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『新会社法』 〜 6回シリーズ 〜
2.会社法の施行でビジネスが混乱するって本当ですか?
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前回のコラムで「会社法が施行されてもことさらに慌てる必要はない」と申し上げました。例えば、2006年5月1日をもって有限会社(という法人形態)はなくなりました。しかし、新法における株式会社の特例として、従来のままの「有限会社」という呼称を用いた事業を継続することが認められています。このように新法(会社法)は、経済社会の混乱を避けるため随所に「みなし規定」や「経過処置」などの特例規定を設けています。従って、慌ててコンサルタントのドアを叩いたり、専門書を買いあさったりする必要はありません。
では、経営者は会社法について無頓着で居て良いのでしょうか? 答えは、無頓着ではダメ。一度はしっかりと、会社法対策会議を開く必要があります。
- 経営者として最低限「知っとくこと」を抑えます・・・・・法律は知らなかったでは済まされません
- 当社の経営にメリットやチャンスがあるのか分析や研究をします・・・・・変化には必ず機会と危機がある
- 会社法に関するリスク分析と対策を行います・・・・・リスクマネジメントは経営者の重要課題です
では、新法の概要からおさえます。
1) 新会社法の概要
表1の通り、新会社法では、有限会社が無くなり株式会社という規格に統合されました。旧商法では4種類(株式会社、有限会社、合資会社、合名会社)であった会社の定義のうち、有限会社を株式に統合し、新たに合同会社を加えた新たな4分類となりました。
このうち合名会社、合資会社、合同会社の3種類をひとくくりの「持分会社」と総称し、株式会社と区分します。合同会社は、日本版LLC(Limited Liability Company)といえるもので、きわめて柔軟な自治経営を行うことができる形態であることから新法(会社法)の目玉として注目を集めています。
新会社法において有限会社を廃止し(現行の有限会社は存続可能)株式会社に統合した背景には、現状における株式会社の規模や経営(組織)形態のばらつきの多さに配慮したものです。株式会社の中には、トヨタのように売上で20兆円を超える企業がある一方で、株主も社員も親族だけという小さな事業も少なくありません。小さな会社にいたっては、取締役3名以上という規定をクリアするため名目上の取締役を置くケースが散見されました。このような会社は、旧商法では有限会社を想定していたが、社会の評価や認知を気にして株式会社を選択する例も多かった。新会社法は、この有限会社廃止のように、経済の実態に法律を合わせたものということができます。
2) 新会社法による「株式会社の分類」
新会社法では、株式会社を規模の大小と株式公開の有無の2軸(2×2=4、大会社の公開会社など)で区分し、会社の実態に合わせ、さまざまな機関(株主総会や取締役会などの意思決定や経営監督の機関)設計を可能なものとしました。特に中小会社の株式譲渡制限会社(株式未公開会社)については、経営の実情に合わせ次のような簡易な会社運営を可能とした、特徴を持っています。
- 取締役会を置かなくてもよい(取締役1名は最低限必要)
- 監査役を置かなくてもよい
- 最低資本金制度を設けない
- 定款により取締役の任期を10年まで延長できる
- 類似商号を厳格にチェックしない
これらにより、現状の中小企業の実態に合わせた経営体制が可能となり、現行の有限会社と同様の簡易な機関設計の株式会社を選択できるようになりました。言い方を変えると、誰でも安易に(イージー)に株式会社を作ることができる「株式会社の粗製乱造時代」ということができます。
表1
現行の会社関連法の体系
(商法第2編、有限会社法、商法特例法) |
| 会社の形態 | 会社の特徴 |
| 株式会社 |
種類:(円、以上を略記)
- 大会社(資本金5億上又は負債総額200億上)
- 中会社(資本金1億上かつ負債総額200億未満)
- 小会社(資本金1億下かつ負債総額200億未満)
最低資本金:1000万円
株主の責任:有限責任(出資の範囲)
会社の機関:総会+取締役会+監査役(会)
※または、委員会等設置(大会社に限り任意選択)
取締役会の書面決議:不可
議決権等特段の定め:置けない
決算公告義務:あり
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| 有限会社 |
最低資本金:300万円
会社の機関:取締役1名以上、取締役会・監査役なし、取締役の任期なし
議決権等特段の定め:定款に置くことが可能
決算公告義務:なし
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| 合資会社 | 合資会社(無限責任社員と有限責任社員が混在) |
| 合名会社 | 合名会社(無限責任社員のみより構成) |
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| 新会社法 |
| 会社の形態 | 会社の特徴 |
| 株式会社 |
種類:(円、以上を略記)
- 大会社(資本金5億上又は負債総額200億上)
- 大会社以外の会社(上記以外の中小会社)
- 株式譲渡制限会社(すべての株式が譲渡制限)
- 公開会社(株式譲渡制限でない会社)
最低資本金規制:なし
機関:会計参与など柔軟性のある設計可能。
特に、譲渡制限会社は自由な機関を選択可能。
- 総会+取締役会+監査役
- 総会+取締役会+会計参与
- 総会+取締役会+監査役+会計参与
- 総会+取締役
- 総会+取締役+監査役
- 総会+取締役+会計参与
取締役及び会計参与の任期は原則2年、監査役の任期は原則4年。ただし、譲渡制限会社は定款により最大10年まで延長可能。
取締役の員数は、取締役会を置かない場合は1人以上、置く場合は3人以上。(譲渡制限株式会社のみ取締役会を置かない機関設計の選択が可能)
取締役会の書面決議:可能
議決権等特段の定め:可能(譲渡制限会社のみ)
決算公告義務:あり
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持分会社
(合名会社、合資会社、合同会社) |
合名会社・合資会社を一本化
(有限責任社員がいない合資会社=合名会社)
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合同会社:(新設)
出資者の有限責任が確保され、会社の内部関係については組合的規律が適用される新たな会社類型(日本版LLC)
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| 有限責任事業組合(LLP) | 組合出資者の有限責任を確保する民法組合の特例制度 |
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3) 株式会社の粗製乱造時代
新会社法の最大級の特徴は、株式会社を作りやすくなったことです。次に示すとおり、最低資本金制度が撤廃されるなど、少ない資金で起業できるばかりでなく、従来と比べ株式会社の創業は極めて簡易になりました。この安易に設立できる「株式会社」は、企業を成長させる武器にもなれば、自社が攻撃される際の道具にもなります。メリットとリスクを分けて考えてみます。
- 最低資本金制度の撤廃
- 少ない資金で会社設立できる、戦略的な会社設立や運営を可能とする
- 商号規制の緩和
- 類似商号チェック手続きの廃止(同一住所は不可)により従来よりも自由な商号を使える(ただし、著名な商号は保護対象)
- 会社の目的(定款上)について、従来よりも記載基準が緩和し包括記載が認められることから起業しやすくなる
- 登記手続き規制の緩和
- 銀行等の払込金保管証明が不要となり残高証明等で可能となる(発起設立の場合)
- 従来は資本金を一定期間銀行に置いた上で払込金保管証明を得たうえで、これを添えた登記手続きが必要だった
- 会社の機関に関する規制の緩和(中小会社+一部、株式譲渡制限会社)
- 取締役は一人でも良い
- 監査役はいなくても良い
- 取締役の任期を10年まで延長できるため登記手続きを頻繁に行わなくても良い
3-1) 前向きな会社創業(設立)というメリット
以上のように新会社法には、起業奨励策とでも呼べる「さまざまな案」が盛り込まれています。この背景には、起業促進による経済活性という国家の意思を感じることができます。1990年代以降の米国の好景気は、年間約50万社の起業が原動力となっているという見解もあります。50万社の起業の裏では、約40万社の倒産・廃業があるようです。しかしそれは経済の新陳代謝であり、創業にも廃業にも経済活動が付いてまわります。加えて、約10万社がネットで増加していることも大きな経済効果があることは間違いありません。
ここ数年間の日本における会社数の増加は、経産省を中心としたさまざまな起業促進策があったにもかかわらずほぼ横ばい状態が続いています。新会社法を活用した、株式会社や合同会社(日本版LLC)の積極的な創業が望まれています。また、日本版LLCと似たイメージの、日本版LLP(有限責任事業組合)もありますが、これは会社法の範疇ではなく、民法組合を発展させたものです。政府は、このLLPによる創業も経済復興の一策としたいようです。
3-2) 意図的な会社創業(設立)というリスク
今後の新規取引には、いままで以上の注意が必要になります。何故なら株式会社というだけでは信用ならない。詐欺を目的とした会社か否か見分けがつかない。会社法の特徴である「容易な会社設立」を逆手に取った経済事件がたぶんに多発すると思います。新規取引には、これまで以上の慎重さが経営者や営業担当者に要求されます。
では、どのようなデータ(情報)を元に取り式会社を信用(判定)すべきなのでしょうか? 会社法では、この取引の安全性を「適正な手順によって作成された情報のタイムリーな開示」に委託しようとしています。中小企業(大企業以外)の非公開会社(全株式が譲渡制限)、つまり一般的な中小企業においては、決算公告(義務履行)がこれに相当します。
決算公告の義務を履行していない会社との新規取引は、より慎重な判断をしなければなりません。
また、自社が株式会社であった場合は、いち早く決算公告の義務を履行する必要があります。特にその内容を誰でも閲覧できるインターネットによる決算公告企業は、経済市場から想定以上の信用を得るはずです。
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