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エグゼクティブ対談 【第21回】森 喜朗氏 (日本ラグビーフットボール協会会長、衆議院議員)

人間社会で大切なことをスポーツから学ぶ(2/4)

自国に対する尊敬の念は海外ではごく自然なこと

眞柄森会長と同郷の松井秀喜選手やイチロー選手は、今年もメジャーリーグで活躍していますが、彼らを見て気づくのは、日本選手が海外へ行くと、国旗や国家に対する意識が変化するということです。ご承知のように、メジャーリーグでは試合前に必ず国歌を演奏します。その時、松井選手やイチロー選手が帽子を脱ぎ、手を胸に当てている映像はよく見かけます。あの姿は、これまで日本では馴染みがなかったのではないでしょうか。

そうでしょうね。

眞柄オリンピックにしても、サッカーのワールドカップにしても、試合前には必ず国歌が流れ、自分たちの国に対する尊敬の念、リスペクトする気持ちがごく自然に表れてきます。ナショナル・フラッグに向かって胸に手を当てるという行為は海外では自然なのに、なぜか日本国内になると抵抗を覚えてしまいます。残念ながら、過去のトラウマがあるせいでしょうが。

国旗や国歌は無視せよ、という意識的な教育も一時はありました。今は法律もできて無視することはないにしろ、教える先生たちのほうには、まだ国旗に対するわだかまりがあります。国旗は認めるが、日の丸なのがいけない、というような考え方もあります。

眞柄サッカーの試合を観ていると、ブラジルから日本に帰化した選手たちは、ちゃんと日の丸に向かって胸に手を当てます。その横で、日本で教育を受けた選手たちはただ立っているだけです。不思議な光景ですよね。

その点、ラグビーはまだきちんとしていますよ。国歌が流れれば、ピシッと姿勢を正します。

 あれは国歌をどう思うか、国旗をどう思うかという問題ではなく、そういう場面では姿勢を正すということが身についているからです。

眞柄とくに国際大会の場合は、国を代表して戦うわけですから、選ばれし者のプライドというものがあってしかるべきでしょう。日本の選手を見ると、そのプライドがどこにあるのかと思うことがあります。

ラグビーと比較するのは申し訳ないけど、サッカーのほうはわりと自由奔放で、髪の毛にしても茶髪が珍しくない。それでも海外のチームで活躍した選手は様子が違ってきますね。三浦知良選手でも中田英寿選手でも、以前に比べると見違えるようにきちんとしている。だから、教育や風土は大切だと言うのです。

眞柄日本でなかなか受け入れられないのは大変残念な気がします。教育という意味では指導者の役割は重要ですが、森会長はスポーツ指導者についてどうお考えですか。

今年は夏の甲子園が大変盛り上がりました。高校野球でいえば、多くの学校で実際に指導しているのは、学校の教諭よりも野球に熱心なOBやボランティアの方々です。特に公立高校はそうです。チームの監督は教諭が務めていますが、コーチはたいていOBなどのボランティアです。あの方たちは仕事を持っていながら、朝から晩まで、土曜も日曜もずっと部員たちの世話をしています。自分の奥さんに握り飯をつくってもらって、部員たちに食べさせたりする。そうなると当然、部員たちのほうもコーチに親しんでいき、何かと頼るようになります。これが学校の先生には面白くないわけです。

眞柄そうでしょうね(笑)。

それがもとでトラブルが起こることも珍しくありません。学校の先生はそこまでやる必要はないと考えているし、組合からも土曜、日曜は休むように言われています。コーチとは同じようにはいきません。

 ですが、野球部員たちはとにかく強くなりたい一心です。だからどうしても、良い先輩を招いて指導してもらうことになる。そのうち先生とコーチとの間で、指導をめぐって軋轢が生じてきます。これは多くの高等学校に共通していることでしょう。

 地域のスポーツ活動では、日本体育協会が公認するスポーツ指導員という、専門資格を持った方たちがいます。これと同じように中学校や高等学校にも、教諭とは別に専任のスポーツ指導者を置くべきだと私は思います。

眞柄それはいいですね。

野球やサッカーなど人気の競技はよいですが、他のスポーツはボランティアの指導者が見つからないケースが多い。スポーツ指導者がいれば、幅広い種目で指導にあたれます。

 ラグビーでいえば、中学校にはほとんど指導者がいません。小学生の間ではちびっ子ラグビー教室が盛んなのに、中学に入ると学校には部活がない。しかたなく、他のスポーツ部に入っているというお子さんは多いですよ。私は少年ラグビースクールの校長を務めていたので、そのあたりの事情は良く分かります。

眞柄ラグビースクールの校長をされていたこともあるのですか。うちの子どもたちが地域のラグビースクールでお世話になっているので、私も日曜日はコーチをやらせてもらっています。指導しているのはみなさんボランティアで、本当に熱い方ばかりです。

ラグビーは、好きな子どもたちがたくさんいて親や指導者たちも熱心です。ところが、彼らが小学校を終えて中学校に入ると、みんな別のスポーツに取られてしまうわけです。ラグビーをやっていたから運動能力は高いので、野球やサッカーにすぐ引っ張られてしまう。少年ラグビースクールでせっかく育てても、高校や大学までキャリアがつなげていけないということです。

眞柄ラグビーは高校生になるまで、確かに空白期間ができますね。小学校の6年間に指導者たちが手塩にかけて育てた子たちの受け皿がありません。実にもったいない話です。

お父さんもラガーマンで「中学生の間は別のスポーツをやって、高校になったらまたラグビーを始めればいい」と言ってくれるような家庭環境ならまた戻ってきてくれるでしょう。しかし、たいていは戻ってきません。

眞柄競技を幅広く選べるという意味からも、学校にスポーツ指導者が必要ということですね。

学校の先生方が「自分たちは学問を教えるのが仕事で、スポーツ指導や情操教育は自分たちの仕事ではないんだ」と思われているのなら、それはそれでいいでしょう。私は百歩下がって認めます。その代わり、学校には専門のスポーツ指導員を置いて、子どもたちがスポーツに打ち込めるようにして欲しいと思いますね。

対談目次

1)人間社会で大切なことはすべてスポーツに織り込まれている

2)自国に対する尊敬の念は海外ではごく自然なこと

3)ラグビー選手がトライを決めても大げさによろこばない理由

4)会長就任はラグビーへの恩返し 故・奥克彦大使の想いを実現する

森 喜朗氏 ゲスト:森 喜朗氏
日本ラグビーフットボール協会会長、衆議院議員

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

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