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エグゼクティブ対談 【第24回】潮谷 義子氏 (熊本県知事)

ユニバーサルデザインとパートナーシップですべての人が大事にされる社会をつくりたい(4/4)

進出企業が「水の大切さ」を地元にも広めてくれる

眞柄ボランティアは強制的にやらされるものではなく、その目的や意義に心を動かされるかどうかがポイントですよね。実例を積み重ねていって、ぜひそうした思いを多くの方に広めていただきたいと思います。
  一方で、いま企業の社会的責任、コーポレート・ソーシャル・レスポンシビリティが問われていますね。知事は、企業にも非貨幣的な価値を求めたいとおっしゃっていますが、熊本に進出している企業の動きはいかがですか。

潮谷いま先進諸国は、一様に少子化という問題を抱えています。また我が国では右肩上がりの経済成長が終わり、団塊の世代の大量退職も始まる中で、企業に対しても量的な社会貢献は望めません。質的な貢献をしなければならない時代になっていると思います。つまり、どんなかたちで非貨幣的な価値が生み出せるかということが問われているわけです。

  そうした中で熊本に進出していただいた企業は、みなさん意識が高いですね。たとえば、熊本は豊富できれいな地下水に恵まれ、これを県民の宝として大切にしているんですが、サントリーさんは南阿蘇の外輪山に「天然水の森」をつくり、森をしっかりと守ってくれています。
  またソニーさんは、地元のJAなどと協力し、田んぼに水を張り、浸透させて地下に水を還元してくださっています。舗装道路がどんどん増えると雨水が地下に浸透しませんから、森を守ることと同様に田んぼに水を張る意味は大きいですね。ソニーさんは、ここで収穫された米を社員食堂で使い、地産地消にも貢献いただいているんですよ。
  先ほど先端産業と伝統的な産業の両方を大事にしていきたいといいましたが、どちらも水なくしては成り立ちません。県でも、「水とみどりの森づくり税」を創設し、一家族から年間500円、企業からは収益に基づいた額をいただき、水源をかん養してくれる森林の保護などに努めています。最近、進出していただいた富士フイルムさんも、水を99%循環して使っていただいており、みなさん本当に水の大切さを意識していただいていますね。
  また、富士フイルムさんには地域づくりにも力を貸していただいています。南阿蘇は絵本のようなすばらしい景色が広がっているのですが、そこから新たな文化を創造していくために地元の方々の努力で「南阿蘇えほんのくに」づくりをスタートさせました。パートナーとして支援もしてくれています。
  こうした進出企業の活動が、地元にもいい影響を及ぼしつつあると思います。なにしろ地元の企業や住民のみなさんにとっては、水が豊かであることは当たり前のようで……。毎日、ミネラルウォーターのお風呂に入っているとか、ミネラルウォーターで自動車を洗っているといった意識は薄いようでしたから(笑)。

眞柄先だってNPO法人ソーシャル・イノベーション・ジャパンさんの主催で、マイクロソフトも協力して、ソーシャルビジネスに力を入れている企業を表彰したのですが、素晴らしい活動をされているところは地方に多いという印象を受けました。
  熊本でもそうした動きは見えてきていますか。

潮谷人々のニーズが多様化していますから、そのニーズを行政だけで受け止めていくことは難しいですね。したがって、ソーシャルビジネスという企業活動の中で支えていく部分は必要になっていくと思います。また、誰もが暮らしやすい社会をつくっていくというユニバーサルデザインの考え方を突き詰めていくと、やはり営利活動を前面に出す企業だけではなく、ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスにも期待するところが大きくなりますね。
  だから競争を勝ち抜く企業像ではなく、地域と共生したり、ユーザーと支え合ったりしていくビジネスモデルが、今後非常に大事になっていくのではないかと思っています。
  実際、熊本でもNPOを設立して高齢者への配食サービスを始めたところがあるのですが、こうした動きがとくに医療、福祉といった領域で広がる可能性は大きいでしょうね。

眞柄医療や福祉の面では、IT化も大きな意味をもっていますね。遠隔医療やテレワークなど、とくに地方で力を発揮するところもあると思いますが、熊本ではどう取り組まれていますか。

潮谷みなさんから「あなたのカラーじゃない」といわれているにもかかわらず、私が絶対に旗を降ろさないのが、道路特定財源の一般化への反対です。首都圏だけで考えれば、道路特定財源を道路整備以外のことにも使えたほうが効率的なのかもしれませんが、地方ではまだまだ道路整備が必要です。
熊本も例外ではなく、移動の約97%を車に依存しているにもかかわらず、道路の整備がまったく追いついていません。これはIT戦略を考える上でも大きな問題ですね。道路が整備されなければ、光ファイバー網も伸びませんから。

眞柄私は釣りが好きでよく北海道にも行くのですが、あちらでは標津といった札幌から遠く離れているようなところでも、道路の脇に光ファイバーが敷かれています。
  今後のユビキタス社会を考えると、やはり高速通信網の整備は不可欠でしょうね。

潮谷そうですね。私が掲げる「安全安心」にもつながりますから。熊本でも今年の2月にユビキタス技術を活用した「くまもと安心移動ナビ・プロジェクト」の実証実験をします。併せて、ユビキタス社会の「いつでも、どこでも自分が必要な情報をとることができる環境」を実感できる人は少ないので、県の施設にユビキタス社会を体感していただくコーナーをつくろうとしています。
  ユーザーがツールとして使いこなせるようにならなければ意味がありませんから、障害者や高齢者をはじめ多くの皆さんに体験していただきたいですね。

眞柄では最後に、知事の夢をお聞かせいただけますか。

潮谷これまでいろいろとお話しさせていただきましたが、すべてはみなさん1人ひとりが大事にされる社会をつくっていきたい、という思いにつながっています。それが私の夢です。
  私、こう見えても案外のんきなので(笑)、なかなか前進しないのですが、「絶対に実現させる」という強い気持ちで進んでいきたいと思っています。

眞柄強い思いはひしひしと伝わってきました。ぜひ熊本、そして日本を安全で安心な住みやすいところにしてください。今日は本当にありがとうございました。

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対談目次

1)「3本の矢」から「四輪駆動」「オリンピックの輪」へ徐々に広がる女性知事ネットワーク

2)老若男女、障害の有無、国籍を超えてその人らしい人生が送れる地域にしたい

3)ボランティア意識の高まりがスペシャルオリンピックスを成功に導いた

4)進出企業が「水の大切さ」を地元にも広めてくれる

潮谷 義子氏 ゲスト:潮谷義子氏
熊本県知事

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

プロフィール

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