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エグゼクティブ対談 【第12回】西岡郁夫
(モバイル・インターネットキャピタル株式会社 代表取締役社長)

長所に気づき、ほめることが人と企業を育てる(1/4)

長所に気づき、ほめることが人と企業を育てる 西岡郁夫氏

間違いなくやってきた中小企業の時代

眞柄本日はお時間をいただき、ありがとうございます。西岡さんはシャープからインテル・ジャパンに移られ、同社会長を辞されたあとはNTTドコモ、みずほ証券、インターネット総研と共同出資でモバイル・インターネットキャピタル(以下、MIC)を興されました。IT業界の立ち上がりからここ数年の波乱の時期までいろいろな角度でごらんになってきた西岡さんが、どうしてIT業界のベンチャー・キャピタルに進出されたのでしょうか。

かつては総合化が生き残りの条件であり、勝つための戦略でした。しかし、大量生産・薄利多売の古いビジネスモデルは通用しなくなっています。

西岡それには2つの背景があります。1つは家電業界に代表される、総合化した大企業の「大量生産、薄利多売」というビジネスモデルが通用しなくなっていること。そして、それにかわって日本を支えていくべき中小企業、ベンチャー企業を、きちんと育てていかなければならないということです。

 かつては総合化が生き残りの条件だった時代がありました。私がシャープに入社した頃はまさにそういう時代で、家電メーカーはあらゆる商品を出さなければならなかった。なぜなら当時は、家電販売の中心だった街の電気屋さんが生き残るためには、系列の電機メーカーは何でも作っている必要があったからです。

 今の量販店チェーンとは違い、街の電気屋さんにはそうそうお客さんは来ません。たまに来てくれるお客さんが求めるものは何でも提供できなければ、ビジネスチャンスを逃してしまうわけです。電球や電池からヘアドライヤー、電子レンジ、洗濯機、冷蔵庫と何でもそろってないといけない。だから彼らは系列のメーカーに対して商品ラインナップの強化を求めるし、それが聞き入れてもらえないなら別のメーカーに鞍替えしてしまう。当時は販売店の数がそのまま家電メーカーのシェアを反映する時代でしたから、メーカーは総合化の道を歩むしかなかったわけです。総合化は勝つための戦略でした。

眞柄そうは言っても、すべての商品を自社開発できるわけはありませんよね。

西岡そうです。自社に開発部隊を持つ余裕がないものは他社からOEMで調達して出していました。特許料を払ってマネをしてでも、とにかくラインナップを強化しなければならなかったからです。

 ところが、やがて家電販売の主役は量販店に移ってきました。彼らは限られたスペースを有効に使うために、売れる商品だけを置きたがります。新聞で売れ筋ランキングが発表されていますが、その上位3つだけを並べておけば効率のいい商売ができるわけです。一方でメーカーのほうは安く作るために大量生産を続けていますから、なんとか仕入れてくれないかと頼み込む。挙げ句の果てに仕入れ値を大幅に下げられ、悪循環の末の薄い超薄利多売を続けているわけです。

 家電で言えばテレビ、冷蔵庫、洗濯機という三種の神器を誰もが欲しがった時代とは違って、いま、私たちはもう他人と同じものが欲しいとは思いません。大量生産・薄利多売の古いビジネスモデルはすでに通用しなくなっているのです。にもかかわらず従来のやり方に固執し、それを前提にして事業再建策を打ち出したりしている。もう昔には戻るはずがないのに、“前任社長の戦略を踏襲しての再建”とは悪い冗談としか思えません。

眞柄再建するのではなく、古いものは壊して新しいものを打ち立てなければならないわけですね。

1つの大企業があらゆる分野を手がけていく時代は終わりました。今後は中小企業が頑張らなければならない。

西岡そのとおりです……が、実はこの話題に関しては、私にも苦い思い出があるんです。シャープ時代、赤字続きだったコンピュータ事業部の再建を任されたのですが、そのとき私は懸命に業績を改善しようと頑張りました。そして懸命に頑張って業績は改善しました。しかし後で振り返ると、私のすべきことは社長に対してパソコン事業の撤退を進言することだったんです。インテルに行ってから気が付きました。

 すでに他社との横並びで何でもかんでも作ればいい時代ではなくなっていましたから、シャープがコンピュータ事業を続ける意味はほとんどなかった。「選択と集中」が出来ていない典型例です。でも当時、担当事業部長としての私の頭の中には「止めましょう」という選択肢は思いも付かなかったのです。だから社長に進言することができませんでした。いまでも本当に悔やんでいますよ。

 いずれにしても、1つの大企業があらゆる分野を手がけていく時代は終わりました。8万人とか10万人という数の社員を雇い、家族を含めると30万〜40万人の生活をまかなうようなあり方は、もう通用しません。

 ではどうすれば良いかというと、中小企業が頑張らなければならない。現に日本の労働人口の8割は中小企業に勤めていて、売上高でみても5割以上を中小企業が稼いでいるわけですから。

眞柄でも、大学生が就職するときには、どうしても東京海上や電通といった大企業に人気が集まってしまいますね。親が中小企業を経営していても、大学を卒業したらみんなサラリーマンになってしまう。

西岡そうですね。我々もそう考え、そう行動してきました。「寄らば大樹の陰」の大企業頼みです。でも、頼れる大企業がどんどん少なくなっていくのですよ。これからは自分のお父さんが永年苦労をしてやってきた町工場に入って、イノベーションをしてビッカビカの工場に仕立てていくことが一番カッコヨイ生き方になりますよ。いや、しなければならないと思っています。大企業頼みの日本では国が沈没してしまいます。

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対談目次

1)間違いなくやってきた中小企業の時代

2)株式公開を目指すのではなく公開後に株価が上がるような企業を目指す

3)企業とITベンダーの関係を変えていかなければならない

4)安易に海外進出を考えるより日本市場のなかで存在感を発揮したほうがいい

5)偏差値に染まったエリートより中小企業の2世3世に期待

ゲスト:西岡郁夫氏
モバイル・インターネットキャピタル株式会社 代表取締役社長

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

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