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エグゼクティブ対談 【第19回】横田英毅氏 (ネッツトヨタ南国 代表取締役社長)

経営品質を支える“人づくり” 視点は“10年後”“20年後”にあり(3/3)

人材で苦労したからこそ“人づくり”の大切さがわかる

眞柄創業以来、人材についてはずいぶんご苦労されてきたそうですね。

横田当社は26年前、四国に33社ある企業グループの一員としてスタートしました。社長だった私の父は、周囲のグループ企業に応援を頼みましたが、どこからも幹部社員となるような人材はきませんでした。私たちのグループには歴史、伝統、信用、土地、カネはある。ただし、人材だけはない。そう強く感じたわけです。

眞柄横田社長が人づくりに本気で力を注ぐのはそういった原点があるからですね。

横田当時、人材では本当に困りました。グループ憲章をみると「企業は人なり」と書いてあるのに、実際は採用や教育にまるで力を入れていない。よく観察してみると、私たちのグループだけの問題ではありませんでした。四国だけでなく、自動車業界だけでなく、全国共通の課題だと気づいたのです。

 採用や育成は、目先の結果から一番遠いところにある仕事ですから、みんな進んで手をつけない。その時に「ああ、ここに力を注げばいいんだ」と気づきました。10年後20年後にむけて自分たちは人づくりをはじめようと考えたのです。

 まずは「良い人材が入ってこなければ、良い会社はできない」という観点から、就職で人気の企業、人材育成の力が地元でナンバーワンの企業を目指せば、良い会社がつくれるのではないかと考えたわけです。

眞柄横田社長が36歳の時につくった学生向けのパンフレットがありますね。そこにはこんな文章があります。

 「君はどこから来たのか、そしてどこへ行こうとしているのか。仕事をするうえで一番大切なのは、やりがいではないでしょうか。人間は新しい発見に驚き、感動し、成長するよろこびを実感して、初めて生きがいを感じるのではないでしょうか。全社員がつねに考え、勇気をもって可能性に挑戦し、たとえ失敗してもそれを次なるチャレンジへの原動力として、各々がのびのびと能力を発揮できる職場こそ、あなたの職場です」

 私はこれを読んで非常に良い文章だと思いました。いまでも十分に通用します。むしろ、まさにいま必要とされる視点ではないでしょうか。

横田実はこれ、初年度につくった失敗作品なんですよ(笑)。

眞柄これが失敗作ですか。当社の来年度の採用にそのまま使わせていただこうかと考えていたんですけど(笑)。いま一番必要なのが、こういう観点でしょう。よろこびを実感し、感動する、という経験ができない社会ですから。

横田感動する、ということは人間性そのものです。だから、人間性尊重という価値になるわけです。

 一般的なパラダイムとしては、自分の時間を会社に提供することで給料がもらえる、自分が苦しめば苦しむほどおカネは多くもらえる、という考え方がありますね。私たちの会社はそうではなく、「会社に来るのが楽しい」という人ほど給料が多くもらえる。楽しく働く人ほど評価が高い。そのような会社にしたいと考えています。

眞柄これまで中途採用はされずに、新卒採用からじっくり人材を育ててこられたということですが。

横田中途採用で良い人材が採れるのは大都市の話です。高知あたりでは中途採用で良い人材はいません。いくら力を入れても、良い人材ほど転職しようとしません。それでしかたなく新卒重視でやってきたということです。

眞柄拠点長を育てるのにじっくり15年かけられたこというお話ですが、それは社長と同じ判断ができるようになるということですか?

横田いまの私は判断業務を一切していません。かなり前から判断業務は下へ権限委譲しています。

眞柄重要な経営判断まで任せるとなれば、意思決定の価値観を信頼するということですね。どのようにすれば、価値観を共有することができるのでしょうか?

横田当社には、部門をまたいで集まるプロジェクトチームがあります。現在は8つのプロジェクトチームが動いていますが、社員は誰でも参加できます。たとえば、営業にまったく関係がない経理の人が営業のプロジェクトチームに入っていたりします。

眞柄そのプロジェクトチームが価値共有の場として機能していると。

横田これによって意思疎通がものすごく図れています。メンバーの出入りは自由で、しばらく参加していない人でもすっと入っていけます。たとえば、あるテーマでかなり議論が進んでいるのに、新たなメンバーが加わると、また議論が元に戻ったりもします。結論を急がない。実はこれが組織の風土を昇華させていくポイントの1つです。

 メーカーの担当者が私どものプロジェクトチームをみた時、「なんでこんな簡単なことを決めるのに、長い時間をかけるのか」と呆れていました。でも、私たちは何か結論を出すためにプロジェクトチームをやっているわけではありません。できるだけ結論を先延ばしにして、みんなでプロセスを共有していく。それによって気づく力、考える力をレベルアップしていくのが狙いなのです。

 プロジェクトチームでは、価値観の浸透が自然に進みます。議論していると、経営理念にそぐわない考え方は、誰もが自然に気がつくようになる。企業がもつ常識のレベルは、少しずつ進化していきますね。

 そのうち、部長の判断基準を課長がもつようになり、課長の判断基準を主任がもつようになり、主任の判断基準を新入社員がもつようになる。これがプロジェクトチームの狙いなんですね。

眞柄一見、遠回りのようでいて、実は大きな成果がある。急がば回れですね。実際の業務がテーマなら価値観がリアルに伝わって、人材育成という面で効果は高いでしょう。

横田教えない教育です。

眞柄外部の講師に講義してもらうより効果的で、しかも世代間ギャップが自然に埋まりそうですね。

横田確実に埋まります。多くの場合、社内教育ではレベルの高い人が低い人へ知識を伝達するスタイルになりますね。これは人材の成長とは何ら関係ありません。かえって人間の成長を妨げることになる。

 私は人材と知識は「鬼と金棒」の関係だと思います。鬼の身体が成長しないのに、金棒ばっかり大きくなると自分の力で使いこなせなくなる。頭でっかちに育ってしまう。鬼を大きく育てるのが本来の教育であって、最近の言葉でいえば「人間力」をつけることです。

 人間力を高めていくのは、実は知識を教えるのと正反対で、彼らにしゃべらせるのが一番効果的です。わからないなりに意見をいわせる。うちのプロジェクトチームは、新入社員でも誰でもパッと発言します。遠慮なしに意見を述べます。

眞柄たしかに最近の若い世代は遠慮しているのか、自分の意見を述べないですませる人が多いですね。

横田発言しないとその場にいる意味がありません。「参加とは参画することではなく、発言することである」というのは社訓の1つです。

 発言した時に、その人は初めて自分の意見が周りにどう評価されるかと考えます。これが成長のきっかけになります。

眞柄社内で訓練されれば、社外でもきっと同じでしょう。かなりの高等教育だと思います。

社内に託児所をつくり社会で役立つことを教えたい

眞柄教育ということでいえば、横田社長は地元の学校教育についても委員をなさってますね。

横田最近は採用で良い人材が見つからないから、学校にアプローチしています。

眞柄そこまで立ち入らないと人材がいないわけですか。

横田もちろん、社会貢献する企業でありたいという考えも理由の1つですが、それだけではありません。当社が求める人材を育てるためには、大学1年の時から教えてもらいたいことがあります。3年生4年生でインターンシップを経験しても遅い。1年生でインターンシップしないと、残り3年間がムダになります。大学どころか高校や中学、最近は小学生から教えたほうがいいという話も出ています。

眞柄ご自身のような民間ではなく、公的な部分に期待することはありますか?

横田山ほどありますが、期待しても何も変わらないから、自分たちにできることは何なのかと考える以外にないですね。本当に目的意識をもった人材を育てるには、自分たちで学校をつくらないと無理だろうとさえ思っています。

眞柄最後にお聞きしますが、横田社長にとって夢は何ですか?

横田いまの考え方で進化していくのが夢ですから、延長線上をただひたすらまっすぐ行くということです。現実レベルの夢でいえば、ネッツトヨタ南国を問題解決以外は何もしない会社、「対処」はやらない会社にすることがあります。「対処」というのは企業活動に本来は必要なことです。業績をあげること自体が「対処」ですから。

 それでも、対処レベルの仕事はできるだけ減らして、自分は問題解決レベルの仕事だけにしたい。社員もどんどん、そのほうへ仕事をシフトさせていきたいですね。

 「目標」を意識せずに、「目的」を追求するだけで自動的に「目標」が達成できるのが理想の姿です。具体的にいうと販売促進ゼロ、広告宣伝ゼロ、クルマを買いそうな人を探す仕事ゼロの会社です。従来の販売業務だった夜討ち朝駆けなんて一切なし。お客さま満足につながる仕事が90%を占め、あとの10%は契約業務だけです。

眞柄人づくりのほうではいかがですか??

横田学校のようなことはやってみたいですね。実はこんど社員に投げかけたいことがあるのですが、それは社内に託児所をつくるということです。つまり、女性社員が2人目、3人目の子どもを産める環境をつくるということです。

 いま当社の社員で、最も子どもが多いのは3人のお母さんです。ほとんどは1人です。これはどうもまずいぞと。子どもが2人3人とつくれるようにするのが企業としての社会貢献でしょう。

 子どもがたくさんいる暮らしは真の幸せ、価値前提の幸せです。良いクルマを買って、ハイビジョンテレビを買って、美味しい物を食べるという生活は事実前提の幸せです。

 社内に託児所をつくるのは、価値前提の幸せを追求するためです。いま各種の手当はなくなる方向ですが、育児手当は増やしたい。しかも1人目より2人目、2人目より3人目のほうが金額が多くなるというものです。

眞柄わが家は子ども3人なので、そんな制度があったら助かったでしょうね。育児手当は2人目3人目になると減っていきますね。実際に子どもを育てる側からいうと、なんで減っていくんだろうと思いました。

横田この案を社内に問いかけた時、子育てが終わった世代の社員たちも「それは良い制度や」と言ってくれるような会社が理想です。自分がもらえるかどうかという損得勘定でなく、価値で判断してもらえる。

眞柄そういう会社で働いてみたいですね。

横田その託児所では、大人になって必要になること、社会に出て役立つことを教えるしくみにしようと考えています。「社会に出て役立ったことはすべて託児所で学んだ」ですよ(笑)。それが評判になれば、社外の人たちも子どもを預けにくるに違いありません。

眞柄何ごとも価値の追求から発想すると、発展する先がこれまでと違うところになりますね。短絡的な思考と違って、横田社長は10年先20年先をみておられる。ビジョンが明確で、しかも有言実行ですから、来年のいまごろは託児所ができているかもしれません。たいへん勉強になりました。

本日はありがとうございました。

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対談目次

1)企業経営における「価値前提」と「事実前提」の違い

2)お客さま満足を高めるのは従業員満足を高めるため

3)“10年後の姿”を実現してきたが成長を求め日本経営品質賞にチャレンジ

4)いくつものバロメータで社長自ら社内の空気を読む

5)人材で苦労したからこそ“人づくり”の大切さがわかる

6)社内に託児所をつくり社会で役立つことを教えたい

ゲスト:横田英毅氏
ネッツトヨタ南国 代表取締役社長

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

プロフィール

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