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エグゼクティブ対談 【第27回】左京 泰明氏 (シブヤ大学学長)

「学びたい」という心をもつすべての人に無限の学舎を提供するシブヤ大学の挑戦(1/3)

「学びたい」という心をもつすべての人に無限の学舎を提供するシブヤ大学の挑戦 左京泰明氏

場所にとらわれず学べる環境は人気コンサートをしのぐ注目を集める

眞柄2006年9月2日に開かれたシブヤ大学の開校式には、私も参加させていただきました。たいへんな盛況ぶりでしたね。

左京そうですね。明治神宮会館という大きなホールが会場でしたから、どれだけ人が集まってくれるか内心は不安でした。でも、非常に多くの方が詰めかけてくださり、ほっとすると同時に胸にこみ上げるものがありました。

 開校にむけて何十人という人たちが、カリキュラムを準備したり、講師になってくれる方にあたったりと尽力していただいた過程を見てきただけに、感慨が深かったですね。

 私のような何の取り柄もない田舎者の若造に力を貸してくれて、本当にありがたいと思っています。もちろん、みなさんは私個人に協力してくれたわけではなく、シブヤ大学というコンセプトに共感してくれているのだということは承知していますが。

眞柄そのコンセプトを説明していただけますか。

左京ひと言でいうと、渋谷という町をキャンパスとし、あらゆる資源を活用して学びの場を提供していくことです。

 特定の校舎はなく、講師や講義内容に合わせて美術館や書店、CDショップ、ときには割烹料理店などを使いますし、講師も有名アーティストから箸職人まで、実に幅広い方にお願いしています。今後も、みんなで語り合うべきテーマだと思えば、ふつうの主婦の方などに講師になっていただくこともあり得るでしょうね。

 「学ぶ」というと、何か机に向かってする、小難しいことのように考えられがちですが、本当は、人に出会ったり、おもしろい本を読んだり、興味深い植物を見たりという、身の回りのあらゆることから吸収していくことだと思うんです。それを通じて自分が変わっていくことが広い意味での「学び」であり、学ぶことで人間はもっと豊かになれるはずです。

 シブヤ大学では、そうした「学び」のおもしろさを伝えていきたいですね。人間性豊かな人が増えれば、社会全体ももっとよくなっていくでしょうし。

眞柄開校から半年近くたちますが、ここまでの手応えはいかがですか。

左京シブヤ大学はウェブサイトで「こういう講座を開きます」と告知をして申し込みを受け付けているのですが、申し込んだ方々が当日、本当に来てくれるかどうかわかりません。というのも基本的にすべて無料なので、実際には参加しなくても損はしないからです。

 ところが開校以来、各講座には大変多くの申し込みがあり、実際に来てくれる人も予想以上です。新しい講座ができるごとに人気が高まっていて、早いものだとコンサートチケットみたいに1、2分で定員に達します。本当にうれしい誤算ですね。私たちがやってきたことは間違っていなかったという自信にもなります。

 初めはアーティストなど有名な方が講師を務める講座があるから、そこに申し込みが殺到するのではないかとも思いましたが、それは間違いでした。受講生にアンケート調査しているのですが、講師が誰であれ、講師と運営サイドで一生懸命に準備し、講座の内容を充実させたものは人気が高い。やはり、大切なのは“質”なんですね。

眞柄開校式に参加していちばん驚いたのは若い世代の方々が非常にたくさん集まっていたことです。メディアは若い世代を無気力だといい、事実ニートやフリーターと呼ばれる人たちが多いわけですが、考えを改めなければいけないと思いました。

左京上の世代が下の世代を見て、「今の若者たちは……」と断じるのはいつの時代もあることです。しかし生まれた瞬間は善人も悪人もないわけで、人間の本質は昔から変わっていません。

 ニートやフリーターにしても、昔からそういう人はいました。ただ、「ニート」「フリーター」という名前がつけられてしまったので、ことさらクローズアップされているだけではないでしょうか。大したことがない病気に名前がつけられることで、大病のように思ってしまうのと同じことですね。

 ただ、人間の本質は変わらないといっても、環境によって後天的に影響を受けることはあると思います。働き方や仕事に対する価値観も大きく揺れ動いていて、私にしても、高度成長期やバブル時代に社会に出ていれば、現在のような仕事はしていなかったでしょう。

 その意味でいえば、今はすごくおもしろい時期だと思います。日本型経営システムでやってきた時代から欧米型の合理主義、効率主義という方向に移り、やはりそれは日本にそぐわないのではないかということでもう一度日本型が見直されてきていますね。

 つまり、旧来の日本型と欧米型の間で、どうバランスをとればいいのか模索している段階であり、これからの日本のかたちはまだ定まっていません。それだけに、ここからまったく新しい時代が開けると思うし、大いに希望を抱くこともできると思います。

 ニート、フリーターと呼ばれる人たちも、そうした新時代を支える一人であることは間違いありません。

 岡本太郎さんは著書のなかで、「人間は本来、無目的で非合理である。」と書かれています。一方で「世間では目的をもっていることが正しいとされているので、人間の本質との間のギャップが大きく、非常に生きづらい時代になっている。」と、なるほどと思いましたね。

 私が会社を辞めた経緯をお話しても、なかなか理解してもらえないことが多いのですが、これは客観的に見れば非合理的だからでしょう。また、アマチュアスポーツも、お金などが得られるわけではないけれども好きだからやっている。これも無目的で非合理ですね。でも、その非合理な行ないのおかげで私は人生が開けたし、スポーツをやっている人たちも満足感を得ているはずです。

 今の若い人たちは、目的や合理性に縛られた人生ではなく、こうした人間の本質に逆らわない生き方が好きなのだと思うのです。その1つのあらわれがニートやフリーターだということもできると思います。

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対談目次

1)場所にとらわれず学べる環境は人気コンサートをしのぐ注目を集める

2)「やりたいことに向けた準備期間」は意味がない。やりたいことがあれば、すぐに行動に移すべき

3)小中学校とも連携して、お仕着せの勉強ではなく「学ぶ」ことの楽しさを伝えていきたい

左京 泰明氏 ゲスト:左京 泰明氏
シブヤ大学学長

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

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