経革広場 納得・知っ得、中小企業の有益情報源
経営を知る経営を語る経営をITで変える経営に役立つ経革広場ネットワーク
経革広場トップページ > 経営を語る > エグゼクティブ対談 第12回 西岡郁夫氏

経営を語る

エグゼクティブ対談 【第12回】西岡郁夫
(モバイル・インターネットキャピタル株式会社 代表取締役社長)

長所に気づき、ほめることが人と企業を育てる(4/4)

安易に海外進出を考えるより日本市場のなかで存在感を発揮したほうがいい

眞柄“目”といえば、中小企業経営者の目線は日本の内側ばかりを見ていると思います。しかし、創業者が油まみれになって働いていたホンダが世界有数の企業になったように、いまの中小企業、ベンチャーにも世界に羽ばたく可能性は開かれている。とくにITを駆使すれば国境を越えるのも簡単になってきていますから、もっと海外に目を向けても良いのではないでしょうか。

西岡いえ、私は安易に海外には出ないほうが良いと思っています。日本企業はこれまで「グローバル化」という言葉を意識して、あまりにも簡単に海外に進出してしまった。

 たとえば90年代の半ば、大手半導体メーカーのN社は中国にDRAMの最先端工場を造ったのですが、私はその報道を見て言葉を失いました。たまたまインテル創業者のアンディ・グローブが来日していたのですが、彼も絶句していた。それは、DRAMの最先端工場を中国に造れば、ノウハウが流出してしまうからです。

 背景には、T社やF社よりも1円でも安くDRAMを作りたいというニーズがあったことはわかります。しかしそれは国内での競争というミクロ経済の話にすぎません。ところが中国に進出したことで、マクロ経済の問題に発展してしまったわけです。

 グローバル化時代といいますが、実際の社会はまだまだドメスティックです。それは、日本の大学を卒業した人間のほとんどが、アメリカや韓国、中国ではなく、日本で就職していることからもわかります。だとすれば、日本の企業は日本の利益を守るのが当然でしょう。

 当時中国はすでに、「いずれ世界の工場になる」と言われていました。もし中国が50年後に日本に取って代わるなら、それを60〜80年に引き伸ばす努力をするのが日本の大人としての責任だと思います。その意味でN社の行動は、大人としての責任を果たしたものではなく、「グローバル化」という言葉に踊らされた子どものそれでした。

 これに対して大人の対応を見せたのがアンディ・グローブです。実はそのとき、インテルもオーバー・ドライブ・プロセッサを中国市場に売り込もうとしていました。中国政府が見返りとして突き付けてきた条件は「中国に工場を造れ」と言うものでしたが、アンディはソフトウェア工場を造ることで、これに応えました。

 工場と言っても、パソコンを並べてLANを引いてあるだけのものです。ここにはインテルのマイクロプロセッサーのノウハウは一切ない。それどころか、中国人の知恵を使おうと言うわけです。日本のN社が中国にノウハウを流出させたのと大きく違うことが判るでしょう。

眞柄小泉政権は「知的財産立国」と言う新時代に向けての国家戦略を推進していますが、日本企業と外国企業との認識の差はまだまだ大きいですね。

西岡だからこそ、私は安易に海外進出するのは好ましくないと思うんです。特に中小企業ならば、日本市場のなかで存在感を発揮できるマーケットはあります。人口から見ても購買力から言っても、日本のマーケットは大きいので、ここでできることはたくさんあるはずです。

偏差値に染まったエリートより中小企業の2世3世に期待

眞柄さて、社会への恩返しという点では、西岡さんは大学の客員教授のほか、ビジネススクールなどで教えておられるそうですね。

進学校から東大にストレートで入ったエリートより、中小企業の2世3世たちの方が伸びるのではないかと考えているんです。

西岡1つは大企業のミドルを対象にしたビジネススクールです。東京駅前の丸ビルを会場に、一橋大学の竹内弘高教授(大学院国際企業戦略研究科長)らの協力を得てやっているものです。もうひとつ、大阪のほうでは中小企業の後継者を対象にしたスクールをはじめました。

眞柄中小企業が世代交代をしていくとき、2世3世は先代から受け継ぐことができるものとできないものがあります。人脈や経営理念は受け継げますが、経営学やマーケティングなどは自分で学ばなければなりませんね。

西岡2代目、3代目の悩みは深いんですよ。後継者としてある程度まわりが見えるようになってきた頃に会社の経営課題を認識し、改革に立ち上がろうとしても、先代の時代からいる長老たちに「ぼん、やめはなれ。私たちが何とかします」と諫められてしまう。

 しかし、学校時代の成績と経営力とは相関関係は薄いモノです。父親が作った会社を何とかしようと言う熱意は学校時代の成績よりも重大なのです。が、そういう立場の人がまわりに認められるには、非常に大きな起爆剤が必要です。そこで、考えたのが今回のスクールです。一橋大学の先生に経営学の基本を教えてもらったり、ハーバード・ビジネススクールの経営学の実践的なケーススタディを使ったりして勉強してもらいます。私ももうガンガン教えようと思ってますよ(笑)。

 進学校から東大にストレートで入ったエリートより、私はこの2世3世たちの方が伸びるのではないかと考えているんですね。というのは、エリートは偏差値教育の弊害にどっぷり染まっていて、答えの決まっている問題しか解けない。答えを丸暗記することは出来ても、いろいろある選択肢の中から回答を作り上げる能力がない。

 経営には決まり切った答えなんかあるはずがない。あるいは、答えが3つも4つもあるなかからどれかを選ばなければならないのが経営です。だから、答えを丸暗記する偏差値教育に染まった人たちに、日本企業の経営を変える力はありません。

眞柄なるほど、中小企業の2世3世の方が可能性に満ちているわけですね。そこに西岡さんの培ってこられたノウハウ、あるいは物事に取り組む情熱が加わったら、西岡さんが期待されているように株式公開後、伸びる企業が育ってくるかもしれません。私たちも大いに期待したいと思います。本日はありがとうございました。

戻る 1234  

対談目次

1)間違いなくやってきた中小企業の時代

2)株式公開を目指すのではなく公開後に株価が上がるような企業を目指す

3)企業とITベンダーの関係を変えていかなければならない

4)安易に海外進出を考えるより日本市場のなかで存在感を発揮したほうがいい

5)偏差値に染まったエリートより中小企業の2世3世に期待

ゲスト:西岡郁夫氏
モバイル・インターネットキャピタル株式会社 代表取締役社長

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

プロフィール

ご意見・ご感想をお聞かせください

対談を読まれたご意見やご感想をお待ちしております。また、皆さまから寄せられましたご意見・ご感想もご覧いただけます。

バックナンバーはこちら

業界のリーダーたちが語る、熱い経営理論。対談のバックナンバーはこちらからご覧ください。

このページの先頭へ

(C) Microsoft Corporation. All rights reserved. Microsoft