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経営を語る

エグゼクティブ対談 【第31回】高田 明
(株式会社ジャパネットたかた 代表取締役)

自ら感動の人生を送ることが、お客様の満足感を生み出す(6/6)

プロ集団を育てるためにも性善説の立場をとる

眞柄商品選定にしても、番組づくりにしても、ジャパネットたかたのビジネスを支えているのは本当に人材ですね。このスタジオで忙しく立ち働いている社員さんたちを見て、実にクリエイティブな仕事ぶりだなと感心しました。 

 いま従業員は400人弱で、売上高は1000億円を超えています。私も同じような規模の会社を経験していますが、200人ぐらいまでは地元の人たちが就職してきて、それより規模が大きくなると県外からの就職も増えてくる段階だと思います。

 採用と育成ということでは、いまはどのようにお考えですか。

高田やはり、企業は人ですね。小さい店のころから、それは実感してきました。

 創業の時期には、トップが走りつづければ、その背中をみて社員が育ちます。当社も400人近くになりますと、社員みんなとコミュニケーションが毎日とれるわけではありません。さらに人数が増えたときのために、同じ企業理念を持つ人たちをたくさんつくっておかないといけないでしょうね。

眞柄そうなると、いま最も力を入れている経営課題は人材育成でしょうか。 

高田そうです。この2年ほどは研修を増やしています。でも、人材育成というのはやってもやってもエンドレスです。

 なぜ人材育成が大切かといえば、それは共通理念を築き、組織全体のレベルを上げていく必要があるからです。そうしなければ、本当の顧客満足につながりません。

 このスタジオでいえば、後ろの棚にあるカップ1つの置き方もプロの仕事です。全員がプロの集団がなって初めて1つのステージができあがるのです。

眞柄先ほどリハーサル風景を見学させてもらったのですが、女性2人がポットの下に広げる敷物について意見を出し合っていました。その2人が今年の新入社員と聞いてびっくりしましたよ。どこからみてもクリエイターの仕事ぶりでした。 

高田今日いちばんうれしい話をうかがいました(笑)。仕事にはそれぞれの役割があり、責任が伴います。その1つひとつを乗り越えていかないと、人は成長しません。「なんだ、自分はこんな仕事かよ」と思いながら働く人間に、どうしてさらに上の仕事を任せられるでしょうか。

 成長しつづけるためには、何歳になろうと同じ気持ちが必要です。それは、自分に足りないものを吸収する気持ちを常に持つこと。そういう人材を僕は育てたいですね。

眞柄2004年3月に、御社から約51万人分の顧客情報が流出し、名簿業者に売られるという事件が発覚しました。この事件で50日間にわたって全ての通販番組を自粛しましたね。約150億円の減収と報道されていましたが、事件発覚後の速やかで真摯な対応、その後のコンプライアンス体制は、他企業の規範になるともいわれています。

 あの事件から、高田社長の意識や社内の空気はどのように変化したのでしょうか。


後ろには、株式会社ジャパネットたかたの新入社員の方々が対談を見学。

高田あの事件が起きた直後に僕が考えたのは、性善説と性悪説のどちらで捉えたらいいのか、ということでした。あのような問題が起これば、人間は性悪説に向かいがちですが、僕はそれでも性善説に立ちたいと思っています。

 私がいちばん責任を感じたのは、人間には魔が差すこともある、ということです。たとえば、小さな田舎町にお菓子屋さんがあって、ここは安全だからといつも開け放していたとしましょう。そこに5歳ぐらいの子どもが通りかかって、店先に山積みしてあるお菓子を取って食べた。この子どもは罰せられるべきでしょうか。これは簡単に取られるような環境をつくったお店の責任、つまり企業でいえばトップである僕の責任が大きいと思ったわけです。

 事件のあとで社内に監視カメラをつけたり、ネットワークを見直したりしましたが、それは社員を疑っているというより、魔が差すことがないように安全な環境をつくっているのだと説明しました。けっして性悪説に立っているわけではありません。もちろん、環境整備だけでなく、精神教育も実施して、社員との信頼関係をもっと築いていかなければいけないと思いました。

眞柄事件発覚後の自粛は大きな決断でしたね。かえって、企業としての信頼を勝ち得たのではないでしょうか。あの対応は顧客満足につながるものだったと思いました。

高田これは一生、僕が背負っていく十字架だと思いました。神様は試練を与えるんだなと。

眞柄なるほど。そう受けとめて、自分たちを鍛え直すチャンスだと考えればいいのかもしれません。いつも順風満帆とはいかないので、向かい風のときにどう対処するか。そこで真価が問われるのだと思います。

 最後に高田社長の夢をお聞かせください。

高田夢はやはり、うちの社員たちが人間的に成長して、その集団が佐世保の町から日本中に幸せをスーッと送っている――そういうイメージが浮かびますね。たとえば各県にジャパネット長崎号、ジャパネット岐阜号、ジャパネット北海道号という中継車が何十台とあって、24時間体制でインターネットやテレビ、ラジオで生放送が発信されているというのもあります。スタジオ内には500人から1000人ぐらいの全メンバーがいて、子どもに夢を与えられるような情報を発信している。そんな夢を描いています。

 それを実現させるためには、ちょっと駆け足で行かないといけませんね。

眞柄ますますのご発展をお祈りしています。本日はありがとうございました。

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対談目次

1)先の目標は立てずに、目の前の仕事に熱中する

2)ラジオで成功を収め、テレビへと進出

3)最後に感動してもらいたいのは誰か

4)お客様のよろこびを基準にする「ジャパネット品質」

5)感動を基軸に社員たちを引っ張る

6)プロ集団を育てるためにも性善説の立場をとる

高田 明氏 ゲスト:高田 明氏
株式会社ジャパネットたかた
代表取締役

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

プロフィール

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