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エグゼクティブ対談 【第18回】清宮克幸氏 (サントリー ラグビーフットボール部監督)

子どもたちに夢と憧れを与える強いチームをつくり、“ラグビー道”を邁進する(3/3)

社会貢献への責任感とワセダクラブの設立

眞柄清宮さんは監督業のかたわら、NPO法人ワセダクラブを設立されました。どのような主旨で設立されたのでしょうか?

清宮この法人の目的は、すべての市民を対象とした各種スポーツの普及・振興事業を進め、そのなかで青少年の健全育成、市民の健康増進、地域コミュニティの活性化を図るというものです。

 このアイディアはもともと、ラグビー部のコーチでワセダクラブ理事の後藤禎和がもっていたんです。彼は大学院のMBAコースで、企業とスポーツ、地域とスポーツの関わりをテーマに論文を書いていました。たまたま僕がその論文を読んで「これはいいね、すぐやろう」と。スポンサーになってくれる企業が2〜3社あれば、実現できるだろうと動き出したんです。

眞柄その行動力がすごいですね。

清宮子どもたちにラグビーを知ってもらい、地域の人たちと交流を深めたいと以前から考えていました。日本の大学ラグビーを代表するチームとして、その責任があるという気持ちはありました。

 ただ東伏見のような土のグラウンドは、子ども達にラグビーを教える場としてあまり適していなかったんですね。転べば擦りむくし、泥だらけになる。子ども達はよろこんでも、連れてくる親たちが嫌がりますから。「耳の穴が真っ黒」とか言って(笑)。

 02年に上井草の芝生のグラウンドに移転して、「さぁ、すぐに活動をはじめよう」と思いましたが、すんなりとはいかなかったんですね。これはラグビー部OBだけの取り組みでは広がらないと思って、ラグビー部でなく早稲田大学としてやったらどうか、と考えました。大学の施設を使ったNPO法人をつくり、他の運動部と一緒に活動する。ラグビー部はそこに参加する形です。

 そのほうが、社会に対して大学スポーツが果たしていく役割、存在意義を提案していけるのではないかと考えたわけです。現在はラグビー部も含めて16の運動部が参加しています。

眞柄スポンサー探しや大学側との交渉など、相当に苦労されたでしょうね。この取り組みは他大学にも広がっていますね。

清宮多くの大学からワセダクラブに問い合わせがきますから、確実に広がっています。

眞柄清宮さんのすごいところは、奥・井ノ上イラク子ども基金にしても、ワセダクラブにしても、ラグビー部の監督として成果を出しながら、別の分野も同時に追求していることです。従来の監督業がもつイメージとは明らかに違いますね。

清宮これはたぶんサントリーで、ビジネスマンとラグビー選手を両立させていたからでしょうね。朝9時に出社し、夜6時まで働いて、7時半からラグビーの練習をはじめ、帰宅するのは毎晩1時とか2時でした。それでまた7時に起きて出社する。この生活を10年やりましたから。

 僕のなかでは、1つのことに没頭して、ほかは何も見えないというのはカッコわるいんです。必ず2つ以上の何かを求めてバランスをとるという習慣が身についていると思います。

眞柄早稲田ラグビーの監督、ワセダクラブの専務理事、奥・井ノ上イラク子ども基金の代表発起人と、一見バラバラのようでも実はちゃんとつながっている。そこがすごいところですよ。

戦う姿勢を生み出す意識と意識を生み出す言葉

眞柄清宮さんは4月にサントリーで社会人チームの監督となられましたが、新たなスタートにあたってスローガン「Alive(アライブ)」を掲げられました。これにはどのような意味があるのでしょうか?

清宮「すべての局面で生きつづけることでチームの勝利へ貢献しつづける」という意味です。倒れてもすぐに起き上がり、とにかくプレーできる状態になるのがサントリーのプライドだ、ということです。

 早稲田の時と同じように、監督就任を発表してすぐ、選手たちを呼んでアンケートをとったんです。「サンゴリアスらしさって何?」「サンゴリアスのプライドって何?」と選手たちに直接尋ねました。

 そうしたらチーム内のイメージがバラバラだとわかった。倒れたらすぐ起き上がって次のプレーに入る、接点で決してひるまない、というような早稲田の「ULTIMATE CRUSH」に相当する共通のイメージがないんです。そこがまず最初に必要だということです。

眞柄私はサンゴリアスのホームページで「Alive」という文字を見た時、実は少し意外に思いました。トップリーグは日本のラグビー界では最高レベルで、しかもサントリーは日本代表を経験しているベテラン選手達もいますから、戦う姿勢や精神面はかなり高いレベルにあると勝手に想像していたんです。

清宮今のサントリーが勝てない原因の1つに、システム化の弊害があります。ここはAのプレーヤーが仕事する、次はBのプレーヤー、その次はまたCのプレーヤーが仕事するという分業システムです。そうなると「おれの責任範囲はここまで」「ここで仕事しているからほかは知らない」となる。1つの仕事を終えたプレーヤーが休んでしまう。結局それは1つひとつのプレーに対するこだわりや強さが感じられない。

 僕のイメージは「ここが終われば次はあっちへ行き、その後また別のところでも仕事ができるじゃないか」という動き方です。システム化されているのはいいと考えがちだけど、それは絶対に違う。

眞柄その気になればできるのに、意識のもち方が違うと。

清宮その意識を生む言葉がチームになかったんです。「自分が全部やる、ここも行く、あっちも行く」「倒れたら起きあがって次に行く」「セットが崩れたらすぐ直す」といった動きにつながる言葉がない。

眞柄なるほど。

清宮そういった意識を総称して「Alive」をスローガンにしました。自分では98点ぐらいのスローガンだと思うのですけど。

眞柄サンゴリアスの監督として、今年のゴール設定はやはりトップリーグ優勝ですか?

清宮もちろん、そうです。ゴールというよりターゲットですが。トップリーグで勝ち、日本選手権で勝つことです。

10年後のビジョンにむけて 「ラグビー道」を歩む

眞柄最後に、清宮さんがいま抱いている夢は何でしょうか?

(この質問の後、少し考えられていて「思えばこういう質問されたことがないな?」と・・。“ゴール”と“ターゲット”の違いを明確に意識されている清宮さんらしい面を拝見した気がします。その後で、・・)

清宮夢は何か?と聞かれると答えるのが難しいですね。10年後のビジョンとして描いていることならあります。

 10年先にどんなシーンを思い浮かべているかというと、2015年に日本でラグビーのワールドカップが開かれる。子ども達は教育という場でラグビーに触れ、みんなが理解している。小学生以下の子ども達も、その親達もみんな「ラグビーというのはこういうものだよ」とわかってる。日本のトップを決める試合は、誰もが観たいと思っている。そうなるように変えていきたいですね。

 10年後はもうすぐですよ。やるべきことは見えている。だから、これを夢と呼ぶのはちょっと違う気がします。

眞柄僕が勝手に清宮さんに対して描いている夢は、今のお話の延長線上にあることです。今後10年間で1つずつ積み上げていった先は、清宮さんが日本を代表する顔になっているということです。ラグビーが中心なのはもちろんですが、ほかの分野にも影響力をもつオピニオンリーダーであり、学校教育も含めて広くラグビーの魅力や素晴らしさを伝えていく立場です。その中には小学生から中学、高校、大学、社会人と、ラグビーの大きなエコシステムを築くこともあるでしょう。そういった日本の顔になってほしいと思いますね。

清宮最近、僕は「ラグビー道」という言葉をよく口にしています。一番の関心は、ラグビーという競技が日本でどう育っていくか。そして、ラグビーが日本の子どもたちに何をやってあげられるか。それが両軸です。

 今のラグビーだけで盛り上がろうとしても、うまくいかないでしょう。ラグビーの魅力を子どもたちに伝えるように努力しながら、一方では魅力あるトップチームをつくらなくてはいけません。僕らには、子どもたちに夢と憧れを与える責任がある。目の前の仕事としては、サントリーのプロ選手が子どもたちの憧れにならないといけませんね。そのためには、新しいおカネの生み出し方も考えていかないといけません。そういったこともすべて含めた「ラグビー道」を目指しているんです。むしろ、チャンスはこの10年にしかないと考えています。

眞柄私もこの10年だと思いますね。私たちの学生時代は、国立競技場が満員になっていた。あのころ熱心に観戦していた世代が今は子ども達の親になっています。この先10年で、ラグビーの大きなエコシステムをみんなでつくらないと、本当に限られた人たちの特殊なスポーツになってしまうような気がするんですね。

 清宮さんには是非、トップチームを育て、ジャパンを率いるというリーダーとしての役割を果たしていただきたい。それと同時に、奥・井ノ上イラク子ども基金やワセダクラブをつくった手腕を広く発揮していただきたいですね。清宮さんの行動力は、ラグビーにとどまらないところまできていると思いますよ。

清宮これまでの活動は、僕が1人ですべてやったわけではありません。すでに土壌ができていたり、たまたま知り合った方たちに導かれたり、協力してもらったり。もちろん、先輩たちの遺産も大きい。早稲田というブランドもそうです。もし僕が違う大学にいたら、同じことはできなかったかもしれない。これからも自分に与えられたチャンスをうまく形にしていくように努力するだけです。

眞柄1ラグビーファンとしては、清宮さんが今後10年で大きな変革を起こす期待の星です。是非、成果を出してほしいですね。

本日は本当にありがとうございました。

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対談目次

1)強い組織をつくるためにも新たな戦いの場を設定する

2)的確で強いチームスローガンがメンバー共通の方向性を与える

3)よき先輩だった奥克彦大使が「ULTIMATE CRUSH」の生みの親

4)自分の言葉で語りかけ正面からぶつかり合う

5)社会貢献への責任感とワセダクラブの設立

6)戦う姿勢を生み出す意識と意識を生み出す言葉

7)10年後のビジョンにむけて 「ラグビー道」を歩む

ゲスト:清宮克幸氏
サントリー ラグビーフットボール部監督

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

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