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エグゼクティブ対談 【第29回】関 隆明
(特定非営利活動法人 ITコーディネータ協会会長 IT経営キャラバン隊会長)

ITコーディネータの質を高め、中小企業の経営革新に挑む(1/5)

ITコーディネータの質を高め、中小企業の経営革新に挑む 関隆明氏

中小企業が直面する数々の経営課題をITで解決する

眞柄関会長はITコーディネータ協会と、私たちマイクロソフトも発起人企業の1つとなっているIT経営キャラバン隊の両方で会長を務めておられます。日本電気、NECソフトではITビジネスの豊富な経験をお持ちになり、中小企業のICT化にも熱心に取り組んでこられました。

 まずは、ITが中小企業に与えた影響についてお聞きしたいと思います。中小企業は、会社数でいえば全企業の99.7%を占め、なかでも製造業は長年にわたって日本のモノづくりを根底で支えてきました。

 その中小企業に、インターネットをはじめとするITが入りはじめています。その結果、これまでの垂直的な分業に加えて、水平的な分業化もみられるようになりました。大手メーカーは、以前よりも発注先の選択肢が広がり、コストダウンも進んでいます。逆にいえば、中小企業のほうは取引先が広がっているわけです。産業構造はITによって変化していますね。

いわゆる「ケイレツ」と呼ばれる垂直的な分業システムは、日本独特の産業構造で、大手メーカーが中小企業を囲い込むようにして発展してきました。

 ご承知のとおり、日本には輝かしい独自技術を持つ中小企業が数多くあります。ただ、系列に含まれている企業は、せっかくの優れた技術が限られた顧客にしか利用されず、その顧客からも厳しいコストダウン要請を受けつづけてきました。

 技術力のある中小企業が「もっとビジネスチャンスを広げたい」と考えるのは無理ないことです。彼らにオポチュニティを持たせたほうが日本経済は発展するという意見は聞かれますし、日本全体でその機運が高まっていると私は感じています。少しオーバーにいえば、最終製品を組み立てる大手メーカーより、優れた材料や部品を握っている中小企業のほうが強いという見方です。

 最近では、海外の市場を開拓し、グローバルに展開する中小企業が登場しています。全体からみるとまだほんの一部ですが、世界シェアが40%以上という会社もあって、技術力のある中小企業は、グローバル化を今後ますます強めていくでしょう。そのとき、インターネットなどのITが威力を発揮することは間違いありません。

 技術進歩や低価格化によって中小企業にもITが浸透してきているのは確かですが、ほとんどの企業が充分活用し切れていません。然し、本当に効果的なビジネスツールとしてITを活用できる企業も増えてきています。うまく活用できる知恵を備えた企業です。

眞柄系列の構造では、営業活動やマーケティングに力を入れなくても仕事が入ってきました。中小企業のなかには、その部分がまだ弱いところも目立ちますね。

従来のような受け身の姿勢でなく、アクティブにビジネスを展開していこうとすれば、マーケティングやセールスに注力することは当然求められます。企業規模にかかわりなく、それらの機能を強化することは重要な経営課題の1つです。

 ただ、強いセールスの機能や組織はすぐにできませんから、先進的な中小企業では自然発生的にそこでITを駆使していくという発想が出ています。

眞柄グローバル市場へ攻撃的に打って出られる環境はすでにありますね。その一方で、中小企業は後継者問題、労働力不足、団塊世代の退職と技能伝承など多くの問題を抱えています。日本経済の基盤に、黄色信号が点っているようにも思えますが。

多くの中小企業は高度成長期に起業していますから、すでに経営者が世代交替したところも多くみられます。一般的に創業者というのはワンマンで、独裁的に会社を引っ張ってきました。従業員のほうもトップに従っていればとりあえずうまくいく、という企業体質でした。

 ところが、2代目3代目になると、創業者のようなワンマン経営はできませんし、独裁的なやり方が通用する時代でもありません。そこで、全従業員の意識改革を図り、経営の新しいしくみを築こうと考えはじめるのです。全社員が参画し、能力を発揮できるしくみをつくろうと真剣に考えている2世経営者は多いですよ。他社事例などもよく研究しています。

 彼らは創業者と違って、システマチックに需要予測をしたり、生産計画を立てたりすることの重要性を強く意識しています。そこからITを導入し、経営のしくみにまで至ることは珍しくありません。

 もう1つの問題は、製造現場で優れた製品をつくってきた高度技能が失われつつあることです。これは設計と製造の両方で起きていますから深刻です。

 東京・大田区などの中小企業では、設計では大企業に負けないくらい高度なCADを用意していますし、精密加工ではCAMのような工作機械の自動化についても研究しているところがあります。そうすることで、これまで日本のモノづくりを支えてきた高度技能を継承し、たとえ技能が未熟な作業者でも、ITの力でこれまで通りの品質をキープできるように工夫しています。

 つまり中小製造業のIT活用は、経営のしくみづくり、現場の技術力という2つの面から進んでいます。事務系業務のEDP化より、まずそっちのほうが先決だと考えている経営者は多いのです。

眞柄私が知っている2代目経営者たちも、会社を継ぐときにITを積極的に導入し、経営革新を図ったというケースは多いですね。ITコーディネータ協会やIT経営キャラバン隊には成功事例のデータベースがありますから、これは役立つと思います。

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対談目次

1)中小企業が直面する数々の経営課題をITで解決する

2)中小企業の知的財産をどう守り、活用していくか

3)ツール先行のIT導入でなく、経営に役立つICT化をめざす

4)経営スキルのあるプロマネは、完成したシステムの質が違う

5)政府方針と民間の活動を結ぶ“つなぎ役”

関 隆明氏 ゲスト:関 隆明氏
特定非営利活動法人 ITコーディネータ協会会長
IT経営キャラバン隊会長

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

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