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眞柄ネッツトヨタ南国は1980年、全国66社のトヨタビスタ販売会社の1つとして高知市で設立されました。現在はトヨタ販売網のなかでも好業績を誇る一方、横田社長の経営哲学と実践が、業界の枠を越えて、多くの経営者たちから注目を集めています。本日は横田社長に、ネッツトヨタ南国で実践されている人づくり、人間性重視の経営についてうかがっていきたいと考えています。 ネッツトヨタ南国と聞いて、私がすぐに思い浮かべるのは、経営における「目的」と「目標」の明確な区別です。一般的なビジネスの価値観からみるとユニークな発想に映りますが、実は企業経営の本質を突く大切な視点を思い起こさせてくれます。 経営における「目的」と「目標」の違いについて、社長ご自身はいつもどのように説明されているのでしょうか? 横田私は社員たちに「目的」と「目標」の違いについて、よくスポーツにたとえて説明しています。スポーツの「目的」は、健康な肉体と健全な精神を育てることです。そのほかにも、競技そのものを楽しむ、仲間との連帯感を味わうなど、さまざまな「目的」が考えられます。一方、スポーツで「目標」といえば、たとえば100メートルを9秒台で走る、国体の選手になる、連勝記録を伸ばすといったことが挙げられます。 何かスポーツをはじめる時、「目的」がないという人はいないでしょう。運動不足の解消、身体を動かす心地よさ、仲間づくり、ダイエットなど何かしらの「目的」があって運動をはじめているはずです。「目標」だけあって「目的」はない、という人はスポーツの世界ではほとんど見かけません。 眞柄たしかに「目的」のあとに「目標」がついてきますね。
横田たとえば、こんなことを言うゴルファーはいるでしょうか。「明日のラウンドは80台のスコアでまわりたいけど、本当のことをいえば身体は動かしたくないし、ゴルフ仲間と一緒にまわるのも楽しくない。ゴルフは自分の人生によろこびを与えてくれないけど、でもスコアは80台でまわりたい」これでは何のためにゴルフをやっているのか、さっぱりわかりません。 反対に、運動の「目的」はハッキリしていながら、これといった「目標」はない、という人はたくさんいます。毎朝、気持ちよくジョギングしているとか、テニスの試合は勝っても負けても汗をかいて爽快だとか。数字や勝敗にこだわらずにスポーツが好きで親しんでいる人たちです。 ここでいう「目的」は価値のことで、価値は限りなく追求していくものです。一方の「目標」は数値などで示せる事実であり、こちらは達成するものです。 一流のスポーツ選手でも「目的」に重きを置いている人はいます。マラソンの高橋尚子さん、マリナーズのイチロー選手などは、順位や記録にむけて努力すると同時に、いつも価値を追求しているようにみえます。 眞柄レースや試合後のコメントを聞くと、そう感じることがありますね。 横田子どもの教育でいえば、教育の「目的」はすべての子どもを幸せにすることです。学ぶ力、考える力、生きる力を身につけ、社会に役立つ人間に育てるというところに価値があります。テストでよい点をとる、目指す学校へ進学するというのは価値を追求するために設定する個々の「目標」です。 この「目的」と「目標」を企業活動に当てはめてみると、どうなるでしょう。企業の「目的」には、お客さま満足度の追求、従業員満足の追求、独自能力の開発、社会貢献などが挙げられます。これらは多くの企業が経営理念に掲げていることです。これらの「目的」を追求するために、売上や利益の最大化という「目標」が設定されています。 企業活動でもスポーツでも、「目的」となる価値は目にみえにくい。もう一方の「目標」となる事実は目にみえやすい。企業は「目的」を明確化した経営理念を追求し、そのための「目標」として売上や利益を設定する。これが経営品質の考え方でいう「価値前提」の経営です。 しかし、企業は往々にして「目標」ばかりを追求してしまう。目にみえる売上や利益で頭がいっぱいになり、目にみえない価値については考えられなくなる。こういう目標レベルを重んじる経営を私は「事実追求」と呼んでいます。また、価値の大切さはわかっているが、そのためにまず「目標」を達成すべきだと考える経営を経営品質では「事実前提」といいます。 簡単に説明すると、企業経営の「目的」と「目標」、経営品質のいう「価値前提」と「事実前提」はそういうことです。 眞柄企業経営における「目的」と「目標」の違い、経営品質でいう「価値前提」と「事実前提」の違いは、経営者たちの間でもあまり意識されていないのではないでしょうか。横田社長がおっしゃる「目的」に重きを置けば、企業活動の方向性が根本から違ってくるように思えます。 一般に企業の「目的」は経営理念に表れますが、ネッツトヨタ南国の経営理念はどのようなものでしょうか?
横田当社は2002年11月に社会経済生産性本部の「日本経営品質賞」をいただきましたが、この時初めて経営理念を明文化しました。それまで目にみえる形で、経営理念を示したものはありませんでした。社内に掲げてあったのは社訓だけです。日本経営品質賞にチャレンジする際、経営理念は明文化しなければいけないということで、創業21年目にして初めて言葉にしたというわけです。 眞柄それ以前は、横田社長の頭の中にあったということですか? 横田そうですね。経営理念は私の言動に自ずと表れていたでしょうから、私の日々の動き方で社内に浸透していたと思います。初めて文章化した時、社員たちは「ああ、たしかにこうですよね」と納得していました。 眞柄社員の方々が体感していた経営と一致していたと。 横田そうだと思います。ただ、明文化した経営理念のなかで、1つだけ社員たちが意外に思ったものがあったようです。それは「お客さま満足度よりも、社員満足度のほうを大切にする」というものです。これに関しては、社員から「そうなんですか?」と驚かれました。この理念は初めて知ったと。 眞柄お客さま満足と社員満足は密接な関係にありますね。一般的には、社員が満足して働ければ、それに伴ってお客さまへの対応がよくなり、お客さま満足も自ずと高まる、という考え方ですね。 横田当社の場合は逆の発想です。社員の満足度を追求したいので、そのためにお客さま満足を追求する、という順序です。お客さまによろこばれ、感謝の声が聞こえてくれば、働いている自分たちがうれしいし、気持ちよく働ける。目的は働いている社員の側にあります。 眞柄お客さま満足と従業員満足が一緒に高まり、好循環になることは同じでも、最終的な目的が社員のほうにある点はユニークといえますね。そのほかに、経営理念で特徴的なものはありますか? 横田「全社員を人生の勝利者にする」というのがあります。これも社員たちには意外だったようです。 眞柄全員が勝者になるということは、敗者はいないわけですね。 横田組織内が勝利者と敗北者で分かれるようでは、当社の「目的」に適いません。これは「相対的な競争は排除する」という考え方につながっています。 眞柄いまの企業はできるだけ組織内で競争を起こし、そこから組織の活力を生み出そうとするところが多いように思います。正反対の考え方ですね。 横田当社の場合、内部で競争しなくても組織の活力は生み出せる、という考え方に立っています。 眞柄お話を聞いていると、たしかに「目的」と「目標」を明確に分け、その考えを現実の経営に反映させておられるのがよくわかります。ただ、一方では自動車販売という業種ですから、営業成績など「目標」の部分も重要になってくると思います。年度目標や月次目標、週の目標などを掲げて活動されていると想像していますが、横田社長から「目標」について話されるのでしょうか? 横田私が目標レベルのことについて、社員たちに話すことはありません。「目標」も大切な要素ですが、トップが目標達成について露骨に触れると、社員たちも強く意識しはじめるでしょう。そうなると目的レベル、経営理念を追求するレベルがどうしてもおろそかになってしまう。そのバランスをうまくとる必要があります。 |
3)“10年後の姿”を実現してきたが成長を求め日本経営品質賞にチャレンジ
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