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経営を語る

エグゼクティブ対談 【第32回】潮田 資勝
(国立大学法人 北陸先端科学技術大学院大学 学長)

社会ニーズをとらえた大学院教育への試み(4/5)

ドクターがミリオネアになるアメリカの社会

眞柄JAISTは先端科学大学院ですから、多くの知的財産が学内で生まれていると思います。当社も知的財産が保護されてきた結果、大きくなれた企業の1つですが、学内で知的財産の保護や啓発活動など実施されているのでしょうか。

潮田学内の知的財産がかたちに表れるのはパテント・アプリケーションです。教育・研究評議会では毎回、審査中の案件が報告されて、特許を個人所有にするか大学所有にするかを決めます。

 以前は共同研究した企業にパテントを譲るケースも多かったのですが、いまは文科省から学内の知的財産本部に予算をもらっていますから、そのあたりは厳しくなっています。

 ところがよく調べてみると、儲けを生まない特許は、出願費用と維持費だけでも赤字になっています。文科省から予算をもらいますが、これは人件費に対するものだけです。とはいえ、特許出願に消極的になると、ノルマをかけられる始末です。

眞柄学内ベンチャーも誕生していますね。

潮田JAISTのベンチャー支援策を活用して過去に11件が生まれ、現在は3件が継続中です。将来性が期待できる事業もいくつかありますよ。

 JAISTを核とする「いしかわサイエンスパーク」のなかに、県が運営する研究開発型事業スペース「いしかわクリエイトラボ」もあるので、そこを活用して地元で起業する会社も出ています。

眞柄学生のなかに、起業をめざすベンチャー志向はみられますか。

潮田政府のベンチャー支援は長年つづいていますが、日本では一旗あげてやろうと意欲的に動く人が少ないですね。とくに最近の若い世代は安定志向が目立ちます。

眞柄日本はリスクを覚悟で打って出る人が少ないですね。教育レベルは高いのに、意欲のほうでは負けている。そこはやはり、マインド・セットの問題でしょうか。

潮田日本独特のブランド志向もあるでしょう。自分自身が一流になることより、一流といわれる組織なり集団なりに所属したがる。

 私からみれば、小さい会社で頭角を現し、会社を大きくしていくほうがやり甲斐はあると思います。大企業に入っても、ずっと歯車の1つとして働きつづけ、そのうち社長になれるのはたった1人ですから。

 アメリカの場合は、セイフティーネットといわれるように、たとえ失敗してもあとから挽回できる社会です。だから思い切って、打って出られる。

 カリフォルニアには、ミリオネアになった知り合いが3人います。そのうちの1人は、カリフォルニア工科大学の大学院に通っていたドクターです。

 彼は自分の研究に使うため、振動を伝わらなくするテーブルを開発しました。博士課程を終えるとすぐ、その技術で会社を興して大成功しました。30年前は社長自らトラックで製品を運んでくるような小さな会社でしたが、どんどん大きくなっていまでは立派な会社です。彼はその会社を売って大邸宅を建て、また別の会社を興していますよ。

 カリフォルニア工科大学のドクターだから、彼自身が望めばどこの大学院でも助手のポストはあったはずです。しかし、起業したほうが儲かると考えたのでしょう。

眞柄日本人に足りないのはその感覚ですよね。

潮田日本でドクターまでいく人は「儲けるために動くのは不純だ」と考えがちです。もっと実利ということに目をむけてよいと思いますね。

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対談目次

1)アメリカでの豊富な経験を活かし、大学改革に取り組む

2)米ソ冷戦下のアメリカで物理学を志す

3)実社会で役立つプラクティカルな学問を重視

4)ドクターがミリオネアになるアメリカの社会

5)人生はすべて実験、マネジメントもその1つ

潮田 資勝氏 ゲスト:潮田 資勝氏
国立大学法人
北陸先端科学技術大学院大学 学長

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

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