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※ゲストおよびインタビュアーの所属する組織名、役職等は、インタビュー時の雰囲気をお伝えするため、対談当時の組織、役職を表記しています。
眞柄いまやITは一大産業となり、パッケージのソフトウェアだけでなくインターネットを通じてさまざまなコンテンツや情報が流通する時代になりました。もともと中小・零細企業が多かったソフトウェア業界がここまでこられた背景の1つには、ソフトウェアやコンテンツに関する著作権、知的財産権を守ろうとしてきたコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の活動があったからだと思います。 まずは協会設立の経緯からお話しいただけますか。 久保田今年はソフトウェア、すなわちプログラムが著作権法で明確に保護されるようになってから、ちょうど20周年に当たります。当時、通産省(現・経済産業省)は、ソフトウェアを特別立法で保護しようとしていましたが議論の結果、1985年にソフトウェアは著作物として著作権法に明記されたわけです。 ACCSの前身であるソフトウェア法的保護監視機構は、そうした動きを背景に生まれました。現在では、出版社やアニメなどのコンテンツメーカーのほか、デジタル情報保護技術の制作会社など308社が加盟し、ゲームソフト大手のカプコンの辻本憲三社長が理事長ということで社会的にも認知されていますが、もともとは草の根的に生まれてきたもので、ソフトウェアの海賊版対策を主な目的にしていました。そのころ、ゲームソフトやいわゆるビジネスソフトをつくっていた大学生やマイコン愛好家などの人たちが次第に企業としての形態を整えはじめ、海賊版や違法コピーが横行すると端的にその利益を圧迫するようになっていたからです。 眞柄20年前というとまだパソコンがマイコンと呼ばれている時代で、ソフトウェアのコピーは技術的にも非常に簡単でしたね。当時、コンピュータの記憶媒体として一般的だったのはカセットテープで、ダブルデッキなどを使ってダビングすればよかったわけですから。
久保田そうですね。ソフトウェア業界の創生期は、“ソフトはコピーされるもの”という危険に常にさらされてきましたし、コピーする側に罪悪感がない時代でした。 それまで、コンピュータソフト制作の主な担い手は“愛好家”でした。大学生などが興味に任せてゲーム・プログラムなどを競うように組んでおり、それを『I/O』などの雑誌に発表していたわけです。彼らにとってプログラムを組むことは割のいいアルバイトでしたが、ユーザーのほうはコピーがやりたい放題で、雑誌でプログラムを公開すると、勝手にコーディングされて配布されてしまう――というのが当たり前の構図でした。 その後、前述のように、コンピュータソフトの制作者たちが少しずつ企業の形態をとるようになってきました。MSXやファミコンに向けて8ビットのゲームソフトなどを作っていたわけですが、彼らが開発・販売していたパッケージ・ソフトまで、当たり前のようにコピーされていました。 そういった状況において、1985年著作権法が改正され、コンピュータ・プログラムが著作物だと認められました。音楽レコードの複製が認められないように、これからはコンピュータ・プログラムをコピーして配布すれば著作権侵害になる、というわけです。 しかしながら、法律が成立しただけでは問題は解決しません。当時は、コンピュータに携わる人たちですら、一般的に著作権意識をもっていませんでした。そこで、コンピュータ・プログラムは著作物であり、その権利を侵せば刑事罰を受ける――ということを周知徹底するために、1985年10月、社団法人日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会の傘下に「ソフトウェア法的保護監視機構」という任意団体を設置したのです。 眞柄なるほど。ただ、コンピュータの世界は技術革新が速いし、パソコン通信、インターネットとネットワーク環境も急激に整ってきました。こうした動きに対応されるのは大変だったでしょうね。 久保田実際、侵害の形態も複製権侵害から貸与権侵害へと移り、あっという間に違法アップロードといった公衆送信権侵害となり、現在ではネットオークションやWINNYなどのPtoPソフトを悪用した複製権、公衆送信権侵害が横行しています。イタチゴッコですね。 当時、ソフト会社はコピーができないようにプロテクトをかけていましたが、それを外す技術がすぐに出てきてしまう。それだけでなく、全国の大学の周辺などにソフトのレンタル店ができて、プロテクトを外すツールと一緒にユーザーに貸し出し、コピーさせていました。またそれらの海賊版やレンタル料金は正規ソフトの価格の5分の1とか、ひどい場合は10分の1といった値段でした。 いまではコピー・プロテクションを外すような、いわゆるコピーツールを開発販売することは著作権法で禁止されていますし、ソフトのレンタルは貸与権侵害になります。しかし、当時はようやくコンピュータ・プログラムが著作物として認められたばかりで、取り締まろうにも警察にはその経験がありませんでした。さらに、90年前後からパソコン通信が登場し、不正にコピーされたものが、ネットワークを通じて一気に広まる可能性も出てきたわけです。 私は、海賊版や企業内の大量違法コピーを取り締まり、知的財産の秩序維持を図ることはとても大事なことと考えましたが、それだけではソフトウェア開発者の権利や利益は守れない。そこで、新しいコンピュータ技術に対応できる法律を作ることや著作権をはじめとする知的財産権保護思想の普及も同様にしていかなければならない、ということになりました。
先ほども言ったように、ソフトウェア保護監視機構は通産省の外郭団体であるパーソナルコンピュータソフトウェア協会のなかの任意団体として活動していたのですが、立法に携わろうとすると、その法律に関係のある官庁の傘下に社団法人をつくらなければなりません。著作権法でいうと文化庁ですね。そこで、ジャストシステムの浮川和宣さん、マイクロソフトの古川亨さん、ロータスの菊池三郎さん、ゲーム会社ではT&Eソフトの横山俊朗さんなどと社団法人化に向けて準備をはじめました。 著作権制度の研究調査をして法改正につなげたり、権利侵害があったときにはその実態調査を行い、警察庁や各県警の捜索に協力し、また訴訟手続きのサポートをしたりする。そして最も重要なのは著作権に対する世間の認識を高めることによって、プログラム開発、コンテンツ開発をサポートしていく――そういう社団法人の設立に向けて動き出したわけです。 そして1990年にパーソナルコンピュータソフトウェア協会から独立してコンピュータソフトウェア著作権協会と改称し、91年には文部大臣から認可を受けて社団法人となりました。 眞柄まさに草の根の動きで社団法人の設立まで漕ぎつけてきたわけですね。 久保田普通、社団法人は役所からの鶴の一声でつくられることが多いようですが、当協会はまさにボトムアップのかたちでしたね。協会の設立時の構成メンバーはすべてソフトウェア開発会社です。 当時、すでにデジタル化、ネットワーク化の時代が本格的にやってくることはわかっていましたし、そのなかで開発者の権利を守っていかなければビジネスとして成長はできない。まだ「知的財産」という言葉が浸透する以前のことでしたが、それが自分たちにとって一番重要な財産だということは、みんな十分に認識していましたね。 眞柄私自身、1980年代に違法コピーの調査に携わったことがあるんですが、一言で言うと悲惨なものでした。ソフトハウスというと中小企業が多いわけですが、みんなでアイデアを持ち寄って一生懸命作ったものが、いとも簡単に複製され、マニュアルもコピーされて店頭に並べられていました。ユーザー側のモラルも今と比べるとずいぶん低いので、協会が頑張れば頑張るほど、「なんでコピーがダメなんだ」という声があがるような雰囲気がありましたね。 当時、一番苦労されたのはどんな点ですか?
久保田たとえば違法コピーを発見して警察に持ち込んでも、警察官が「ソフトウェアの不正コピー」という言葉の意味がわからないんです。フロッピーディスクを眺めて、「どこにコピーしてあるの?」といった具合で、まずそこから説明しなければならなかった(笑)。 犯罪の調書をつくるにしても、「ディスプレイ」だとか「カートリッジ」「CPU」といった言葉を係官に説明するのが大変で、簡単な複製権侵害なのに書類をつくるだけで3日もかかるということがありました。 いまでこそ告訴に必要な書類はすぐにできるし、摘発するまでに時間もかかりませんが、当時は準備だけでものすごいエネルギーを使いました。 一方、ユーザー側にはソフトウェアがコンピュータ・プログラムとして著作権法によって保護されているという意識は全くと言っていいほどありませんでした。大手の量販店ではパソコンのハードを買うと、当然のようにMS-DOSをコピーしてくれたと言うこともよく耳にしました。またプログラムの開発者自身が、他社のプログラムやコンピュータ言語ソフトを不正に利用してプログラムを開発していることもありました。 |
2)立ち上がりつつある中国のIT産業と日本の休眠特許を結びつけたい
3)1人ひとりが「情報モラル」をもたなければ高度情報化社会が無法地帯になってしまう
4)企業における情報の管理と活用はソフトウェア、ライセンスの管理から始まる
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