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エグゼクティブ対談 【第14回】飯塚真玄氏 (株式会社TKC 代表取締役社長)

徹底して他(お客様)を利すること。自らの利は結果である。揺るぎない経営哲学と、時代を読む力(3/3)

社員にとって一番のモチベーションは「自利利他」を実感すること

眞柄的確に時流を読まれるのが飯塚社長の真骨頂だとお見受けしましたが、バランス・スコアカードなどの経営手法も積極的に取り込まれていますね。

飯塚私は大学を卒業してすぐ、1968年にTKCに入社しました。もちろん他社での経験はないし、MBAを取得しているわけでもありません。にもかかわらず、いきなり経営に携わらなければならなくなったわけです。だから経営に関する本や戦史などを一生懸命に読み漁り、そのなかでつかんだものを、いろいろと試してきました。

 バランス・スコアカードについては36〜37期(2001〜2002年度)に、各営業拠点の予算達成率が悪化したので、それを奪回すべく38期(2003年度)から導入したものです。TKCの拠点は全国に56あるのですが、そのうち予算を達成できるのが3拠点とか10拠点といった状況になってしまっていたのです。

 財務的な視点だけでなく、顧客、内部業務プロセス、イノベーションと学習という4つの視点から目標を設定し、企業変革を推進するのがバランス・スコアカードですが、一番のメリットはトップの戦略を現場に落とし込むことができる点です。

 経営理念にしても、戦略にしても経営者はつくったところで満足してしまい、それを現場に浸透させる努力は何もしていません。現場は経営者の唱えるお題目を復唱することはできても、骨身にしみてはいないわけです。その点を改善するにはバランス・スコアカードが非常に効果的ですね。結果、39期(2004年度)には48拠点が予算を達成しました。

 ピンチを脱出できたのは、バランス・スコアカードの導入によって戦略が現場に浸透し、モチベーションが上がったからだと思っています。

眞柄社員のモチベーションを上げるために、他にも何かされていることはありますか。

飯塚例えばYMK制度というのがあります。「余人を以て代え難し」の略なのですが、2期、3期と連続して予算を達成したグループリーダーは給料が増えるような仕組みです。また、エンジニアには公的な資格を、営業社員には社内資格の取得を推奨していて、取得の暁には、それなりの見返りがあります。

 ほかにも、社員が購入した書籍の費用はすべて会社の経費として認めるなどの工夫はしていますが、私が最も重要だと思っているのは、会社のミッションを各自がしっかりと受け止めて、自分たちの仕事は社会に貢献しているんだという実感を持つことですね。つまり、会計事務所が成長する過程で、お客さんである中小企業も黒字化したり、格付けがアップしたりする。そのことに喜びを感じてほしいんです。

 それはまさに「自利利他」であり、この考え方がすべての社員に浸透していれば、「自分からやる気にならなければならない会社だ」と思ってもらえるはずです。先だっても鹿児島で営業部門の社員大会を開いたのですが、成功している社員たちは非常にいいプレゼンをしました。自分たちがいかに関与先企業に貢献しているか、企業経営者に誉められたということを、実にうれしそうに話していました。こうした体験がなければ、鼻先にニンジンをぶら下げるようなことをしても意味がありません。逆に、こうした体験さえあれば、モチベーションは自然と高まっていくはずです。

 時折、躊躇してしまって、自分から行動を起こせない人もいます。とくに入社1〜2年の若い社員に多いのですが、彼らもまわりから「お客さんに喜んでいただいた」というような話を繰り返し聞くと、考え方を改めるようですね。

 繰り返しになりますが、これはマイクロソフトのミッション・ステートメントにも通じ、一歩踏み出した人は“We work to help a customer realize their potential.”という言葉の意味を実感できる。そして、その経験が一番のモチベーションになるわけです。  そして、もう1つ重要なことは、私どものお客さん――会計事務所は、全国でもトップクラスの使命感とモラル、そして能力を持っているということです。だからこそ、我々は非常に高いモチベーションを持ちつづけることができる。そういう意味では、本当にラッキーな会社だと思いますね。

眞柄最後に、飯塚社長から「経革広場」をご覧になっている皆さんにメッセージを送られるとすれば、どんなことでしょうか。

飯塚少し古い言葉ですが、中小企業も、会計事務所も、「和魂洋才」を徹底しなければならないと思います。

 「和才」ではアジア的な妥協というスタンスが残ってしまうので、痛みを感じるかもしれないけれども必要な改革は断行するという「洋才」は採り入れる必要があります。しかし、「和魂」を忘れてはならない。ここを見失ってしまうと、日本はおかしくなってしまうと思います。

 事業を興した方には成功していただきたいし、会計人には、自分の仕事が終わるときに、最高の満足を持って幕を引けるような職業生活をしてほしい。そのために「和魂洋才」の精神を貫いていただきたいですね。

眞柄「自利利他」に「和魂洋才」――。両方とも短いけれども、奥の深い言葉だと思います。

今日は本当にありがとうございました。

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対談目次

1)人生と職業を一致させる「自利利他」という考え方

2)国と納税者から独立した立場を守り最高のプラクティスを凝集した全国会を組織

3)創業時の事業目的をかたくなに守りつつ時代の変化に合わせてパラダイムを転換

4)日本版SOX法の導入で新しいマーケットが生まれる

5)社員にとって一番のモチベーションは「自利利他」を実感すること

ゲスト:飯塚真玄氏
株式会社TKC 代表取締役社長

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

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