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エグゼクティブ対談 【第9回】清水康敬氏 (NPO法人ブロードバンドスクール協会 理事長)

開かれた教育現場とIT推進が、子どもたちによりよい学習環境を提供する(2/4)

教育現場は一般より高レベルの情報セキュリティが求められる

眞柄昨今は子どもたちのIT環境についてよく議論されていますが、私などには先生方のIT活用、つまり「職員室のIT化」がどうも遅れているという印象があります。清水先生はどのようにみておられますか?

清水いまの先生方はコンピュータそのものには高い関心をもっているでしょう。たとえばお正月に私は900通ほど年賀状をいただきますが、ほとんどの人がパソコンを使って自分で年賀状をつくっているんですね。先生方は相当な割合でコンピュータが使える状況だと思います。昨年度の調査をみても、個人でパソコンを所有する先生はかなりの数にのぼります。ただしそれは教育用ではなく、あくまで個人用です。

 なかには、自分のパソコンを学校で使っている先駆的な先生もいましたが、個人情報保護やセキュリティの観点からいえば、あまり好ましいことではありません。学校では児童や生徒たちの個人情報を扱いますから、そこはやはり個人のパソコンと区別しなければいけないわけです。教育に必要なコンピュータは本来、学校あるいは市町村が支給すべきものです。イギリスなどの先進的な国々は、先生たちにコンピュータを1台ずつ買い与えるか、補助金を出しています。韓国などは全教員にパソコンを1台ずつ一斉に買い与えていますね。

 「職員室のIT化」は、まず先生1人ひとりがパソコンをもつところからはじまると私は考えています。1人1台が実現すれば、職員室でもパソコンを使って校務処理ができるという順序です。データをみますと、先生方は教科指導よりも校務処理のほうでパソコンを利用しているようです。校務処理というのは、生徒たちの成績をExcelで計算したり、保護者への通知をWordで作成したりといったことですね。やはり使ってみれば便利ですから、先生方も必要だと考えているでしょう。

眞柄まだ日本では、韓国のように国が予算を確保してパソコンを支給する流れはありませんか?

「職員室のIT化」は、まず先生1人ひとりがパソコンをもつところからはじまると私は考えています。

清水まったくないですね。以前からお願いはしていますが、教員がコンピュータをもつことの重要性がまだ理解されていないようです。

眞柄校務にかかわる時間が短縮されれば、それだけ先生が子どもたちと接する時間は増えるでしょう。教育面でもいい効果が期待できるように思えますが。

清水おっしゃるとおりです。コンピュータの操作に慣れてくれば、先生方は教室で指導にも使いはじめるでしょう。自宅に個人のコンピュータはあっても、それを教室にもっていくのは躊躇されます。ところが、学校に自分用のコンピュータがあれば、校務処理を通してスキルも向上し、「教室で指導に使いましょう、子どもにも使わせましょう」という流れになるはずです。

眞柄先ほどもご指摘がありましたが、学校でパソコンを用意するのは、個人情報保護やセキュリティの面でも必要なことですね。とくに教育現場は、個人情報保護に特別の神経をつかうでしょうから。

清水学校から個人情報が漏洩するのはたいへん危険なことです。教育の現場では、たった1つの個人情報でも外部に漏れると大問題に発展しかねません。個人情報が漏れたことが子どもの進学や就職に影響すれば、これは一生の問題になります。

眞柄人生を左右しかねませんね。

清水個人情報が漏れたことをきっかけに大きな挫折感を味わい、心豊かに成長するはずの子どもが人生を踏み外してしまう……そのような例を1つでもつくってはいけません。教育現場は、金融機関や一般企業よりも、個人情報保護にシビアであるべきです。

眞柄一般でいう個人情報保護やセキュリティより高いレベルでの厳しさが求められますね。

清水生徒の個人情報には、学習活動のデータが多く含まれています。試験結果にはじまり、本人の行動や性格についても多くの記述があります。これは教員という第三者からの視点ですから、本人が満足しない評価もたくさんあるはずです。いまは満足していても、時間が経てば満足できなくなる評価もあるでしょう。

 学校には子どもたちの将来にかかわる情報がたくさんあります。本来は子どもを育てるために必要なデータですから、保護するのはもちろん、教育的観点からもっと有効活用されるべきものなのです。

 もう1つ、個人情報とセットで考えるべきなのは著作権と肖像権です。子どもたちは学校で、作文や絵画など多くの作品を生み出します。写真を1枚撮っても、それは彼らの著作物ですから保護されなくてはいけない。これは知的財産について学ぶ機会にもなります。自分たちがつくった作品も知的財産であり、有名人がつくった作品も知的財産だと実感できるからです。そこで、他人の作品は使用にあたって対価が支払われるべきものだ、という意識が養われます。

IT教育はパソコンやインターネットの利用方法だけでなく、これから必要な権利意識、保護意識についても学ぶきっかけになりますね。

眞柄自ら創造した作品が保護されることでお互いに認め合う意識が育つ。作品をつくった人への敬意にもつながりますね。

清水お互いの作品を通して尊重しあえるマインドが一番のポイントです。そのことは日本文化の進展にも寄与していくでしょう。

 また、生徒の顔写真など肖像権についても同じです。最近は少年犯罪が起きると、すぐインターネットで卒業アルバムなどの写真が流れます。個人情報保護ではそれらの問題がすべて含まれてくるわけです。

眞柄IT教育はパソコンやインターネットの利用方法だけでなく、これから必要な権利意識、保護意識についても学ぶきっかけになりますね。

清水それが将来に役立つ能力ということです。
ただそこで不安なのは、情報化があまりに急速に進んだために、先生や保護者のほうが、著作権や肖像権についての意識が遅れていることです。まだ常識のレベルにまでなっていないでしょう。

 ひと昔前の常識なら、大人が自分たちの経験を若い世代に伝えればよかったのですが、いまはみんなで一緒に考えなければいけません。ある程度の時間が経てば、それが常識になる。いまはみんなで常識をつくる時代なんですね。そのときにわれわれ大人がリーダーシップをどうとっていくか、先生方がリーダーシップをどうとってくれるか、ということが重要になってきます。

眞柄たんへん示唆に富んだお話だと思います。いまは国が知的財産立国をめざそうと推し進めていますが、そのなかで、子どもたちにも知的財産についてきちんと教えると明確に示されています。教育現場は、その重要性を一般の生活者よりも高い次元で捉えなくてはいけないことがよくわかります。

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対談目次

1)市町村単位の取り組みが学校のIT化を一気に進める

2)教育現場は一般より高レベルの情報セキュリティが求められる

3)学校と企業が連携していくことで子どもにいい学習環境が提供できる

4)学校がブロードバンド環境をもてば地域コミュニティの中心的存在になる

ゲスト:清水康敬氏
NPO法人ブロードバンドスクール協会 理事長

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

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