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エグゼクティブ対談 【第24回】潮谷 義子氏 (熊本県知事)

ユニバーサルデザインとパートナーシップですべての人が大事にされる社会をつくりたい(2/4)

老若男女、障害の有無、国籍を超えてその人らしい人生が送れる地域にしたい

眞柄そうした視点で考えると、知事としてすでに2期目に入られているということは、男だから、女だからということではなく、潮谷さん個人として県民に支持されているということでしょうね。
  ところで知事として、熊本の未来像をどのように描かれていますか。

潮谷私はすべての発想の起点として、県民が中心であるということを大切にしています。これは長い福祉生活の中で学んだクライアントセンタード、つまり利用者が中心という考え方がもとになっています。この視点を失ってしまい、「私はこんなことをしてあげた」とか、「してあげている」という発想になると、自分がその見返りとして利益を受けてしかるべきだという感覚になってしまいます。それでは福祉は成り立ちません。
  それと同じで、県民が中心であるということは、行政が「何かをしてあげる」という感覚を捨てなければならないわけです。
  そこから発想し、県民の視点で熊本の未来像を考えるという観点から、私は、人は終の住処(すみか)をどういったところに求めるのだろうということを常に考えています。そして、豊かな自然とおいしい食べ物や水があり、産業がきちんと息づいていて、保健、福祉、医療が充実していて交通アクセスも治安もいい。そういうところに人は住みたいと思うのではないかと。だから私はそのような熊本県をつくるために進んでいきたいと思っています。私の施策は、すべてここに収れんされるわけです。
  そのために今、6分野からなる重点施策を中心に取組みを進めていますが、地方分権の流れが加速する中、職員にはチャンス、チェンジ、チャレンジの3つの「C」を意識するように言っています。時代はものすごい変革の中にあるわけですが、行政マンはそれをチャンスととらえる力をもたなければなりません。そして、そのチャンスの中で自分自身や行政システムをどのようにチェンジできるか。そこにチャレンジしていこうというわけです。

眞柄なるほど。それはわれわれ民間企業の課題とまったく同じです。日本人はどうしても守りというか、変化を好まない部分があります。でも、守るべきところと変えていかなければならない部分のバランスを考える必要がありますね。

潮谷職員のみなさんには、「『石の上にも3年』という言葉があるけれど、もはや3年座っていたら忘れられるよ」と話しているんです(笑)。

眞柄これまでのお話は行政の方向性や職員の意識をどう変えていくかということだと思いますが、知事のおっしゃるような熊本県をつくっていくためには、主人公である県民の意識も変わっていかなければなりませんね。

潮谷知事に就任してから、県民のみなさんに県の総合計画の中で、「創造にあふれ、生命(いのち)が脈打つくまもと」という基本目標をお示ししました。老若男女、障害の有無、国籍を超えて、その人らしい人生が送れる熊本、本当に住んでよかったと思える熊本にしましょうと呼びかけたわけです。また、これを実現する手段としてユニバーサルデザインとパートナーシップを打ち出しました。
  パートナーシップというのは対等の関係です。従来、ともすると県庁職員は「パートナーシップを組んであげる」という意識でいたかもしれません。そうした“県職員対県民”という構図ではなく、人間対人間という対等の立場でパートナーシップを結ぶことができれば、みんなが一体となって新しい熊本県像に近づいていける。そうした関係を樹立することが重要です。

眞柄手応えのほうは、いかがですか。

潮谷「自分たちで切り開いていく」という意識や、「今の社会システムを変えていかないと、明るい未来像が描けない」という考えを県民のみなさんにもっていただくのは大変ですね。
  東京から移り住んだ友人は、「熊本では地域にいろいろ貢献していると、米も野菜も魚もちょうだいする。現金がなくても何日か暮らせる」というんです。それほど豊かな土地柄ですから、危機感をもっていただくのは難しい。
  また、「肥後の鍬形」や「肥後もっこす」という言葉が示すように“おらが大将”の県民性がありますし、「肥後の引き倒し」といわれるような風土もありますから……。
  でも先日、東京から来た友人が空港からタクシーに乗った時、運転手さんに「熊本ではユニバーサルデザインをやっています」といわれたそうです。少しずつ変わってきているのかなとは思いますね。

眞柄日本人は急激な変化は好まないし、得意でもありませんからね。

潮谷そうですね。県という大きな船は、舵を急激に切ると沈没してしまうかもしれません。進んでいくべき方向は示しましたので、あとは着実な歩みができればいいと考えています。
  経済、産業に関しても、地域経済は依然として厳しい状況にありますが、着実に歩みを進めています。
  私の知事就任後ではソニーさん、サントリーさんなどに来ていただき、2006年では過去最高の水準となる38件の誘致に成功しました。いまでは100社を超える半導体関連企業が立地し半導体がフルセットでつくれるようになっていますし、2006年から2007年にかけて県内の2つの拠点で太陽電池の量産も始まります。とくにソーラー産業は環境とのつながりも深いので、今後、環境立県をめざす熊本の基幹産業に育てていきたいですね。
  また、自動車関連産業の九州への集積も進んでいます。九州の7県で「九州自動車産業振興連携会議」を立ち上げ、企業誘致や地場企業育成に連携して取り組んでおり、今後さらに「カーアイランド九州」の基盤を強化していきたいと思っています。ちなみに、自動車メーカーのトヨタさんとはユニバーサルデザインでも連携しており、県の職員を受け入れていただいているんですよ。
  一方で、熊本を支えてきた第一次産業もしっかりとサポートしています。先端産業と伝統的な産業の両端を、熊本県の基盤としていきたいですね。

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対談目次

1)「3本の矢」から「四輪駆動」「オリンピックの輪」へ徐々に広がる女性知事ネットワーク

2)老若男女、障害の有無、国籍を超えてその人らしい人生が送れる地域にしたい

3)ボランティア意識の高まりがスペシャルオリンピックスを成功に導いた

4)進出企業が「水の大切さ」を地元にも広めてくれる

潮谷 義子氏 ゲスト:潮谷義子氏
熊本県知事

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

プロフィール

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