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エグゼクティブ対談 【第15回】中島博氏 (岡山県中小企業団体中央会 会長)

地方経済の未来を担う次世代リーダーの条件(3/3)

次世代リーダーに必要なバランス感覚と交渉力

眞柄人材育成でいえば、次世代リーダーの問題がありますね。地方の方々とお会いすると、「次世代リーダーをどうやって育てるか」という話題がよく出てきます。地域を引っ張っていくリーダー、または地域を越えて活躍するリーダーの育成は、みなさん真剣に考えておられるようです。逆にいえば、将来にむけて人材不足がそれだけ深刻ということでしょう。

 特に、地域の外へ打って出ようとする姿勢はあまり強く感じられないというんですね。打って出るチャンスはあるはずなのに、それが活かせない。岡山の方々は高い技術をもち、しかもIT環境にも恵まれているわけですが、そのような人材についてはいかがでしょうか?

中島外へ打って出る人材が不足しているのは同じですね。岡山の県民性というか、保守的な傾向が強いのも理由の一つでしょう。

 各団体では、ユース会を作るなど、次世代リーダーの育成に取り組んでいます。ただ、いまひとつ切迫感がない。地域を越えて活躍するといっても、「そんなにあわてて東京へ出て行かなくていいだろう」という具合です。地元でも十分に食べていけるという気持ちが根底にはあるのでしょうが。

眞柄そこはやはり意識の問題でしょうか。せっかく高い技術をもっていながら、外にむかって目を向けないのは惜しい気がしますね。最近のIT関連会社の金融事件などは逆の意味で典型的だったと思います。非常にやる気のある若手社長で、全国的に知名度も上がっており、幅広い世代で好意的にとらえる方々もいたわけです。ただ残念なことは、実業が伴っていなかったことです。

 いまは、しっかり実業で身を立てている人がクローズアップされていないことが気がかりです。虚業の人たちは、やっていることが虚業なだけにいろいろ手をつかって、実態より高く評価されようとする。だから、法律に触れても株価操作に熱中するわけです。ただ、世間でもてはやされることがいいことだとも限りませんし、日本人的な感覚で自分だけ目立つのを控える人も多くいるのも事実です。そのような意味で、両極端だともいえますね。

 デジタルとアナログをうまく融合するのと同じで、両者のバランスを上手くとれることがいま求められるリーダー像ではないでしょうか。マネーゲームに走ってもいけないが、保守的になりすぎて宝の持ち腐れになってもいけない。

中島いまのリーダーにバランス感覚は欠かせませんね。ところが、いまはバランス感覚のいい人材が少ない。みんなどことなく偏っています。

 一つにはバランス感覚を磨くような教育がなされていないのでしょう。戦後教育がこれまで日本の成長を支えてきたかもしれませんが、成熟した社会を迎えた現在、見直しは必要です。次代を担う子どもたちにどんな教育を受けさせたらいいかと、もっと真剣に考えないと。社会的な倫理観などはほとんど教えていませんからね。

眞柄教育を通して倫理観を身につける機会は少ないですね。昨今は企業活動でも、コンプライアンスなど倫理観を問われる場面が増えています。ところが、よくみると、個人としての倫理観さえ身につけていないわけです。

中島個人であれ組織であれ、共同社会の一員であることを忘れてはまともに生きていけません。共同社会を意識しながらも、個を大切にするという教育が過去にはありました。社会で生きる以上は、自分の欲望を抑えることも時には必要だと。根底にそれがないと、ライブドア事件のような問題はまた出てくるように思えますね。

眞柄敗戦後の日本は「焼け野原から立ち上がろう」と、戦争で生き残った方たちの意思が1点にまとまっていたのではないでしょうか。その意思統一の上に日本人の勤勉さや手先の器用さが加わって、ものづくりを中心とした戦後復興が実を結んだと思えるんですね。

 ただ当時は、日本国内に目を向けていればいい時代だったのもたしかです。外側へ目を向ける前に、なんとか内側を立て直そうという気持ちで一致していたのだと思います。

 この60年間に、内側はだいぶよくなってきましたが、外側にはまだ弱いところがあります。国の外交もそうですし、企業の国際競争もそうです。交渉ごとになると、海外に後れをとることが少なくありません。

 今後のリーダー育成を考えるとき、交渉力をはじめとする競争での勝ち方、外側との戦いに勝ち抜く方法も身につける必要があると思うのですが。

中島それは私も若いときから痛感しています。海外でビジネスを展開するときにどうも弱い。日本人はプレゼン能力が低く、政府も民間も、まともな勝負になっていませんでした。戦うのではなく、なんとなく丸く収めようとする。昔はそれでよかったかもしれませんが、グローバル競争の時代は、「はい、わかりました」と相手の言いなりになるイエスマンではとうてい勝ち残れません。リーダーの資質ではありませんね。

眞柄将来を考えると、日本はとりわけ知的財産の面で、厳しい戦いを迫られるでしょう。いまの時代は、知識やノウハウがまったく同じ品質で簡単にコピーされてしまいます。そこで黙って見過ごせば、いずれ自分の身を滅ぼすことになる。企業規模や力関係にかかわらず、主張すべきことは主張していく姿勢が大切になってくるでしょうね。

中島私も経験があります。海外と業務提携をするとき、現地の従業員たちに製造のやり方は教えても、設計のやり方までは教えませんでした。設計まで教えてしまうと、その後どのように活用されるかは保証できません。だから、これはきちっと守ってきました。

 相手からしつこく教えてくれと言われても「それは我々のノウハウだから、自分たちで勉強してください」と突っぱねた。追われる側が、キャッチアップされるまでの時間を稼ぐのは当然のことです。そこで言いなりになって教えてはいけません。ちゃんと断れるかどうかですよ。

眞柄競争力に直接影響するノウハウは、必死に守るべきです。その部分をきちんと担保したうえでパートナーシップを結ぶ。そういう区別ができないと、日本人はいつまでも交渉下手だといわれますよ。

 ただ、日本国内だけでビジネスしていては、本物の交渉力が身につかないかもしれません。大手企業、下請け、孫請けという垂直分業型のシステムでは、交渉力はあまり必要ありませんから。

中島その意味では、マイクロソフトさんに期待しているところも大きいです。なにしろ、これほどの知的財産を有する企業は日本にも数少ない。知的財産を守るノウハウで、日本の産業界をリードしてほしいと思います。ユーザーからの求めに応じるのでなく、マイクロソフトさんの方から積極的に働きかけてほしいですね。

実体験を通した職業教育が若者に真の職業意識を育む

眞柄中島会長は学校教育にも長年かかわってこられたそうですが、最近はフリーターやニートなど若い世代の職業意識に大きな変化がみられます。どのようにお考えでしょうか?

中島若者たちの職業意識を育むチャンスが、学校にも家庭にもないということでしょう。これも教育の問題です。

 職業教育は早い段階から実施すべきだと思いますが、学校はこれまで避けてきたところがあります。中学校で教えるべきだというと「中学生でそこまでやるのはかわいそうだ」となり、それなら高校で教えるかといえば「高校生にはまだ実社会のことは難しい。大学に入ってからでいい」となるわけです。しかし大学でも結局は教えません。かりに大学で指導しても手遅れでしょう。

 だから、学生たちは職業意識が芽生えないまま就職活動に入ってしまう。そして、就職してもどこかに違和感をおぼえる、というわけです。これは学校が、職業教育の問題を先送りし、責任転嫁してきた結果だといえます。

 私にいわせてもらえば、遅くとも中学校か高校で、責任もって職業教育を実施していただきたい。それも、教室で話を聞かせるだけでなく、実体験の機会を提供する。これがいちばんです。

 小学校からオープンスクールやインターンシップを実施してもいいと私は考えています。実社会にはこれだけ多くの職業があり、それぞれ喜びや厳しさがあるんだと知った上で、自分が目指す職業を決められるといいと思いますね。

 それは学校だけの努力ではできませんから、産業界のほうも協力していかないといけません。様々な職業が体験できるように、社会的な仕組みを作っていく必要があります。

眞柄実体験から職業意識を育むというのはたしかに重要ですね。ただ情報を与えるより、子どもたちが自分の目でみて体験したほうが、意識を高めるうえではるかに有効です。

 同じ情報を与えるにしても、適切なナビゲーターがいればまた話は違ってくるでしょう。先ほどの2007年問題に関連しますが、実社会を経験した人たちがもっと教育に参加できるといいと思います。

中島例えば、岡山県では起業家教育のモデルスクールを作っています。起業家を育てたいと真剣に考えている先生方がいて、私たちも協力しています。高校の普通科でも教え、専門学校でも教えています。また、中学校でも起業について教えている。

眞柄それは素晴らしい取り組みですね。

中島起業について学ぶにはITの知識が不可欠です。パソコンの使い方は小学生で知っていないと、中学生でその先を学ぶことができない。彼らが将来、国際競争で勝ち残っていくためにも、いま教えておかないといけないんですね。

 私はよく学校の先生などに話すのですが、ヨーロッパやアメリカの人たちはキーボードを打つスピードが実に速い。キーボード入力の速さで、すでに日本人は後れをとっているわけです。単純にいって、このスピードの違いが競争力の差につながっていくのだと思います。

眞柄いまの子どもたちが将来グローバルな競争にさらされることは明らかでしょう。実際に諸外国はIT教育に力を入れていますから、中島会長の話は決して大げさなことではありません。先端技術だけでなく、匠の世界も知る中島会長だからこそ、その重要さがおわかりなのだろうと思います。まさしくバランス感覚の大切さが理解できるお話でした。

本日はありがとうございました。

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対談目次

1)中小企業の団体をサポートし地域経済の活性化に貢献する

2)景気回復が進むにつれて個別企業には業績の差も

3)インフラは整備されても活用面からの普及策が必要

4)最先端の技術を支える職人技は人間を通して受け継がれていく

5)次世代リーダーに必要なバランス感覚と交渉力

6)実体験を通した職業教育が若者に真の職業意識を育む

ゲスト:中島博氏
岡山県中小企業団体中央会 会長

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

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