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眞柄いま国は知的財産に焦点を当て、知的財産立国というビジョンを掲げています。民間企業もそうですが、大学の研究機関では多くの知的財産が生まれていると思います。法人化した国立大学は、知的財産立国という構想のなかで、どのように貢献できるとお考えですか? 牟田広島大学では広島県の全面的な支援を受けて、TLOをつくってもらいました。広島大学を中心に地域の大学が一緒になって、知的財産をそこに提供し、そこから企業に紹介してもらうというものです。また2年前には大学内にも知的財産本部を設置しました。 知財戦略はいま着々と進めている段階です。知財本部はスタッフも増えて、広島大学では200件ぐらいの知的財産を常時キープするようになっています。ただ、ここで大きな問題となるのは、知的財産を維持するのにものすごいコストが必要だということです。 眞柄たしかにコストはかかりますね。 牟田1件につき約50万円かかりますから、200件あればそれだけで1億円になる。毎年それが必要となります。文部科学省の補助金があるので何とかやっていますが、補助金が切れる3年後からはどうしたらいいかと考えているところです。高く売れる技術は少ないですから、いまのところはほとんど持ち出しです。知的財産の管理について、マイクロソフトのような大企業からノウハウを教えてもらいたいですね。 眞柄それも産学連携のなかでやっていくべきことでしょうね。
牟田日本で知的財産がそれほど重要な位置を占めなかったのは、明治以来の追いつき追い越せの時代があったからだと思います。私が研究者だったころは「特許取得なんて町の発明家がやることで、大学の研究者があんなことをやってはいけない」といわれていました。崇高な理論をうち立て論文を書くのが大学教授の仕事だという意識があったわけです。 この6〜7年のあいだに状況はずいぶん変わりました。いまは研究成果が出ると、論文を書く前にちょっと考える。知財本部にもっていける研究は、まずそっちへ出す。そのような風潮になって200件という数に増えてきたわけです。 いまや日本はフロントランナーのひとりです。追いつけ追い越せの時代は、欧米諸国の後姿をみて走ればよかったわけですから、目標やターゲットが最初から明らかでした。だから、そういう時代は知的財産というより、むしろ汗水を流すことのほうが大切だったんですよね。汗水を流したら、流した分だけ収入があるという時代です。フロントランナーのひとりになると、目標は見つけだすものだと自覚しなくてはいけない。自ら目標をつくり出そうとすれば、そのための知恵がないといけない。この知恵こそが知的財産だと思いますね。 眞柄知的財産を活かすという点では、大学がもっと地元の民間企業と積極的にかかわるという道もあるかと思います。地域社会における大学の役割についてはどのようにお考えでしょうか? 牟田地域社会における大学の役割は非常に大きいと思います。さまざまな次元で地域とのかかわりをもちますが、第一に、大学が存在すること自体に意味があります。広島大学がある東広島市は、以前は酒蔵の町というイメージしかありませんでした。それはそれで歴史があってよいのですが、20年ほど前に大学が移ってきてから、この地域の文化的な環境は大きく変わりました。大学キャンパスがあるアカデミック地区、産学連携センターのあるサイエンスパークなど、学術的拠点性をもってきたわけです。いま東広島市のキャッチフレーズは「未来にはばたく国際学術研究都市を目指して」です。 実際問題としては市の財政が潤い、若年人口が増えています。単に学生数で増えたのではなくて、自然と若い人たちが集まってくるようになった。全国的にみても珍しい地域になっています。 大学があることで、経済的、文化的、その他の効果は相当に大きい。また近年は、市が大学を積極的に活用するような方向性もみえてきました。大学が何か企画を出せば市役所がすぐに乗ってくれますし、逆に市役所のほうから企画の相談にこられる。商工会議所もそうです。地域がもっと大学を活用すべきだという意識に変わってきましたし、法人化したことでそれはさらに進んでいると思います。 一例をあげますと、サンスクエア東広島というビルの3階を東広島市が提供してくれ、ここをコラボスクエアと呼んで産学官の連携事業をやっています。市が場所を提供する、大学は知恵と人手を提供する、そういう協力も進んでいます。ベンチャー育成の貸し研究室やベンチャー育成講座などが主な事業で、講座には大学から講師を派遣しています。 もう1つは、小学校、中学校、高等学校など市の教育に広島大学の教育ノウハウを活用する動きがあります。互いに協力しあって市の教育をよりよくしていこうという取り組みです。これについては、市の教育委員会と広島大学教育学部が包括的共同研究の協定を結んでいます。 眞柄地域との協力は、法人化後はさらに加速したような感じですか?
牟田そう思います。 20 年前に広島大学が引っ越してきてしばらくは、まるで植木を移したばかりでまだ根が張っていないという感じでした。それがいまや根っこがしっかり張ってきた。私はよく地域の人たちにむかって、「広島大学を地域にしっかり根づかせたい。根を広く深く張れば張るほど大木に育つから、うんと大きな木に育て世界を見渡せるようにしたい。そこから世界に進出したい」と話します。 眞柄世界を視野に入れるという点では、中国の北京にも現地事務所をおもちですね。牟田学長は国際的な視野をもって学校運営をされていますね。 牟田広島大学はもとから国際活動が盛んで、近年はとくに国際戦略を立てて活動しています。昨年3月には、大学評価・学位授与機構の評価で、国公立大学の国際活動としては全国でトップになりました。北京研究センターも含めて、戦略性と具体的な活動が評価されたのだと思います。 眞柄北京研究センターはどういった経緯で設立されたのですか? 牟田北京の首都師範大学と広島大学は大学間協定を結んでいるのですが、2001年にむこうの学長と副学長に会いまして、ぜひ強力な連携を進めていきましょうという話になりました。そのとき、むこうの学長から「ついては広島大学の拠点を北京に置いてくれないか」といわれました。私はピンとこなくて、共同研究で広島から人が行ったときに使えるだろうというぐらいに考えたんですね。 ところが実際に研究センターを置いてみると、さまざまな方面に活動範囲が広がっていくんですね。中国文学の研究者が行ったときに使ったり、中国の大気汚染問題に関するシンポジウムを開いたり、とにかく拠点があると便利だとわかったわけです。 それなら研究だけでなく教育にも活かそうということになり、中国からの留学生を採用するときにそこで試験をするようにしました。以前は留学希望者が広島大学の教授に手紙を書いてきたときに個別対応していたのですが、そういう受け身ではなく、こちらから優秀な人材をとりに行こうという姿勢に変わったわけです。中国からの留学生にとっても、わざわざビザを取得して広島まで試験を受けにきていたころより、はるかに便利になりました。北京で試験をやれば、広範囲から受験者が集まってきます。
眞柄お話をうかがっていますと、牟田学長のチャレンジ精神がよく伝わってきます。法人化を前向きに捉えるというお話、研究は失敗を恐れないでつづけることが大切というお話、北京研究センターを設置してみたら思いがけなく利用範囲が広かったというお話、どれもたいへん積極的なマインドが表れていました。そして何より、大学運営は企業活動と同様にビジョンが重要で、受け身の姿勢ではなく、先取りの姿勢で組織改革に取り組んでいくというお話には感銘を受けました。民間企業との共通点も数多くみつけられました。 本日は貴重なお話をありがとうございました。 |
1)国立大学法人化は受け身ではなく大学改革のチャンスだと前向きに取り組む
2)大学運営は企業経営と同じ ビジョン共有型の運営を展開する
3)産学連携では得意技を活かすとともに芽が出はじめた分野も積極的にチャレンジする
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