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『新会社法』 〜 6回シリーズ 〜
1.会社法は、商法の大改正ですか?
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1) 会社法? 何ですか
会社法という名称(なまえ)の法律ができました。何時できたかというと、2005年に国会(第162回通常国会:1/21〜6/19 会期延長〜8/13)で審議され、同年の7月に公布されました。ところで「公布」は、法律が効力を発揮する「施行」とは趣が違います。公布とは、「成立した成文の法を公表して、一般国民が知ることのできる状態に置くこと をいい、法令が現実に拘束力を発生するためには、一般に公布の用件をみたすことが必要」 とされています。つまり、公布とは予告にあたり同法律の施行は、会社法附則で施行期日が「公布の日から起算して1年6ヵ月を超えない範囲内において政令で定める日」と規定されていたはずです。では実際にどうなったかというと、「会社法の施行期日を定める政令(3月29日公布)」により、会社法の施行日は正式に、平成18年5月1日と決定されました。
冒頭だけでも大分ややこしいですね。本コラムは、法律がテーマです。どんなに易しく書いてもポイントだけは抑えなければなりません。「知らなかった」では基本的に済まされないのが法律です。また、施行日などの適用要件がひとつ違っても白黒の判定が逆になることがあるのも法律の特徴です。
会社の社長(代表取締役)や役員(取締役)は、本人が好まなくても、これからお話しする会社法や商法(商売のための法律)に準拠する必要があります。では、勉強を進めましょう。
会社法を勉強する前にひとつ確認しておきたいことがあります。それは会社という団体の社会的な意味合いが何かということです。ある団体は、法律によって法人格を与えられ「会社」となります。そしてその団体は、法人格を取得することで、財産所有や契約などの法律行為を、団体の名義で行うことができるようになります。株式会社を始めとする法人格には、それを規定する法律があり、これを法人の根拠法と呼びます。株式会社の根拠法は、2006年4月いっぱいは「商法」で5月1日以降は、会社法ということになります。
難しい言い回しをしましたが要は「株式会社は、会社法によって存在を認められた団体」ということになります。その一方で会社は、会社法を守るという義務を負うことになります。例えば、この会社法の中に「株式会社は、決算公告しなければならない」(会社法440条)と記されていたり、しかもそれを怠ると「100万円以下の過料に処す」(会社法976条)と明示されていたりします。この決算公告義務は、現行商法でも株式会社には課せられています。しかしこの法律は、ほとんどの株式会社が守っていません。私が調べて範囲では、株式上場(公開)をしていない会社の90%以上が法律違反をしていることになります。会社法でも決算公告義務は明示されています。「社長さん、これからも法律違反を続けますか?」ということも本コラムのテーマのひとつです。
2) 会社法は、初名称なのに「新」会社法と呼ばれます
「会社法」は、新しい法典でありながら「新会社法」と、わざわざ「新」を付けた呼ばれ方をすることがあります。本来「新会社法」と呼ばれるからには、「旧会社法」がなくてはならない訳ですが、日本にはこれまで「会社法」という法律はありませんでした。しかし、「会社法」という名称の法律はなかったのですが「会社関連法律」または「会社関連法制」と呼ばれる会社を規定する一連の法律があったため、新法典でありながら「新会社法」と呼ばれるようになったようです。
会社法は、商法第2編の内容や有限会社法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(商法特例法)等において各々バラバラに規定していた「会社関連の法律」を、ひとつの法典としてまとめたものです。そもそも現行の商法は、明治32年に制定された法律を基に何度も何度も改正を加えパッチワークのような法律になっていました。また、法律の文体も漢字とカタカナ交じりの古いものです。さらには、経済の国際化に伴い近年は改正の頻度も高く、時代に即した法律の編纂が望まれていました。
会社法の制定にあたり法制審議会は、法案の概要を以下の通り説明しています。経営者などの実務家の方にとっても法律改正の肝となる部分ですので、一読願いたいものです。
――――――――会社法案の概要:国会議事録より――――――――
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本案は、最近の社会経済情勢の変化に対応するために会社に関する各種制度を見直すとともに、これを現代用語の表記にし、分かりやすく再編成する措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりである。
一. 会社に関する各種制度の体系的かつ抜本的な見直し
1 株式会社と有限会社を新たな会社類型として統合することにより、現在有限会社としてしか認められていない、取締役の人数規制や取締役会・監査役の設置義務のない株式会社を認めるものとすること。
2 最低資本金制度を見直して、現在一千万円以上の出資が必要とされている株式会社の設立時の出資額規制を撤廃するものとすること。
3 合併等の組織再編成に関する手続を整備し、株主・債権者の保護を図りつつ、機動的な組織再編を実現しようとするほか、機関設置等における定款自治の範囲の拡大等を行うものとすること。
4 株主代表訴訟において、原告株主が株式交換等で株主たる地位を失っても一定の場合には原告適格を失わないこととするなど株主代表訴訟制度を合理化するものとすること。
5 公認会計士・税理士の資格を持つ会計参与が取締役と共に計算書類を作成する会計参与制度の創設、会計監査人を設置することができる会社の範囲の拡大等の措置を講ずるものとすること。
6 出資者の全員が有限責任社員であり、内部関係については組合的規律が適用される新たな会社類型の新設を行うものとすること。
7 株式の譲渡制限に係る定款自治の拡大、自己株式の市場売却の許容、会社に対する金銭債権の現物出資に係る検査役の調査の省略、株主に対する利益の還元方法の見直し、委員会等設置会社とそれ以外の会社の取締役の責任に関する規定の調整、大会社における内部統制システムの構築の義務化等の改正をするものとすること。
二. 会社法制の現代語化
片仮名・文語体の表記を平仮名・口語体に改めるとともに、会社法制についての規定を一つの法典としてまとめ、分かりやすく再編成するものとすること。
三. 施行期日
この法律は、公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。
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会社法制定のポイントは、法文を口語体とし分かりやすくまとめたことと、「会社に関わる諸制度間の規律の不均衡の是正」および「社会情勢の変化に対応するための各種制度の見直し」を行った、という点にあります。
3) 新会社法が施行されたといっても慌てる必要はありません
新会社法の制定を、従来の“会社関連法律の改正”(改正商法)と捉えるか、“新法の制定”と考えるか、二通りの捉え方をすることができます。前者の改正商法と捉えると、有限会社の廃止や組織再編制度の改定など前述の「会社法案の概要」に示すとおり大きな変化が幾つもあります。しかし、“新法の制定”という観点でこの会社法を捉えますと、従来からあった会社関連法律、特に近年度々改正されている商法の延長に位置づけられるもので、大した違いは無いともいえます。その意味において、会社法が施行されてもあまり慌てる必要がありません。
従って新会社法への対応は、企業統治(コーポレート・ガバナンス)や事業再編(合併や会社分割など)、資本戦略(増資や株式公開など)に係る特別な目的や計画がある場合において、同法の施行に対する研究や急いだ対応を必要とします。具体的に会社の置かれた状況における対応については、当コラムで順次解説したいと思います。
会社法の施行に伴って「慌てる必要はない」とは言っても冒頭に示したとおり、法は守らなければならない社会のルールです。これまでの商法は、改定に改定を重ねて、パッチワークの迷路のようになってしまったために、一部現実に即さないルールを内在させていました。そのため、法はあるものの現実を優先し、一部のルールについて違法性の検査をせずに黙認していたものがあります。その代表的なものが、株券の発行と決算公告義務といわれています。
今度の会社法は、現実を踏まえた法律編纂をしたといわれています。このことを勘案すると、新法の施行に伴い遵法性の検査(違法行為の摘発等)、例えば決算公告義務違反などがこれまで以上に厳格化される可能性が高くなると想定できます。
現状において会社に関する法規定である商法等は、小規模会社に対して遵法性の検査が甘く運用されていることから、これまで違法摘発や処罰が極めて少なかったとの批判が少なくありません。会社法の施行によって慌てる必要がない一方で、現状の商法を初めとする会社関連法律に則った(コンプライアンス)会社運営を心がける必要があります。実は、その意識が最も大切な会社法施行への対応といえます。
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