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経営とIT (5)

  「IT投資減税と研究開発減税を活用しよう」A

  

BFL経営財務研究所 杉田 利雄
SAS-Web Partner



当コラムの前々回で話題にした、IT投資促進税制(IT投資減税)が、今国会で成立した。

現在の国会での争点は、弱者優先にウェイトを置くのか、産業復興に重点を置くのかといった、減税のバランスであり、税体系思想の問題だ。

大いに議論すべきテーマだが、簡単に結論のでるものでもない。
とは言うものの、IT投資減税案には反対する勢力はほとんどなく、3月28日付けで成立・施行された。

IT投資減税の詳細は、既に述べた(前々回コラム)ので、今回は中小企業を想定したケースで解説する。

■IT投資減税の概要を復習する。

・資本金3億円未満を中小企業と既定する
・中小企業は、ハードウェア 140万円以上、ソフトウェア 70万円以上を減税対象とする
・減税適用には、税額控除と特別償却があり、事業者はこれを自由に選択できる
・税額控除は、取得価格の10%とし、法人税額の20%までを税額控除限度額とする
・税額控除限度額を超えた控除額は、1年分繰越できる
・リースによるIT投資も減税対象とする(税額控除方式のみ)
・リースは、ハードウェア 200万円以上、ソフトウェア 100万円以上を減税対象とする

■IT投資減税のケース計算(前提)

・資本金1,000万円の会社が、減税対象資産を400万円投資した
・IT投資減税適用前の、利益(課税所得)が600万円

■税額控除を選択したときの税効果

 【税額控除額】     400万円(投資額)×10%=40万円
 【適用前法人税額】   600万円×22%(ケースの法人税率)=132万円
 【税額控除限度額】   132万円(法人税額)×20%=26.4万円

◆税額控除限度額の判定(繰越額の計算)
 【税額控除限度額の判定】税額控除(40万円)>控除限度額(26.4万円)
 【次年度繰越額】    40万円−26.4万円=13.6万円 (次年度に繰り越し)

◆納付法人税額の計算と減税効果
 【納付法人税額】    132万円(適用前税額)−26.4万円(当期控除額)=105.6万円
 【当年の減税効果額】  26.4万円(※1)

■特別償却を選択したときの税効果

 【特別償却額】     400万円(投資額)×50%=200万円
 【課税所得】      600万円(減税適用課税所得)−200万円(特別償却)=400万円

◆納付法人税額の計算と減税効果
 【特別償却適用前法人税】600万円×22%(ケースの法人税率)=132万円
 【特別償却適用後法人税】400万円×22%(ケースの法人税率)= 88万円
 【当年の減税効果額】  132万円−88万円=44万円(※1)

■税額控除と特別償却の税効果比較

・上記のケースでは、
◆税額控除の減税効果・・・・・・・26.4万円
◆特別償却の減税効果・・・・・・・44万円 (差額17.6万円)

 となり、特別償却が有利に見えますが、次に示すとおり減価償却(特別償却を含む)の仕組みを踏まえた経営判断も必要になる。

・特別償却は、通常の減価償却(普通償却)を前倒しする仕組み
・従って、特別償却を適用した場合は、初年度負担は 減少しするが、
 翌年以降は、普通償却がない分だけ、税負担が増加することになる
・言い換えると、特別償却をしてもしなくても、何れ減価償却費は必ず損金算入される
・長期的視野に立つと、「税額控除」を選択した方が税効果は、有利になりことが多い
・これに対し、税額控除は、翌年以降において普通償却の損金算入ができる

★実際の税務判断は、顧問会計事務所などの専門家と相談することをお勧めします

(※1)法人税以外の事業税や市民税はどうなるのか
・法人は、国税としての法人税のほかに、事業税や都道府県民税などの地方税を負担する
・都道府県民税は、法人税額を基準に課税計算し、税額控除と特別償却の何れも連動して減額となる
・事業税は、課税所得金額を基準に課税計算し、特別償却を用いたときにだけ減額される
 
■リースの場合は、どうなるのか

・上記ケースを元に、リース総額が500万円となった場合を想定する
【税額控除の算出】    500万円(リース総額)×60%×10%(控除率)=30万円
【控除限度額】      600万円×22%(ケースの法人税率)×20%(限度率)=22万円
【税額控除限度額の判定】 税額控除(30万円)>控除限度額(22万円)
【次年度繰越額】     36万円−22万円=8万円 (次年度に繰り越し)
【納付法人税額】     132万円(適用前税額)−22万円(当期控除額)=110万円

★リース投資が減税対象となったことは、多分初めてのこと。大いに活用すべし、と言いたいが、
 リース融資を含む金融情勢が中小企業に対して厳しいものとなっている。
 金融機関から見て、融資可能な財務体質にすることが先決。

■140万円未満のIT投資でも減税の道はある

IT投資促進税制では、140万円未満のIT投資は対象外となるが、資本金1億円以下の法人を対象にした
少額資産の損金算入制度(中小企業支援税制)も施行される。
この税制は、IT投資減税とは逆に、少額資産を対象にしている。
30万円未満の減価償却資産(ITに限らない)を投資年度に全額を損金算入(即時償却)できる。
適用期限は、15年4月1日〜18年3月31日であり、この間に年間利益が見込めるのならば、
積極的に利用して、企業の財務体質を強化したい。

■赤字の場合は、IT投資減税を使えないのか

減税とは、課税に対するものであることから、赤字企業は対象外と考えるべきだ。
しかし、赤字の場合は絶対適用できないわけでもない。
IT投資減税を適用しても良いが、意味がないことが多い。やや難解な説明になるが、考え方を示す。

◆先ず、減価償却の特別償却・・・
 ・特別償却は、制度上は可能
 ・この場合、当該会社は、赤字ですので、元々法人税は0円
 ・これに加えて、経費(減価償却費)を増やすので、赤字が更に増加する
 ・従って、赤字の上に特別償却も行うことを選択する会社は、ないといって良い
  ※赤字は、繰り越せるが、意味のない選択だ

◆税額控除・・・
 翌年の利益が見込めるのであれば、税額控除を適用した上で、
 今期は税額控除が0円として、来期に全額を繰り越す
 来期、利益が出たなら、この繰越を適用し、税額控除を受ける

以上のことから、IT投資減税の恩恵を受けるためには、利益を出すことが前提となっている。
利益を出す経営構造に改革し、積極的にIT投資減税を活用するすることが王道。
IT投資減税を活用することによって、通常の年と比較して、内部留保額が多くなり、資本の充実が図れる。
資本の充実は、多くの中小企業が掲げるべき目標のひとつだ。

2003年4月20日 経営財務研究所所長 杉田利雄

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