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経営を語る

エグゼクティブ対談 【第12回】西岡郁夫
(モバイル・インターネットキャピタル株式会社 代表取締役社長)

長所に気づき、ほめることが人と企業を育てる(2/4)

株式公開を目指すのではなく公開後に株価が上がるような企業を目指す

眞柄2000年前後にベンチャー・ブームが起こりましたね。ベンチャー企業がたくさんでき、ベンチャー・キャピタルは出資競争をしていました。でも、出資する側も、それを受ける側も、非常に未成熟だったという印象がありました。

ベンチャー・ブームが起こった当時は、出資する側もそれを受ける側も、多くが非常に未成熟でした。

西岡先ほど中小企業、ベンチャー企業をきちんと育てなければならないと言ったのは、まさにその点です。

 当時はバブっていましたからキャピタルゲインは何百倍にもなりました。仮に300倍と仮定しますと、ベンチャー・キャピタルの側は、たとえば1億円ずつ300社にばらまいて、そのうち1社でも当たればトントン、2社当たれば儲かると踏んでいたわけです。だから事業計画書が20頁なら2億円、30頁なら3億円と碌なデュー・デリジェンス(企業価値評価)もせずに、「出資をさせろ」とベンチャーを訪ねて回ったと言われています。経営分析も指導も何もあったものではありません。

 一方の出資を受ける側は、ろくに目を通しもせずに重要な契約書に判を押してしまうような素人集団です。それが英語の契約書なら、まったく読みもしません。

 私はインテルにいたし、眞柄さんもマイクロソフトにいらっしゃるからお判りでしょうが、特に外資系の場合、rev.0と呼ばれる最初の契約書原案は圧倒的に自分に有利な内容で作ってきます。彼らは別に卑怯なことをしようとしているわけではなく、「これは我々サイドの言い分だから、さあ反論をお聞きしましょう」という姿勢です。rev.0からスタートした提案書がrev.10でやっと最終契約書になることだってザラですよね。

 それをまったく読まずにサインしてしまうものだから、相手の方がびっくりしてしまう。出資比率が1%にも満たないのに取締役を送り込むとか、重要な問題に関する株主総会の拒否権を留保するといった内容を、そのまま受け入れてしまうのです。英語が読めないのなら弁護士などに頼めばいいのですが、そういう知恵も働かない。

 そのような事例を目の当たりにしていて、これではいけない、「VCとしてのベスト・プラクティスを実践し、VBにベンチャー経営のあり方を教育する組織を立ち上げよう」というわけで、NTTドコモの大星会長(当時)と意気投合して設立したのがMICなんです。

眞柄西岡さんがおっしゃったように、当時のベンチャー・キャピタルは経営分析をしていない、いやできないといわれていましたが、MICと他のベンチャー・キャピタルの違いは何でしょうか。

西岡いちばんの違いは目的意識ですね。ベンチャー・キャピタルの中にはマネーゲームの一環としてお金を張っているだけで、そこには「ベンチャー企業がこれからの日本を支えていかなければならない」といったビジョンを持たないところがあります。だいたい、ベンチャー・キャピタルの社長は大銀行や生保出身の方が多いですよね。彼らはベンチャー企業のことを知りません。ベンチャーの経営者たちが何を望んでいるかを知らなければ、本当の意味で支援することはできないと思うのですが。

 私たちはベンチャーの身になって徹底的に助けます。デュー・デリジェンスに合格したら、まずはベンチャーの商売が成立することを支援します。技術の特徴を見極めて、適切で相性の良い大企業に紹介するのも重要な支援です。我々が仲介した案件は大企業も真剣に扱ってくれますからね。ベンチャーが大企業に向かってなかなか言えないことでも私が代弁してあげます。ベンチャーには時間がありませんが、一方、大企業は決断を先送りする傾向がありますから、私たちが交渉進展の監視役にもなります。

株式公開したあとに頑張るベンチャーにもっともっと出てきてほしいのです。

 また、ベンチャー同士のコラボレーションも支援します。ベンチャーAのコンテンツをベンチャーBに紹介して商流に乗せたり、そのサーバー運営をベンチャーCにやってもらうと言った最善のフォーメーションを作って上げます。

 残念ながら、日本のベンチャーにはリーガル・マインドの無い経営者が多いのも事実です。こういう場合の指導もします。出資というのは支援の一部です。 アメリカの場合、ベンチャー企業を立ち上げようとすると、まずローファーム(弁護士事務所)を訪ねます。そこで事業計画についてじっくり話を聞いてくれ、計画書を整えて、いちばん適したベンチャー・キャピタルを紹介してくれる。入り口はローファームです。日本の場合、そこがまったく欠けています。

 そこで私どもでは、弁護士事務所と緩やかな提携をして、アメリカのような環境を整えていこうと考えているんです。

眞柄サポート体制をしっかりして、99年当時のような未熟なベンチャーではなく、きちんと成長していけるようなベンチャーを育てたいと。

西岡もちろん最初は未熟でも仕方がないのですが、人様に出資を仰ぐ段階では成熟していなければなりません。もっと重要なのはIPOを果たしたあとですよ。アメリカではマイクロソフトをはじめ、インテル、サン・マイクロシステムズのような優秀なベンチャーが株式公開を果たし、その後もどんどん企業価値を上げ、株価が上がりました。これでビル・ゲイツたちも大金を手にしたわけですが、彼らが大金持ちになったからアメリカ経済が浮上したわけではありません。マイクロソフトやインテルの株を株式市場で買った人たちが儲けたことの方が重要なんです。

 友だちが、親類がベンチャー株で着実に儲けている。ならば自分もベンチャーの株を買おう……ということで、アメリカの個人資産の60%は株式市場で運用されています。個人金融資産の大半が郵便貯金という動かないお金(死に金)の日本とは、そこが大きく違うわけです。

 だから、株式公開したあとに頑張るベンチャーにもっともっと出てきてほしいのです。

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対談目次

1)間違いなくやってきた中小企業の時代

2)株式公開を目指すのではなく公開後に株価が上がるような企業を目指す

3)企業とITベンダーの関係を変えていかなければならない

4)安易に海外進出を考えるより日本市場のなかで存在感を発揮したほうがいい

5)偏差値に染まったエリートより中小企業の2世3世に期待

ゲスト:西岡郁夫氏
モバイル・インターネットキャピタル株式会社 代表取締役社長

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

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