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エグゼクティブ対談 【第22回】吉田 和正氏 (インテル株式会社 代表取締役共同社長、
インテル コーポレーション セールス&マーケティング統括本部 副社長)

夢をテクノロジーが実現していくなかに、大きなビジネスチャンスがある(2/3)

Core 2 Duoプロセッサーの登場でユーザーは久しぶりに夢をみることができた

眞柄プラットフォーム戦略に取り組まれる以前から、インテルさんは「インテル・インサイド」といった印象的なテレビCMなど、コンシューマに対するメッセージを発信しておられましたね。手がけている商品は、直接エンドユーザーに届くものではなくて、どちらかというと特定の顧客に対するものだと思うのですが、なぜだったのでしょうか。

吉田直接、商品を売る相手がハードメーカーさんだったとしても、一般消費者のあいだで確固たるイメージがなければ、結局はインテルのテクノロジーが詰まった最終商品を購入しようという動機につながりません。インテルを使えば楽しい。インテルを使えば自分の夢が実現できるんだ―というイメージを、日本中に伝えたかったのです。

 もともとインテルのブランドイメージは、アメリカではもちろん、日本でも企業のあいだでは高かった。しかし、一般消費者のあいだではそうではありませんでした。4年ほど前の調査では、一般消費者のあいだでの認知度は500番台―マイクロソフトさんはトップ5に入っておられましたが―にすぎかなった。当時、インテルの広報宣伝といえば難しい内容ばかりで、一般消費者にお伝えしても理解していただけないようなものばかりだったので、当たり前だと思います。

 そこで、マイクロプロセッサーの技術について語るだけではなく、それを使うことによってどんなに楽しい経験ができるか、どれほどの驚きがあるかを伝える方向にシフトしたわけです。

眞柄なるほど。世界的企業であるインテルさんでも、ブランドイメージの強化には苦労されてきたわけですね。

 日本の中小企業は力をもっていながら、それをアピールできていないところが惜しいですね。インテルさんの例は非常に参考になると思います。

吉田とくに日本の場合、マーケティングという考え方自体が根づいていませんから、ブランディングは大変ですね。

 インテルでは、2006年の1月から「インテル。さあ、その先へ。」というキャッチフレーズを打ち出して、さらなるブランドイメージの強化に努めているところです。

眞柄マイクロソフトもそうなのですが、本社がアメリカだと日本でこうしたキャッチフレーズを1つ打ち出すにも相当の苦労がありますね。日本のマーケット状況や、日本でのインテルの立場などを本社に説明するにあたって、かなり骨を折られたんじゃないですか。

吉田以前は本社がつくったものを世界中で使っていました。これだと、確かに効率はいいですが、現地ユーザーの心をとらえるのは難しい。とくに消費者との接点はつくれません。

 そこで2004年から日本独自のものを作るようになったのですが、交渉は大変でした。2003年に社長に就任するまでは法人の担当だったので、お客さまの要望を本社にアピールすることはあったのですが、それ以外の経験はあまりありませんでしたから。

 先ほども触れましたが、インテルについてきちんとしたイメージを日本のユーザーにもってもらいたい。そのためには日本市場でブランドイメージを構築することが必要なのですが、アメリカの企業では、提案を精神論だけで通すことはできません。そこで広告代理店の方にも協力いただいて徹底的にリサーチをし、詳細なデータや調査会社の意見を収集して幹部会に提出しました。

 もう1つは情熱ですね。当時トップだったクレイグ・バレットの前で、「とにかくやらせてくれ。結果は出すから」と説得したんです。クレイグはニヤニヤ笑っていましたが、なんとかやらせていただけることになったんです。

眞柄アピールといえば、吉田社長はTBSテレビの「がっちりマンデー!!」といったテレビ番組に出演されるなど、直接エンドユーザーにもアピールされていますね。8月5日に「Core 2 Duoプロセッサー」が発売されたとき、秋葉原で直接ユーザーに語りかけられたことには、とくに感銘を受けました。

 思い通りに行動しにくいといわれる外資系日本法人のトップが多いなか、ここ数年の吉田さんの行動には強いパッションを感じます。

吉田その背景には、Pentiumプロセッサーの大成功と、パソコンに対する私なりの考えがあります。

 まず、インテルのマイクロプロセッサーは286から386、486と進化してきました。そのたびに旧製品を否定して新しいプロセッサーへの乗り換えを促してきたのですが、こうした過激なマーケティングは日本の市場には合わないと思いつつも、次のPentiumプロセッサーが大成功を収めて、そのうえにあぐらをかいてしまった。

 その間に他社が強力な対抗商品をリリースするなどして、たいへん厳しい競争環境に立たされてしまったわけです。そうしたなか、次のプロセッサーに移行するとき、これまでと同じようなマーケティング戦略を繰り返していいのか、という疑問がありました。

 もう1つ、パソコンはいまやコモディティ(日用品)になっています。使いやすさ、わかりやすさが前面に打ち出され、老若男女が誰でも使いこなせる。それは大事なことだと思います。でも一方で、パソコンは限られた人が使いこなせるものであってもいいと、私は思っているのです。

 いまやパソコンとテレビは同じような扱いをされているわけですが、テレビはパッシブ(受動的)に楽しむものですね。だからユーザーは何も考えなくても、エンターテインメントとして楽しめばいい。ところがパソコンはアクティブ(能動的)に働きかけて使うものです。「パーソナル・コンピュータ」という名の通り、自分ひとりのためのツールであり、このマシンを使って自分自身を表現するというものです。

 先ほど眞柄さんがおっしゃったように、コンピュータの性能は飛躍的に進化していますから、本当に使いこなすには勉強しなければなりません。そういう気持ちをもったユーザーに使ってもらうからこそ進化しつづけられるわけで、万人のものになってしまうと進化は止まってしまいます。

 その意味で、Core 2 Duoプロセッサーの発売はいい機会でした。秋葉原に集まる人たちは、パソコンを使いこなしている人が多い。用途はゲームかもしれませんが、それでもクロック周波数を極限まで上げ、メモリーを限界まで増やす。そうして自分だけのパソコンを作りあげている人たちなんです。

 そういう人たちにとって、Core 2 Duoプロセッサーは強烈なインパクトをもっています。クロック周波数を上げメモリーを増やしても、Pentiumプロセッサーのままなら性能は3割向上する程度でした。ところがCore 2 Duoプロセッサーなら、一気に2倍以上の性能を実現することもできます。キャッシュだけをとっても、少し前のサーバーのスペックに匹敵するほどです。だから彼らはCore 2 Duoプロセッサーを、「待ってました」という気持ちで迎えてくれたのだと思います。

 この「待ってました」という興奮を、ここ数年、我々はユーザーに対して提供できていなかった。その興奮に対して、私も何かしたいと思ったわけです。

 日付変更線の関係で、日本は先進国のなかで最初に新しい日を迎えます。ボジョレ・ヌーボーと同様に、Core 2 Duoプロセッサーもアメリカより先に発売することができるわけです。そこで深夜0時、8月5日に日付が変わった瞬間に、秋葉原で先行販売をすることになりました。

 消費者の方々が集まってくれるかどうか、内心ドキドキしていましたが、何百人と集まってくれて―。第1号を手渡ししたり、みなさんに挨拶したり、私のほうも興奮したイベントでしたね。

眞柄パソコンの草創期、ユーザーのあいだではもちろん、業界でもよく夢が語られていました。ところが最近は、あまり夢が語られなくなった。パソコンがコモデティ化し、これからどう進化するかではなく、どう使いやすくなったかという話題が中心になってしまっていたと思います。

 そんななかでCore 2 Duoプロセッサーの登場は、本当に久しぶりにユーザーに夢を与えるものでしたね。

吉田処理しなければならない情報はますます多くなっていますから、アプリケーションやサービスはどんどん重くなっています。また、セキュリティ対策も十分に講じなければならないので、ハイパフォーマンスのプロセッサが待ち望まれていたんですね。

眞柄今後、Core 2 Duoプロセッサーを中心にしていろいろなデバイスが登場すると、中小企業の方たちも部品などでさまざまなビジネスができるようになる。想像以上に速いスピードで世の中が変わっていく可能性もありますね。

吉田Core 2 Duoプロセッサーを含めた新しいプロセッサーについては、パフォーマンスの高さもさることながら、低消費電力が大きなポイントです。以前のPentiumプロセッサーは100Wを超えるものもありましたから、大きな電力を消費すると同時に発生する熱をどう逃がすかという問題がありました。ところがCore 2 Duoプロセッサーは65Wです。次には45Wをターゲットにしているんですが、ここまでくると熱を逃がすためのファンも必要なくなります。

 ファンは機構部品ですから、大きなスペースが必要です。それを搭載しなくていいということになれば、パソコンのデザインも大きく変わるでしょう。また、薄型テレビに組み込むなど用途も広がるはずです。つまり、メーカーさんにとっては大きなチャンスがやってくるわけです。

 インテル・アーキテクチャーのなかでは、すでに消費電力が4Wというウルトラモバイル・プロセッサーもつくっています。今後は更に2W、1Wと実現していくでしょう。パフォーマンスに優れていて、電力効率もいいマイクロプロセッサーが登場すれば、たとえば携帯電話くらいのサイズでパソコン並みの頭脳をもった製品が可能になるかもしれません。

 そう考えると、Core 2 Duoプロセッサーでユーザーの方には夢をみていただいたかもしれませんが、今後は更に大きな夢をみられる時代になるでしょう。

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対談目次

1)企業が自立するための優れた技術と優れたソリューションを組み合わせる

2)Core 2 Duoプロセッサーの登場でユーザーは久しぶりに夢をみることができた

3)日本はもっとすばらしい国になれる。そのために一生懸命でありつづけたい

吉田 和正氏 ゲスト:吉田 和正氏
インテル株式会社 代表取締役共同社長、 インテル コーポレーション セールス&マーケティング統括本部 副社長

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

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