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眞柄先ほど「価値前提」と「事実前提」の話もありましたが、ネッツトヨタ南国の経営と日本経営品質賞の考え方はかなり共通している点があるように思えます。日本経営品質賞にチャレンジされたきっかけは何だったのでしょうか?
横田私が日本経営品質賞を意識しはじめたのは2000年のことです。それ以前から賞の存在は知っていましたが、チャレンジしようとは考えていませんでした。 ところが、2000年がちょうど創立20周年に当たり、自分たちで10年後の姿を描こうとしたらうまくいかなかった。それが賞を意識しはじめたきっかけです。 眞柄10年後のビジョンがうまく描けなかった? 横田実は90年に創立10周年を迎えた時、私たち幹部社員のあいだで「発足時に思い描いた“10年後の姿”がちゃんと実現した」という実感があったんです。そして創立20周年を迎えた時に、10周年目で思い描いた“10年後の姿”もちゃんと実現していました。 眞柄素晴らしいですね。それはどのような“10年後の姿”ですか? 横田私たちが描いていた会社の姿とは、売上高でもなければ利益でもありません。社員数など会社の規模でもなかった。そういった目標レベルのことではなく、完全に目的レベルの視点ですね。 お客さま満足度はどこまで追求できているか、従業員満足度はどうか、チームワークのレベルはどうか、価値観はどこまで浸透しているのか、社員の価値創造はどこまで高まっているか……そういう尺度です。これらは数値化の難しい事柄ですが、組織の成熟度が示されます。組織の成熟度というのは、社員1人ひとりの成長した度合いとほぼイコールです。 眞柄10年ごとに思い描いた組織の成長を実現してきた。しかもそれは明らかに質的なレベルアップですね。 横田ところが、20周年の時はうまくいきませんでした。「30周年の時点でこうなっていたい」と描こうとしても、それがあまり明確にならなかったのです。一応は描いてみても、現在とそれほどギャップがない。 当社の経営では問題解決をたいへん重視していますが、問題解決というのは理想の姿と現実とのギャップを埋めることです。つまり、最初に現実から大きく離れている高い理想がなくてはいけません。20周年で現実に近い姿しか描けなかったというのは、裏返せば、高い理想を掲げられない、問題が発見できないということです。私は「これではいけない!」という危機感をもちました。
眞柄思い描く10年後の姿が現在と大きく変わらない時、「自分は完成に近づいた」と解釈する経営者もいるでしょう。そこで安住すると次のフェーズへ進めなくなりますね。 横田その時に思いついたのが日本経営品質賞です。この賞が示している経営の評価基準と、当社の価値基準は非常に似通っていると思いました。目指す経営の方向は近い。この賞にチャレンジすれば、自分たちの組織がどのレベルにあるか、きっとわかるだろうと判断しました。 自分たちは「これくらいのレベルには達している」という自己評価はあっても、経営品質賞の厳しい審査によって「あなた方の現状はもっと低いですよ」と指摘されることも想定できます。この賞は1000点満点ですが、中小企業は200点もとれないところがほとんどだと聞いていました。 眞柄自分たちを社外の厳しい評価基準にさらして、実際のレベルを測ろうという狙いがあった。 横田それと同時に、審査の過程で「これはやっていますか?」「この点はちゃんと考えていますか?」とポイントを突かれることは、私たちに多くの気づきを与えてくれます。現状の悪い点が指摘され、あるべき姿がそこから描ける。現実と理想のギャップがぐっと広がります。そういうメリットがいくつもあるとわかったのです。 眞柄実際に審査を受けてみていかがでしたか? 横田1年目は予想どおり落ちました(笑)。落ちた理由を聞く現地報告会ではたくさんの指摘があり、期待したとおり多くの気づきを得ることができました。それは大きな収穫です。 こうした経験を2度ほど積んで、3年目くらいにようやく良い線までいけるだろうというのが当初の予想でした。それだけ賞が要求するレベルは高い。2年目でも「残念でしたね」ともう少し深く評価してもらって、さらに勉強しようという意気込みでした。ところが、2年目に賞をいただいてしまったんですね。 眞柄当初の予定より1年早かったわけですか。どう思われました? 横田正直なところ、私は「ちょっと早いな」と感じました。社員たちも意気込んでいましたから、拍子抜けしたかもしれません。ただそこで、「自分たちの会社は特殊なのかもしれない」と良い方向に自信がもてたのは確かです。これは大きかったですね。 眞柄第三者的な視点で高く評価されたことが自信につながった。自己評価をもとに過信するのは危険ですが、それが社外の評価基準というのは大きなポイントだと思います。 眞柄日本経営品質賞を受賞されて3年半が経過したわけですが、社長ご自身は次の新たな評価基準として何かお考えですか?
横田売上や利益といった数値目標は、部門目標や上司と社員が相談して決めた個人目標がベースになります。ただ、この目標はいつもハードルが高くて達成できません。社員たちは達成感を味わえませんが、目標は高く掲げたいので、それはそれで良いと考えています。本当に大切なのは、価値を追求するレベルです。 眞柄先ほどのお話にもありましたが、価値は数値化しにくいですね。どのように評価されているのでしょうか? 横田社員の成長レベルは日頃の会話、日頃の行動から判断しています。何か大きな事態に直面した時、社内がどのように動くか。あるいは、コミュニケーションのレベルがどう変わったか。そういう日常の行動から判断するよりほかにありませんね。 眞柄そういった社内の空気をトップが的確に感じとる方法はあるのでしょうか? 横田トップなら社内の動きをみていればわかります。なんとなく感じる。「以前よりここがよくなった」「いまはこの点がちょっと落ちてるな、理由は何だろう?」というように。 眞柄普通のトップはそれほど細かい点まで把握できていないと思いますが、横田社長が何か感じた時は、たとえば部下を連れて一緒に飲みに行くなど、ご自身からアクションを起こされるのですか? 横田そういう行動は「対処」と呼ばれるものです。何かの原因から生まれた目にみえる結果が個々の現象です。起きてしまった現象に対してアプローチするのが「対処」です。これはあまり意味がありません。 先ほど当社では問題発見、問題解決を大切にすると申しましたが、これは経営理念の1つにもなっています。問題を発見して解決する。もし、社内でモチベーションが下がっている人をみかけたら、「なぜ、そうなったのだろうか?」と原因を考える。考えて考えて考え抜いた結果、その人に対する日頃のアプローチをちょっと変えてみる。何か起きたからといって、いきなりアプローチすることはありませんね。 眞柄管理者として注意すべき点ですね。社内の空気を知るために、ほかにどんな点をご覧になっていますか? 横田たとえば、社員たちが社員旅行によろこんで参加しているかどうかも判断材料の1つです。「おカネがもったいないから行かない」「自分の行きたい場所ではないから参加しない」という社員がいると、職場のレベルはまだまだ低い。組織が成熟すれば、「別に行きたい場所ではないけど、社員旅行なのだから参加する」というレベルに高まっていきます。 忘年会などでも、途中で会場から出て行く人がいるのはレベルが低い。組織の成熟度が増すと、みんな途中で部屋から出なくなり、酒の席でも自然と仕事の話題が多くなります。 社員の住宅も注目ポイントの1つでしょう。当社では、若い社員たちが結婚すると、会社の近くにマンションを買うことが増えています。その昔は会社の近くに家をかまえる人はいませんでしたよ。いまは「この会社でずっと働く」という意識が根底にあるのだと思います。 眞柄それはたしかに帰属意識のバロメータですね。 横田世の中には「社内恋愛は御法度」という会社もありますが、私はむしろ奨励しているくらいです。この25年間で25組ほどの社内結婚がありました。平均すると毎年1組ですね。社内の交際状況もだいたい私は把握しています。 眞柄そこまで社長がご存じなのはすごい(笑)。 横田「会社は家族」という考えはありませんが、社内の雰囲気は他社に比べて家族的だと思います。 眞柄社内結婚があって、そのカップルが会社の近くに家をかまえ、お子さんたちがみんな近くの学校へ通う。それはそれで、企業ファミリーとして良いことだと思います。いずれにしても、空気が伝わりやすい組織ということはよくわかりました。だから、成熟度が評価しやすいのでしょうね。 横田いまの風土を築くため、創業から20年あまりは拠点展開をやりませんでした。1拠点だから同じ価値観、同じ空気を共有できたのだと考えています。 眞柄自動車販売の世界では珍しいですね。 横田昨年初めて高知市内に2つ目の拠点をつくりましたが、25年近く拠点展開をやらなかった理由の1つは、究極の来店型営業をやってみようと考えていたからです。もう1つの理由は、拠点長にするだけの人材がいなかったことです。拠点長というのは、社長と同じレベルの意識をもてないと務まりません。 自動車販売という不人気業種は、そう簡単には人材が集まらない。地方はなおさらです。良い人材が採用できる会社になるまで10年かかり、その人材が育つまでさらに15年かかったということです。 |
3)“10年後の姿”を実現してきたが成長を求め日本経営品質賞にチャレンジ
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