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眞柄昨今では「メディアとITの融合」ということがよく話題になっています。読売新聞社は、インターネットの「YOMIURI ONLINE」でニュースを発信しているほかITを使った取り組みにも積極的だと拝見しています。新聞そのものは紙という形のあるものに印刷され、実際に手にとって読むことができるという大きなメリットがあります。内山社長は新聞社のIT活用について、どのようなお考えをお持ちでしょうか。 内山パソコンやインターネットの普及に象徴されるIT社会は、新聞社にとってもたいへん興味深く、いろいろとチャレンジしやすい時代になったと思います。一時、インターネットの普及で新聞は不要になるとか、変革を迫られるといった議論が多く出ましたが、結論からいいますと、私は新聞とITは共存、あるいは融合できるものだと考えています。科学技術はおそらく無限に発達していくでしょうから、そのなかでコンピュータやインターネットがより高度に進化していくことは間違いありません。 しかし、ITはあくまで道具だということも忘れてはならないことです。情報伝達の手段として存在するのであって、IT自体が目的にはならないのです。私が新聞とITの共存や融合が可能だと考えるのは、ニュースには2つの側面があるからです。1つは速報性で、特ダネ以外の発表ものなどでは新聞はテレビやインターネットにかないません。新聞社としても速報性の面では、これからITを駆使していきますから共存することになるわけです。 もう1つの側面として、ニュースには価値判断が必要だということがあります。報道機関はただ情報をタレ流すだけでは成り立ちません。いくらITが発達しても、この価値判断という点では新聞社が培ってきたさまざまなノウハウが活かされます。 眞柄IT業界の方では「情報を受け取る人々がそれぞれで価値判断すればいい」という意見も一部にはあります。ただ実際には、それほど簡単なことではないですね。
内山一般の人々がさまざまなニュースの価値を見極めるというのは難しいことです。そこに新聞社という報道機関の役割が出てきます。あるニュースが1面トップに置かれ、大きな見出しがつけられたら、それだけ重みのある情報なのだという価値が明確になります。また社説も含め、あるニュースに解説を加えることも、新聞社という報道機関が担う役割の一つです。 紙に印刷された新聞は、素早くめくりながら斜め読みもできます。あとで必要になると感じたら、切り抜いて保管しておくこともできます。そういう紙のもつ利便性は小さくありません。 事故などの速報性の面はテレビやITに譲るとしても、それ以外の部分、つまり価値判断や解説という点で、新聞に勝るものは他にありません。さまざまな問題について、いま起きている状況を正しく把握して先行きを予測するには、新聞の方がはるかに便利でしょう。 眞柄新聞は形のあるメディアですから、デジタル情報と違って、購読者の手元まで物理的に運ばれてこなくてはいけません。新聞社は情報を流す仕組みと、併せてモノを流す仕組みの両方を持っているということです。 ITがいくら発達してもモノは運べませんから、朝刊1000万部あまりを配達するシステムを構築しているというのは大きな武器だと思われます。この全国規模での流通網は、将来的にさまざまな利用方法が考えられると思われるのですが。 内山ご家庭や職場に新聞を配達する宅配システムには、いくつものメリットがあります。読売新聞は99%が宅配ですから、それだけの数が予約販売されているということです。駅やコンビニなどのスタンド売りはどうしても売れ残りが出ますから、宅配の割合が高いほどそれだけ無駄な資源を使わなくてすみます。 読売新聞だけで全国に8,500の販売店があり、約10万人の配達要員がいます。他紙も合わせた全国の販売店数は約2万1000店、販売員は45万人ですから、読売が占める割合は販売店数で40%、従業員数で22%です。 先ほど私が「IT社会は新聞社にとって魅力的だ」といったのは、実は販売拠点の方での利用価値も大きいとみているからです。
眞柄情報を流す部分というより、モノを流す部分でのIT活用ですね。 内山全国8,500の販売店にいま訴えているのは、地域貢献型になろうということです。噛み砕いていえば、「顔の見える販売を目指す」ということです。 首都圏でいえば、1つの販売店はだいたい4,000部ほどの販売を担当していますが、所長たちは4,000軒の配達先がすべてわかるわけではありません。しかし配達員たちは500部ずつぐらいで区域を担当し、集金や勧誘でもお宅にうかがっています。配達先500軒のうち主だった方々と顔をつなぐことはできるでしょう。 ここでインターネットを活かすことができます。たとえば購読者向けに産地直送品を販売するなどです。お客さまからインターネットで注文を受け、商品は販売チャネルに載せて各ご家庭まで配達されるという流れです。 眞柄全国8,500拠点、10万人という販売網にはいろいろなものが載せられますね。 内山高齢化社会になると、通信販売とは違った配達ニーズに応える場面も出てきます。お年寄りだけのご家庭では、おコメを買って帰るのもひと苦労ですから、電話1本で自宅までお届けする。トイレットペーパーやティッシュペーパーなどは軽くてもかさばりますから意外な配達ニーズがあるんですね。 注文の品をお届けした際に、「いま山形のさくらんぼがシーズンですよ」といった販促活動もできます。このサービスは首都圏で動きはじめていますが、全国規模で広げていきたいと考えています。 眞柄それだけ地域の方々と密接な関係を築いていくことになりますね。まさしく「顔のみえる販売」です。 内山もう1つの取り組みは、地域の防犯活動に参加することです。読売の販売店では、沖縄を除く46都道府県で防犯協力会をつくり、各地の警察本部と連携して犯罪の防止・抑止に努めています。 首都圏ですと、朝刊は朝5時から6時ぐらいに配達されます。冬場はまだ暗い時間帯です。そこで防犯意識から、これまで見過ごしてきたことにも気づくようにすることが大切です。たとえば、お年寄りがひとり暮らしをする家で、昨日の朝刊が新聞受けに入ったままなら、何か事故が起きたのかもしれないと考える。あるいは、住宅地にいつもは見かけないクルマが停まっていることに気づく。不審に思ったら販売店や警察にすぐ連絡して調べてもらうわけです。
眞柄それは素晴らしい取り組みですね。私は東京に住んでいるので、地域のコミュニティ意識が薄れていることがいつも気になっていました。地方には、祖父母、両親、子どもたちの親子三代の関係がまだあって、隣近所の人たちが何かあれば声をかけ合っているのをみると羨ましく思うことがあります。 今の東京ではコミュニティの中でつなぎの役割を果たす人がいません。せいぜい学校が接点になるくらいです。その意味で、新聞の販売チャネルは地域に根ざしていますから、重要な役割を果たせるポジションにありますね。 内山各販売店にはホームページをつくりなさいと指導しています。担当エリアの地図を載せ、たとえば引ったくり事件が連続して起きたなら、地図上に事件の場所を示して注意を呼びかけることができます。「私たちの販売店では、配達時にも周辺に注意しています」とメッセージを入れておけば、お客さまは「読売の販売店はホームページで住民の安全を配慮してくれている」と安心感をもっていただけます。 眞柄地震や水害などの防災にも効果的でしょうね。配達員の方々は地域の道を隅々まで知っているわけですから。私たち購読者からみれば、たしかに販売店は、防犯・防災を含めた地域貢献に期待がもてます。 内山パソコンやインターネットのITと、配達員という生身の人間が提供するサービスはうまく融合できるのです。デジタル社会というのは無機質的ですから、有機的で人間味のあるアナログの部分が補わないといけません。 眞柄バランスのとれたサービスになりますね。デジタルとアナログをうまく調和させることによって、新しい形の地域貢献ができ、そこからまた新しいビジネスも生まれてくる。何よりもコミュニティがつながる可能性があるのは素晴らしいと思います。 眞柄私は3年ほど前によみうりランドを見学させていただいたことがあります。遊園地とジャイアンツのグランドがあるのは子どものころから知っていましたが、実際に拝見して驚きました。遊園地の近くに老人施設や病院があり、周辺には住宅が建ち並んで、トータルの環境開発が進んでいたからです。 そこは、親子三代が同じ時間を一緒に過ごせる空間でした。孫たちはおじいさんやおばあさんに挨拶したあと、よみうりランドへ遊びに行けば喜びます。そういう想像が容易にできる街があったので驚きました。 内山よみうりランドは16万坪の敷地に遊園地があり、ゴルフ場が2カ所、川崎と船橋では競馬場を経営しています。しかしテーマパークとしては、東京ディズニーランドに及びません。 そこで、あの敷地を活かして21世紀にふさわしい何かをつくれないかと考えました。それがいま眞柄さんのおっしゃった三世代が一緒に暮らせる福祉の町なんです。最初につくったのが介護老人保健施設「よみうりランドケアセンター」です。4階建てで150人を収容できますが、地域の方々が優先ですでにいっぱいとなっています。 そのあとに特別養護老人ホームと老人介護の専門病院をつくりました。いま3つの施設が完成していますが、これらが軌道に乗れば、もう少し規模の大きいものをつくっていきます。たとえばお年寄り夫婦と子ども夫婦が住める二世帯マンションなどです。そこに入所される方はたとえば遊園地の割引があるなど特典があるのもいいでしょう。お年寄りは歩いて病院へ通えるし、元気なら夫婦でゴルフも楽しめる。ゆくゆくは住民1万人規模の街にしていきたいという構想です。
眞柄まさしく読売モデルのユートピアですね。コミュニティのあるべき姿が少しずつできつつあって、その入り口を覗いたような気がしました。人間味のあるアナログ的な部分の取り組みは、あそこに集大成があるのではないかと思います。デジタルとアナログの融合したコミュニティの姿をこの目で早くみたいですね。今後の進展に期待しています。 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。 |
1)グループ企業の再編で実現した経営効率の向上とスピードアップ
3)デジタルとアナログを融合させ人間味あるサービスを追求する
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