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エグゼクティブ対談 【第32回】潮田 資勝
(国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 学長)

社会ニーズをとらえた大学院教育への試み(5/5)

人生はすべて実験、マネジメントもその1つ

眞柄今年の入学式で、潮田学長は次のようにスピーチされたとJAISTのサイトで紹介されています。

 「我々教職員と学生はアカデミック・コミュニティを構成すると同時に、地域社会の一員でもあり、そのような立場で責任ある行動をすることが期待されます。皆さんは学業に励むと同時に本学の周りのコミュニティの一員として地域の住民とも交わり、また白山を望む自然の恵みも満喫して、研究生活を充実させて欲しいと思います」

 最近の企業も「地域に対する責任」を強く意識していますが、潮田学長がここで地域とのかかわりを強調された理由は何でしょうか。

潮田カリフォルニア大バークレー校のアナリー・サクセニアン教授が書いた本に『現代の二都物語――なぜシリコンバレーは復活し、ボストン・ルート128は沈んだか』(1995年講談社刊)があります。アメリカの伝統的大企業が集まる東海岸のルート128号沿いの産業地域と、シリコンバレー地域を比較研究したもので、企業の競争優位は地域全体の「文化」が決め手となると示しています。

 シリコンバレー地域で重要な役割を果たしたのがスタンフォード大学です。1950年代にはカリフォルニアの田舎大学というイメージだったので、東部の人たちから馬鹿にされ、卒業生たちの行き先もない。そこで地域と連携し、何とかしなければいけないという発想になるわけです。これが地域の活性化につながっていきます。自らカリフォルニアの地元大学だと位置づけたのが結果的によかったのです。「世界に冠たるスタンフォード大学」とは最初から思っていなかったでしょう。

 一方で、東海岸の名門プリンストン大学では、こう考えられていたというのです。「我々は世界一の大学だ。たまたまニュージャージーにキャンパスがあるだけの話だ」と。つまり、地域とは特別の関係を結ぼうとしない。

眞柄スタンフォード大の卒業生たちに、アイビー・リーグを卒業したようなエリート・ビジネスマンの雰囲気はありませんね。スノッブな感じではないです。

潮田西海岸にはもともと伝統的な産業はありません。どれもベンチャーから大きく育った会社ばかりです。

 JAISTも熊が出るような田舎にありますから、周辺に一流企業と呼べる会社は数える程度です。ですから地元としっかり手を結び、産業を育てていく活動の一翼を担いたいと考えています。

 地域の方々も応援団をつくってくれて、実におもしろい活動になっていますよ。

眞柄開校して17年になりますが、北陸先端技術大学院大学というブランドが一気に広まったのはここ3~4年ではないでしょうか。

潮田私が学長になって力を入れたことの1つは広報です。最初に、広報室長を一般公募しました。いまの広報室長は、50代で応募してきました。建設会社で部長を経験しているので、これはおもしろいと思って採用しました。そうしたら地元のメディアでJAISTのニュースが紹介される回数は3倍に増えました。

 私も地元の飲み会に参加して宣伝してまわっています(笑)。

眞柄大学運営では着実にご自分のお考えを実現してこられた潮田学長ですが、個人的な夢は何でしょうか。

潮田理論物理の研究をもう少し進めたいですね。ただ、いまはその時間がない。研究に戻るために、早いところ学長を辞めないといけませんね(笑)。物理学者のあいだでは「学者として無能だから、ずっと学長をやっているのだろう」といわれますから。

眞柄潮田学長はもともと著名な物理学者ですし、来年は国際純粋・応用物理学連合(IUPAP)の会長就任が決まっています。やはり、いまも物理の研究が一番お好きですか。

潮田それはもちろんです。周囲にはいつも言っていますよ、「学長は仮の姿だ」とね。

眞柄仮の姿ですか。それにしては、お話をうかがうと学校運営、人づくり、PRの話など優れた経営者という印象です。マネジメントがご専門だと思われてもおかしくないですよ。

潮田それはうれしいですね。私はマネジメントも、物理と同じで実験だと思って取り組んでいますから。「こうやったらどうなるかな」「これがうまくいかなかったら、こっちをやろう」といつも考えています。

 私は「人生すべて実験」だと思っています。失敗しても違うことをやれば良いんですよ。

眞柄今日は本当にすばらしいお話をありがとうございました。

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対談目次

1)アメリカでの豊富な経験を活かし、大学改革に取り組む

2)米ソ冷戦下のアメリカで物理学を志す

3)実社会で役立つプラクティカルな学問を重視

4)ドクターがミリオネアになるアメリカの社会

5)人生はすべて実験、マネジメントもその1つ

潮田 資勝氏 ゲスト:潮田 資勝氏
国立大学法人
北陸先端科学技術大学院大学 学長

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

プロフィール

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