眞柄ご専門の福祉分野でも着実な進歩を遂げられているようですね。
潮谷保健、福祉、医療が私の代名詞でもあるので、そのシンボルとして熊本市の健軍という場所に、「健軍くらしささえ愛工房」という地域の方々の声を生かした多機能スペースをつくりました。
公営住宅の建て替えがきっかけだったのですが、その時に徹底的にアンケート調査を実施しました。すると精神障害者を家族におもちの方からは、「病院から出てすぐに職業につかせるのは心配」というお話がありました。「子どもがひとりでいる時間が心配」という共働きの親御さんもいらっしゃいましたし、お年寄りの方たちから「家族がいない時間はさみしい」といった声もあがりました。
そこで介護や子育てを支援するスペースとともに、障害をもつ方々が職場適応訓練のために働くことができる喫茶コーナーを有する小規模多機能スペースを公営住宅の1階につくりました。ここの運営はNPO法人にお願いしており、すぐそばにある商店街の空き店舗を利用してつくられた、ニートや不登校の子どもたちをバックアップする施設の運営もされています。喫茶や子育てスペースの利用者は増え、商店街や自治会などと連携した取組みも広がってきており、いつでも誰でも気軽に集える「地域の縁がわ」として定着しつつあります。
これらは、いわば都市型地域福祉の1つの姿ですね。次に過疎型の対策も必要になりますが、それについては日本一の石段がある美里町で試みをつづけています。町村合併や少子化の影響で小学校などの建物が使われなくなっていますが、これをつぶさずに地域のための施設に転換していこうというモデルづくりを進めています。
また、私は、「安全安心」が暮らしの原点であると考え、治安だけでなく食などを含む幅広い分野での「安全安心」の確保に向け、犯罪の起きにくいまちづくりや食の安全安心に関する条例の制定、全国トップレベルの食品検査体制の整備、防災対策などに取り組んでいます。地域住民による防犯パトロール活動なども広がってきており、こうした動きを更に横に広げていかなければなりません。県民の皆さんと一緒になって、高齢者、障害者を含むすべての方々が安全に、安心して暮らしていける熊本にしたいですね。
眞柄県民意識の1つの象徴に、ボランティアへの参加度があると思います。先日、熊本で開催されたスペシャルオリンピックス(知的発達障害をもつ人が参加する競技会)のナショナル大会でも、多くのボランティアが活躍されたそうですね。
潮谷2005年に全国ボランティアフェスティバルが熊本で開催されたのですが、それが1つのエネルギーになって、今回の2006熊本大会を支えてくれたといえるでしょうね。
実は私はスペシャルオリンピックス熊本の立ち上げメンバーなんです。アスリートの保護者のみなさんから「どうして熊本は知事まで出てきてやっているの?」という声があがったのですが、ほかのメンバーの方々が「あの人は知事になる前からこれをやっていて、まさか知事になるなんて誰も思っていなかった」と(笑)。
今回、私も直接アスリートの皆さんの一生懸命な姿を拝見しましたが、本当にすばらしい大会でした。NPO法人スペシャルオリンピックス日本の三井理事長さんが実務を担う一方で、名誉会長である細川佳代子さん(細川護熙・元総理の夫人)が企業やマスコミをまわって協力をお願いし、また多くのボランティアの皆さんにはそれぞれの分野で力を発揮していただきました。非常にいい役割分担の中で運営されていたと感じました。
映画『Believe』(知的発達障害をもつ人々自身の手による、知的発達障害者のドキュメンタリー作品)も多くの方に見ていただきたいですね。
眞柄ただ、残念ながら日本ではスペシャルオリンピックスの知名度が低いですね。
潮谷そうですね。それと、競技会の代表にメダルを取れそうなアスリートを選ぶ傾向も問題だと思います。メダルを取るのも大切ですが、それを第一の目標にすべきではありません。どんなに重度の障害を抱えていても、その人のもつ力に磨きをかけ、競技会では精一杯の表現をする。その延長線上にメダルがあるべきだと思います。
それがスペシャルオリンピックスの本来の姿だったのですが、だんだん競争が中心になってきています。繰り返し原点を説いていく必要がありますね。
いずれにしても、ボランティア活動は熊本県内に根づきつつあります。つい先日、人吉・球磨地域で「くまもと国際グリーンツーリズムシンポジウム」が開催されましたが、その時もボランティアの方々が活躍してくださいました。県では「くまもとふるさと食の名人」を認定して素材や郷土料理の伝承に努めていますが、その「名人」の方々がパーティの料理を地元の食材でつくってくれたんです。
また、熊本では着付け教室の人たちが重い障害をもっている方々に着付けをしてくれたりもしています。和服を着る機会はあまりないので、みなさん喜んで、その姿を見たときには私もうるうるしてしまいましたね。
このように、ボランティアにはいろんな形があります。労力を提供するものもあれば、財政的なボランティア、インターネットを使ったボランティアもあるでしょう。そうした様々なボランティアの存在を、社会福祉協議会などがしっかりとアピールしていくことが必要ですね。多くの方に、「あ、これなら私にもできる」と思っていただければ、ボランティアの輪がさらに広がりますから。