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廃止に向けて検討される“長者番付”

タックス・コム代表
税金ジャーナリスト 浅野 宗玄



2003年分の確定申告で所得税額が1千万円を超えた高額納税者を公示する、いわゆる“長者番付”が、今年も5月17日、全国の524税務署で一斉に公表された。今回の公示対象者は前年分よりも1.9%少ない7万3959人。公示基準がそれまでの所得金額1千万円超から現行基準に改正された83年分以降では3番目に少なく、平成に入ってからでは最低の人数となった。

実は、この所得公示は、プライバシー保護などの観点から廃止される方向にある。2002年11月に公表された政府税制調査会の2003年度税制改正に向けた答申のなかで「今後、制度の廃止を含めて検討する必要がある」と明記されていた。2003年度・2004年度改正においても実現していないが、廃止に向けた議論が今後行われることは間違いない。

廃止を検討する理由としては、まず、この制度が導入された当初の「第三者による脱税のけん制効果」という役割は終わったとの見方がある。申告されたくない人は、公示対象が3月末までの申告納税者であることから、当初は所得税額が1千万円を超えない所得で申告し、4月1日以降に修正申告すればいいのだ。修正申告は公示義務がないのである。いわゆる“公示逃れ”により制度は形骸化しているとの指摘がある。

それ以上に、脱税のチェック機能の形骸化よりも、“長者番付”に載ったことでの弊害のほうが強いとの批判がある。氏名が公表されることで、団体や企業からの寄付の要請や営業攻勢、各種勧誘、さらには犯罪や嫌がらせの誘発要因となり、プライバシーの配慮の観点からは問題が多いとの意見である。

野次馬的には他人の稼ぎぶりが分かって楽しく面白い制度だが、上記の理由などから廃止へ向けた議論が再浮上することは確実だ。今年が最後という可能性もありうるようだ。


★“長者番付”から推定課税価格を算出する

今年の全国一の長者は東京で健康食品販売業を営む斎藤一人氏。
その納税額は11億4849万円で、推定課税所得が31億1143万円にのぼる。93年以降、11年連続でトップ100位にランクインしており、その間の納税額は160億円を超えるという。この税収不足の折、国に対する貢献は計り知れない。

ところで、税務署の公示は、高額納税者の氏名・所在都道府県名・納税額しか掲載していない。推定課税所得は納税額を基に野次馬が勝手に計算した額で、あくまでも推測に過ぎない。推定課税価格を算出する一般的な算式は次のようになる。

 {(納税額+249万円+25万円)÷0.37}=推定課税所得

納税額が1千万円を超える課税所得3千万円に対する所得税は、税率が37%、控除額が249万円、定率減税が上限額の25万円となることから上記の算式となる。税額控除は人によって差が大きいので考慮していない。当然、実際の課税所得はもっと大きくなる。特別控除額を加えた利益金額は、所得の種類によってさらに差が出てくる可能性がある。

利益金額に経費を加えたものが収入となるが、実際には住民税や各種社会保険料、年金などがあるから、本当の年間収入がいくらあったかを推測するのは不可能である。とはいえ、長者番付を野次馬的に眺めるのであれば、大雑把な推定課税価格を算出してみるのも一興である。虚しい気分になることは確実だが‥。


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