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眞柄ところで、TKCは設立以来増収をつづけているとうかがっています。その原動力となっているものは何でしょうか。
飯塚会長は設立の時に2つの事業目的を決めました。「会計事務所の職域防衛と運命打開」、そして「地方公共団体の行政効率向上による住民福祉の増進」のための計算センターの経営です。この2つ以外にどんなにおもしろい、あるいはおいしい話があっても目を向けてはならない。2つの事業目的に専念し、徹底してやれというのが創業者の方針だったんです。そして、おっしゃるように創業以来増収をつづけ、1979年からは増益をつづけています。 眞柄会長の設定された2つの方針が、間違いではなかったという証明ですね。 飯塚そうですね。それと同時に、バルマーさんが最初に決められたミッション・ステートメントにも通じるところがあります。当社の場合は“to help people”ではなく、“to help tax consultants”ですが。会計事務所がフル・ポテンシャルを発揮できるように我々が行動すれば、自ずと結果はついてくるわけです。 とはいえ、2つの事業目的を淡々とこなしてきただけではありません。日本経済、つまり会計事務所が置かれる状況は、この数十年間で大きく変わっていますから、具体的な仕事の面では大きな方針転換をしてきました。 例えば国税庁の統計によると、1951年から65年にかけての時期は全国の法人の7割が黒字でした。その後、円が変動相場制に移ってから、黒字割合は5割台となりました。そして、ソ連が崩壊した1989年から現在にかけては、赤字企業が7割を占めています。 企業業績が良い時期、会計事務所に期待されていたのは節税対策です。ところが赤字企業が大多数ということになると、業績を立て直すためのサポートが我々の主な仕事になります。節税対策では、企業の数字を過去にさかのぼって追いかけていればよかったのですが、黒字にするためのサポートとなるとそれでは意味がありません。将来に向かって計数管理をしていかなければ、企業は黒字にならないんです。 つまり、我々の役割は180度転換しているわけです。こうしたパラダイム・シフトをしっかりしなければ、会計事務所のポテンシャルは上がりません。TKCは実に大胆に方向転換してきたからこそ、増収増益をつづけていられるのだと思います。
眞柄そのパラダイム・シフトに対応するには、ツールとしてITも駆使されたわけですね。 飯塚東芝さんが世界初のラップトップPCを発売したのが1986年のことでしたが、これこそ中小企業の業績管理をするためのツールになるという確信を持っていました。 その後、1988年にバーゼルでBIS規制が合意されました。BIS規制は、金融機関が海外取引をするには自己資本比率が8%以上なければならないというものですが、10年後の98年から実施されると、金融機関による貸し渋りや貸し剥がしが起こることは火を見るよりも明らかです。そういった状況に対応するには、企業が金融機関に対して、しっかりとした事業計画書や信頼度の高い決算書を提出できる環境をつくらなければなりません。そのために、IT化が必要だったわけです。 また、1989年に消費税が導入されましたが、これは企業会計にかかわる大事件でした。私どもとしては導入に先立って、会員である会計事務所が会計処理と税務処理を誤らないような段取りを組む必要があります。これもPCの助けなくしてはできませんでしたね。 最近では国税や地方税の電子申告も進んでいますが、法人税については85%、地方税においてはほぼ100%TKCのシステムが使われています。税務当局と飯塚は昔は敵対関係でしたが、いまでは感謝されていますよ(笑)。 眞柄世の中の変化は止まりませんから、今後も時々刻々の読みが必要になりますね。 飯塚私にとって、一番やりがいのある仕事は「変化のエネルギーを最大活用する」ことなんです。システム開発には長ければ数年かかることもありますから、時代の変化を少なくとも3年先まで読む必要があります。航海士が常に船の外を見ているように、変化の予兆を感じ取って、それを活かした場合の成果を最大化するシナリオを私なりに描いているんです。 眞柄日本版SOX法についていま語られるのは、対象を約3700社の上場企業にするとか、財務情報を記録するためのツールをどうする、という話ばかりですね。
飯塚たしかにツールの話も重要です。エンドユーザーに提供するシステムのなかに、すべての財務処理に関するログを残しておいて、必要なことを素早く検索できるような仕組みをつくるようなことは、私も考えています。その面でもマーケットは変わるでしょう。 しかし、それよりも重要なのは、経営者のマインドのなかに新しいニーズが生まれてくるという点です。 いま上場企業だけが注目されていますが、その関係企業は4万社あります。上場企業を対象にSOX法が導入されるということは、これら4万社もすべて関わりがあるということなんです。そのとき、各企業はアキレス腱、つまりウィークポイントを抱えることになります。それが何か――私も経営者ですから、想像がつきます。 弱みがあるということは、新しいニーズができるということであり、そこにマーケットが生まれます。そのニーズに応えるビジネスを、会員である会計事務所とともにやっていこうと考えています。これは新しい関与先企業の開拓にもつながる、非常に大きな変化ですよ。 眞柄法律の対象が上場企業だけだとしても、たとえばアメリカの企業は、取引先に法律に則った基準を求めてくる可能性があります。海外企業と取引をするためにISO9000やISO14000を取得する中小企業があるのと同じように、規模に関わりなくSOX法を順守する必要が出てくるでしょう。 そう考えると、本当に大きな変化が生まれそうですね。 飯塚これもまたパラダイムの変化ですよ。変化のエネルギーを活かすのが私の経営ですから、本当にワクワクしています。
眞柄創業以来の経営の軸は揺るぎなく保ちつつ、時流を読んでパラダイムをシフトする――。世の中には時流を読み切れずに表舞台から去っていった会社はたくさんありますが、そのなかで成長をつづけられているのは、会長から社長に受け継がれた視野の広さの賜ですね。 飯塚我々は非常にラッキーだと思います。会長が創業当時に示した会計事務所の理想像が多くの方に受け入れられ、いまや9300の会計事務所がTKC全国会に集まっています。このなかには法人税や相続税、社会福祉事業、病院、建設業などありとあらゆる専門家がおられ、自らのノウハウをみんなに伝えたいと思っている。ベストプラクティスをシェアしようと考えておられるんです。 これほど揺るぎのない方向づけが最初になされ、実際に多くの知恵が集まった。それが不変の目標、かつ臨機応変な対応というTKCの現在を支えているんです。 |
2)国と納税者から独立した立場を守り最高のプラクティスを凝集した全国会を組織
3)創業時の事業目的をかたくなに守りつつ時代の変化に合わせてパラダイムを転換
5)社員にとって一番のモチベーションは「自利利他」を実感すること
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