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新会社法

『新会社法』 〜 6回シリーズ 〜

3.会社法の施行!小さな会社でも気にしなければならない点はありますか?

  

BFL経営財務研究所 杉田 利雄
SAS-Web Partner
NPO電子決算公告推進協議会 理事



既存の株式会社において、それほど神経質に対応しなければならない問題はないと言って良いでしょう。というのは、会社法の施行に伴い 「登記事項」のルール・法令(法律・政令・省令など)が変更されていますが、ほとんどの変更事項において「みなし規定」が適用されることから、 何もしなくても大きな不利益を生じることはないはずです。何を言っているのか判りにくいかもしれませんので、事例を挙げます。
会社法では、これまでの商法が規定していた「資本の額」という登記事項はなくなり「資本金の額」と改定されましたが、改めて登記しなくても 法務局(登記所)の職権で自動的に「資本の額」に変更されます。同じようことが、「発行する株式の総数」は「発行可能株式総数」に、 「1単元の株式の数」は「発行可能株式総数」に変更されます。

ただ1点確認したいのは、会社が昭和40年代までに設立されていた場合に、株式の譲渡制限に関する規定です。譲渡制限規定がないと、「公開会社」扱いになります。 そんな簡単に「公開会社になるならラッキー」などと考えないでください。公開会社とは、株式上場会社のことではありません。上場会社のメリットは、何も受ける ことができずに、公開会社として(会社法施行規則に定められる)事業報告の記載事項が大幅に増えるなどの手間のかかる作業がいくつも増えることになります。

気にしなければならない点はありませんが、せっかく会社法に興味や関心を持ったのですから、入り口だけでも会社法に触れてみましょう。

1) 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)の入手

経営者の方は、自社の登記簿謄本を入手してみましょう。誰でも登記所に「登記事項証明書交付申請書」を提出し、交付を請求することができます。申請者の印鑑は不要です。 1通につき1,000円の手数料がかかります。郵送による申請も可能です。
どうしても忙しい方は、インターネット上の登記簿取得代行サービス(http://www.toukibo.net/)などを使う手もあります。ちなみにここで紹介した取得代行は、1通あたり1,575円の料金です。

2) 登記簿謄本で分かること分からないこと

●株式会社の登記簿謄本で分かる主なこと

  • 商号(会社の名前)
  • 本店所在地(会社の住所)
  • 公告の方法
  • 設立年月日
  • 会社の目的(事業内容)
  • 株の情報(何株発行している、資本金の額、株式の譲渡制限)
  • 役員の情報(代表取締役.取締役.監査役)
  • その他登記記録に関する事項など

●登記簿謄本で以外にも分からないこと
  • 株主は誰なのか
  • 決算月はいつなのか
  • 会社の財産に関する事項

株式会社には決算公告の義務が課せられているため、会社の財産状況は、決算公告(新聞や官報、Webなど)で賄うというのが建前です。しかし現実に決算公告義務を果たしている会社は、 全体の2%程度といわれています。これでは如何にもマズイ。法治国家とはいえない。法は作れど「放置コッカ」などと愚痴を言いたくなったりします。

3) 会社法を会社経営に積極的に活かすには

「会社法を会社経営に積極的に活かす法」というようなタイトルの書籍やセミナーがたくさんあるように、実に大きなサブタイトルを付けてしまいました。 どうも的を絞らないと、話が進まないようです。そこで、会社法と経費節減(コストダウン)としてみましょうか。

3-1)機関設計の見直しによるコストダウン

現状の株主構成が家族的であって、将来に渡って、増資による資本金の増強をしないようであれば、取締役1名・監査役なしの最小機関設定します。 しかも、取締役の任期を最大の10年にします。すると、取締役会の開催(召集や議事録作成など)に関するコスト削減になります。役員変更登記のコスト削減も図れます。 もし、株式会社とうい形態にこだわらないのであれば、合同会社(LLC)に組織変更すると、決算公告の義務がなくなりますので、決算公告コストも削減できます。 定款変更は個人でもできますので挑戦してみるのも一手です。経営者がそんなことしている暇がないというのであれば、専門家(司法書士、行政書士)に手続きを 依頼するのも手です。
ただし、どのような機関設計にするのかの判断は、経営者が行います。

3-2)関連会社の再編(統合、分割、増減資)によるコストダウン

会社をいくつも経営している方(人、一族)がいます。会社は、法人として存在しているだけで、登記や計算書類の作成、税務申告、納税負担などさまざまなコストを必要とします。 会社法の施行によって、事業再編が簡単になりました(以前に比べて)。

会社法の施行をひとつの機会と捉えて、関連会社・関係会社の再編を模索してはいかがでしょうか。たとえば法人の住民税は、資本金の額によって「均等割り」が増減します。 ちなみに1000万円以下では7万円だったものが、1000万円を1円でも超えると17万円と倍以上になります。減資のメリットは他にもあり、これまでの累損(赤字決算の堆積額)を 減らしたり、なくしたりする効用もあります。
このような視点で、会社法を眺めてみるのも悪くないはずです。

3-3) コンサルタント(会計事務所等)の使い方

これまで話したような、会社の機関設計の見直しや事業再編において、司法書士や税理士などプロのマネジメント・サービスを活用することも多いはずです。 新会社法の施行でこのマネジメント・サービスの活用のあり方がどのように変化するのか考えてみます。

会社法はその骨子を概観するだけでも、規制緩和と手続きの簡略化の方向に進んでいることを読み取ることができます。手続きの簡略化が進むということは、 専門家(プロ)でなくても、いわば誰でも手続きできる、その範囲が拡大するということを示唆しています。一方で各省庁を頂点とする様々な行政機関は、 インターネット(Webサイト)や行政窓口を通じて、申請書類の公開や申請手順のアドバイスを実施しています。
これらによって多くの経営者が、専門家(プロ)に依頼したり依存したりすることなく、自ら株式会社の機関変更(登記)やLLC、LLPの設立、 組織再編に伴う事務手続きを行うことができるようになります。

では、専門家(プロ)を活用する必要や機会が激減するのかというと、そうではないと思うのです。専門家(プロ)使い方が代わってくるのでしょう。
これまではどちらかというと、手続きが煩雑だったり面倒だったりするからその作業代行として専門家(プロ)を使ってきました。専門家の側もそのように 考える人が多かったようです。しかしこれからは、変化への対応や戦略的意思決定のアドバイザーやコンサルタントして専門化(プロ)を活用しなければなりません。

規制緩和によって経営の自由度が増すということは、目標達成の選択肢が増えるということです。経営者は、経営の方針や事業構想を専門家(プロ)に伝え、 その課題達成の最適案を専門家(プロ)から意見として入手します。最終判断は経営者がするものとしても、専門家(プロ)のアドバイスによって課題達成の 確立は格段に上昇します。専門家(プロ)を事務代行や作業代行として利用する時代は、プロの側からも利用者側からも、もうそろそろ終わりにしたいものです。