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エグゼクティブ対談 【第26回】上田 清司氏 (埼玉県知事)

行政経営は熱伝導だ(4/4)

「子育て支援」の普及は、週休二日制と同じ手法で実現できる

眞柄今後、自治体が解決していかなければならない大きな課題の一つに、リタイアの時期を迎えた団塊の世代への対応と、少子化への対策があると思います。

 先ほど、埼玉県は都市的な機能と豊かな自然を併せもつことを強調されましたが、それはまた、団塊の世代が第二の人生に臨む時、得難い環境ともなりますね。

上田まもなくさいたま新都心の10階建てのビルに「新都心ビジネス交流プラザ」を設置するのですが、これは従来バラバラに存在していた創業・ベンチャー支援センターや産学連携支援センターなどを集約したものです。

 起業したいと思えば創業・ベンチャー支援センターに行けばいいし、SOHOを立ち上げたい人には、そのためのスペースも設けています。何か大学に聞きたいことがあれば産学連携支援センターに相談すればいいし、中高年世代の方が農業をしたいということであれば、「団塊世代活動支援センター」を通じて県の農業大学校のコースを紹介することもできます。

眞柄まさにワンストップ・サービスですね。第2の人生をスタートさせるには、これ以上ないほどの環境だと思います。

 もう一方の少子化についてはいかがですか。

上田子育てについては、先ほど触れさせていただいた「5つの日本一宣言」の中にも盛り込み、「子育て大作戦」を展開している最中です。これは週休二日制が定着した流れを見習おうというものです。

 週休二日制は、まず大企業からはじまりました。それを官公庁が追いかけ、中小企業も対応せざるを得なくなって、全国に定着したわけです。同じように子育て支援も大企業に率先していただかなければ広がらないと思うのです。

 たとえば小さな子どものいる女性の勤務時間を午前10時から午後4時までにし、保育所への送り迎えができるようにする。実際にそうした制度を導入している企業がありますが、該当する女性たちは時間が短くても8時間働いているのと同じくらいの生産性を上げているといいます。

 このような事例が埼玉の大企業のあいだに増えれば、県庁や市町村役場に広がり、最後には中小企業にも浸透するはずです。こうした動きを「子育てムーブメント」と名づけ、一生懸命、啓蒙に努めているところです。

眞柄具体的にはシンポジウムを開かれたりしているのですか。

上田まず経済6団体と「子育て応援共同宣言」を行い、育児支援制度の普及に努めていただけるようお願いしているほか、商工会議所などを通じて子育てを応援する企業の登録を募っています。また、子育てをしている人には、商店などでの買い物が1割引になる優待カードを発行したりして、「子育ては社会が応援する」という雰囲気づくりに努めています。

 もちろん、すべて企業任せというわけにはいきませんので、行政としては入院費を含む乳幼児の医療費助成などに力を入れています。

眞柄行政によるさまざまな支援制度も大切ですが、確かに企業の力は大きいですね。

上田一番大きいのは社会のマインドです。「子育ては善」といいますか、子どもを育てるのは立派なことなのだという雰囲気をつくるには、実際にみなさんが働いておられる企業が変わっていかなければならないと思います。

 もう一つ、障がい者の就業支援にも力を入れています。もちろん従来から手がけていたのですが、担当部署は福祉部だけでした。しかし、障がい者の就業を本気で考えるのなら、産業労働部、つまり産業界とつながりをもつ部署が手がけなければならなりません。

眞柄マイクロソフトがスペシャルオリンピックスのスペシャルスポンサーになったこともあり、私も長野大会ではボランティアをやらせていただきましたが、障がい者の方々も、非常に大きな可能性をもたれていますね。

上田たとえば視覚障がい者の方は聴覚と記憶力が抜群で、健常な人の3倍くらいの能力をもっているといわれます。だから速記などには非常に適していますね。ところが、そのように適材適所で働いてもらうノウハウは企業にもありません。

 きちんと働いて日々の糧を得、年金も得られるようになれば、障がい者の達成感も飛躍的に向上するでしょう。そのためには、「こうした職種には、このような人が適している」とアドバイスできる人が相談窓口にいる必要があります。

 子育てをしている人や障がい者、また高齢者は、ある意味で社会的弱者ですね。こうした弱者が弱者ではなくなる環境をつくることができれば、結果的に社会が強くなる。埼玉県がより魅力的な県になるはずです。

眞柄なるほど。埼玉のもつポテンシャルを開花させると同時に、従来は弱者だととらえられてきた人たちの力を引き出すことができれば、自治体としての強さはさらに増します。そのような経験がまた他の自治体でも活かされれば、日本全体の活性化にもつながりますね。

 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。


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対談目次

1)「ゆとり度」が高く、「チャンス度」あふれる県に

2)無担保無保証の融資が中小企業とベンチャーを支える

3)行政のサービス産業化が、納税額アップと県民満足度の向上につながった

4)「子育て支援」の普及は、週休二日制と同じ手法で実現できる

上田 清司氏 ゲスト:上田 清司氏
埼玉県知事

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

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