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眞柄古川社長は94年から3年間、アメリカに赴任されていますね。 古川はい、ジョージア州のアトランタにいました。 眞柄アメリカという国をご自分の目で見て、どのような印象をもたれましたか? 古川アメリカで強く意識したのは、多様性を受け入れる土壌ですね。人種の坩堝とよく言われますが、しばらく現地で暮らすとそれがだんだん実感を伴ってわかってきます。
眞柄私にも経験はありますが、たしかにそうですね。 古川日本人だろうと、どの国の出身だろうと、みんな平気で受け入れてしまう。言葉、習慣、、顔立ち、体型など、いろんな方がいるのに、星条旗の下では、みんな仲間なんです。 当時はせっかくアメリカにいるのだからと、日本には帰らないようにしていたんです。ところが、1年ほどして帰ってみてカルチャーショックを受けました。いまでも覚えていますが、成田エクスプレスに乗った瞬間、自分のなかにものすごい違和感が生まれました。みんな髪の毛が黒い。肌の色も同じ。似たような背広を着ている。日本にいれば不思議でないことが、12時間のフライトでアトランタから戻ると強烈に意識されました。それは日本からアメリカへ渡ったときに感じた違和感よりはるかに大きかったですね。 日本の成り立ちから考えて、多様性に乏しいのは無理もないことです。ただ、もっと多様性を受け入れていかないと真のグローバル化にはならない。日本人は本当に優秀だと思いますが、デヴィエーション(逸脱)は非常に狭い。もし、他の国々よりグローバル化がうまくいかないとすれば、そこが問題だろうと思います。 日本にいると、日米関係は「日本 vs.アメリカ」で捉えますが、アメリカにいると「日本 vs.世界選抜連合軍」に見えます。あの視点を得たことは私にとってインパクトが大きかった 眞柄私は大学時代、ハワイにいたので、白人社会より東南アジアの人たちと過ごす時間が長かったんです。ところがフットボールの試合は、白人はわずかしかいないのに、国歌斉唱と星条旗の掲揚からはじまります。多様性を重視しつつも、まとまるときにはすぐ1つになる。日本ではちょっと味わえない感覚ですね。 だから、マリナーズのイチロー選手がWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、あれだけ「日本代表として勝ちたい」という気持ちを出したことも私なりに理解できます。あのクールなイチローがそこまで熱くなったのは、アメリカという国にいるからでしょう。もしずっと日本のプロ野球チームにいたら、あそこまで熱くならなかったと思います。 古川それは、現役引退を表明したサッカーの中田英寿選手にもいえることかもしれませんね。 眞柄わが国では2001年に政府の「e-Japan戦略」がスタートし、ブロードバンドの普及などITのインフラ整備では高い成果をあげました。2003年からはIT利活用に焦点を当てた施策を展開していますが、電子申告や電子入札など政府が掲げた目標を達成していない分野も多く残っているようです。実際に私などが企業を訪問させていただきますと、まだまだITの利活用は進んでいないというのが実感です。教育現場にしても同じ印象があって、子どもを学校へ通わせている身としても、IT利活用がもう少し進んでも良いように思っています。古川社長はIT利活用について、現状をどう捉えていらっしゃいますか? 古川私はIT利活用の現状について、それほど悲観的には思っていません。最初の「e-Japan戦略」ではたしかにインフラ整備が急ピッチで進みましたが、インフラの立ち上げは技術オリエンテッドな面があり、政策的に投資すれば一気に進むことは容易に期待できます。 それに対して利活用のほうは、私はある程度の年月が必要だと考えています。というのも、IT利活用が進むためには、個人の生活スタイルや仕事のやり方が変化しなくてはならないからです。利活用というのは、生活そのものですから。
眞柄なるほど。 古川たとえば、私の世代では携帯電話も十分に使えない人がたくさんいます。けれど、いまの小学生、中学生は携帯電話で当たり前にメールを打ちますし、パソコンだって使いこなしている。大学生になると、ケータイやパソコンがないと生きていけないという人が大勢います。そういう世代が10年後、20年後に社会を動かすようになれば、自ずとIT利活用も大きく進むのではないでしょうか。 逆にいえば、アプリケーションというものは、その時代の生活様式に沿ったかたちでなければ広がらないということです。その観点からいえば、いまでもかなり利活用されていると思います。 眞柄政府や私たちが考える利活用に、まだライフスタイルのほうが追いついていないと。 古川私はよく例として話すのですが、アメリカで最初にパソコンを買おうとしたとき、家電の量販店へ行ったんです。すると、パソコン売り場に杖をついたおばあさんがトコトコ歩いてくる。どうするのかなと思って見ていると、おばあさんはパソコンの前に立ち止まってキーボードを叩きはじめたんです。 日本の量販店で、杖をついたおばあさんがパソコンをいじるシーンなんて見かけませんよね。冷蔵庫や洗濯機ならわかりますが、アメリカではお年寄りでもパソコンに平気で触れるということです。 そのとき実感したのは「ああ、なるほど、アメリカにはもともとタイプライター文化があって、その延長線上にパソコンがあるのだな」ということです。キーボードに抵抗感がないから、パソコンにもすぐ親しめる。日本のほうは、突然見慣れないものが出現したわけですから、なんとなくパソコンは怖いということになる。心理的なバリアーの違いが大きいと感じました。 同じ頃、アメリカで確定申告に使う会計ソフト「Quicken」が飛ぶように売れていたのも驚きでした。まだ日本ではパソコンがほとんど普及していない時期でしたから。 眞柄アメリカはサラリーマンも確定申告は自分でやりますからね。半ば強制的に、パソコンを使わざるを得ない状況があるのは確かです。 古川もし日本で同じことをやらされたら大変でしょう。量販店で見たおばあさんと「Quicken」を見た経験から、一般のIT利活用はやはりアメリカで育ってきたと思いますね。 その意味では、日本もここ数年でずいぶん変わりました。いまの中学生や高校生は、パソコンに対して何ら抵抗感がありませんから、彼らが世の中に出てくれば、最終的なアプリケーションのほうも間違いなく進みます。私はあまり悲観的には考えていませんよ。 |
1)創業100年を迎えて見つめ直す企業にとって“変化”とは何か
4)いまの学生たちが社会人になればIT利活用も一気に進展する
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