業戦略について考察します。

2-1) 株式会社の設立が容易になった

  • 最低資本金制度の廃止
  • 現物出資等に係る検査薬調査制度の免除範囲の拡大
  • 類似商号規制の緩和
  • 払込保管証明制度の廃止
上記条項から株式会社の設立が容易になったといえます。企業戦略としては、最適な資本構成の会社をタイムリーに作ることができることです。このことは、企業の市場戦略にも意味を持ち、また従業員のモチベーションアップという人事戦略や事業拡大のための資金調達などの財務戦略にも応用できるはずです。

2-2)種類株式の多様化と取扱の柔軟化

株式は会社への出資を意味し、株式の所有者は一般的に株主として議決権や配当権などさまざまな権利が付与されます。株主の権利は株数に比例し原則として平等です。種類株式とは株主権利の例外規定と考えてください。株式の内容についてその会社が発行するすべての株式を規定する「株式の内容の特別な定め」(107条)を種類株と間違いやすいが、この場合は全部の株式の規定であることから種類株とは呼びません。

 1:株式の内容の特別な定め  

     
  1. 譲渡制限株式 ・・・中小企業においては一般的で「非公開会社」と呼ぶ  
  2. 取得請求権付株式  
  3. 取得条項付株式  
 2:種類株式(108条)
 株式会社(一部事項は、非公開会社に限定)は、以下の種類株式を若干の制約はあるものの株主(株式)毎に分けて発行することができます。  
     
  1. 剰余金の配当(優先株・劣後株)  
  2. 残余財産の分配(優先株・劣後株)  
  3. 議決権制限株式  
  4. 譲渡制限株式  
  5. 取得請求権付株式  
  6. 取得条項付株式  
  7. 全部取得条項付種類株式  
  8. 拒否権付種類株式(いわゆる黄金株)  
  9. 取締役・監査役選任権付株式(上場会社は発行できない)  
上記9種の株式の組み合わせによって、事業承継対策に活用したり、経営権を排除した資金調達に活用したり、新株発行時の予約を付与することで従業員のモチベーションを上げたりすることができます。

種類株式の企業戦略への活用については、図解を含めた相当量の解説を必要とします。これに最適な解説書が中小企業庁のWebサイトで入手できます。PDFダウンロード版は無料で、冊子タイプは送料のみを負担することになります。
 http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/kaisya/kaisyahou33/kaisyahou.htm
ぜひ活用してください。