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眞柄東京に住んでいますと、核家族化が進み、地域コミュニティが成り立っていないという気がします。町内会さえあるのかどうかもわからない。ご近所と接点があるとすれば、ゴミを出す場所でもめる時ぐらいです(笑)。 私が「ブロードバンドスクール」で最初に岡山に訪問させていただいた時に感じたのは、岡山市には町内会をはじめとする地域コミュニティがしっかりあるということでした。 萩原初めにコミュニティがあるかないかは、情報システムを考えるうえでも重要なポイントです。岡山市の場合は、既存のコミュニティをベースに情報技術を組み込んできました。電子町内会といっても、お互いに顔がわかっているし、その中で名前を出して議論するから安心できるのです。 反対に現実のコミュニティがないと、情報システムのなかに空間的なコミュニティができあがってしまう。そこから新たに現実のコミュニティが生まれることもありますが、悪くするとインターネットでみかけるように、人間の良くない面を引き出す場合もある。お互いに敬意を示せる人とそうでない人を峻別するシステムがないとつらいでしょう。
眞柄土台に現実のコミュニティがあることは重要ですね。その意味では、ITは人と人との直接的な接点の補完機能であるべきですね。健全なコミュニティをきちんと維持することは重要ですし、ITを使ってさらに強化していくこともできるはずです。 地域のつがなりは教育面にも大きく影響するのではないでしょうか。わが家には高校生と中学生の子どもが3人いますが、中学、高校までの教育はものすごく重要で、日本の将来が決まってしまうほどのインパクトがあると思えるんです。友人関係なども含め、その重要な時期に自治体からの戦略やビジョンを提示していくことも大切だと思いますが。 萩原「文部科学省からの……」ではなく「自治体からの……」というところに意味がありますね。 例えば「総合的な学習」がよく話題になりますが、これが成功か失敗かと問われたら、地域によっては成功しているし、失敗しているともいえる。地域の人たちが「どうしても子供たちにこのことを教えたい」と参画しているところは成功しているんです。先生が嫌々やっているようなところは普通の授業より悪いんですよ。 岡山市の小学校や中学校では、環境教育に熱心な方たちがいて「総合的な学習」の時間に情熱を注いでいるところがあります。面白いのはそういう状況だと、子どもたちが自分の意見を積極的に話しはじめるんですね。なぜなら、学校の授業というクビキ(頚木)から逃れることができるからです。「総合的な学習」という時間を借りて、授業のクビキから逃れた瞬間に子どもたちは能弁になります。 環境教育が進んだことも確かですが、それより子どもたちの発表能力や討論能力が圧倒的に高かったことのほうが成果です。このケースは愛知万博でビデオ上映されましたが、皆さんすごく感動して「これが日本の子どもか!」という声も聞かれました。もし地域のほうに教えたいことがあるなら、あるいは親として伝えたいことがあるなら、「総合的な学習」はどんどんやったほうが良いでしょう。子供たちの自発的な学習意欲に火をつけることもできますよ。 眞柄教育における官と民の連携では、どのような方向性をお考えですか。 萩原教育における官民問題は二重になっていて、1つは教育現場である学校の運営が官か民かという問題。これはすべての年齢において、ある程度の割合で官と民が併存すべきだと思います。2つ目の問題は、補助的な部分で民間が入って手助けをする。日本は教科書会社も民間ですから、民間の知恵が入らない教育はありえないでしょう。 マイクロソフトも学校を作ったらどうでしょうか。世界の子どもたち、とくにアジアやアフリカなど教育の機会に恵まれない子どもたちにビル ゲイツ教育財団みたいなものを作って鍛えたらいいと思いますよ。「技術者の発掘が目的だろう」といわれるかもしれませんが(笑)。 眞柄学校運営はまだありませんが、ビル ゲイツは個人的に教育に関する基金を作っています。主に発展途上国で十分な教育に恵まれていない若い世代に対して寄付するという形ですね。 萩原ビル ゲイツさんはやはりすごい人ですよ。想いはすごく強いし、発想の大きさもある。その彼が「こんな教育をしてほしい」と情熱を注ぎ、教育の方向性やカリキュラム内容も考えるようなインスティテュートがあればいいと思うんです。どこかの学校に寄付するのではなく、ご本人が「こういう子どもたちを育てたい」という気持ちから第2第3のビル ゲイツを育成する。そこにすごく意味があると思います。 例えば松下政経塾は、やはり松下幸之助さんが「日本をよくするためにこんな人材を育てたい」といったから意味があるんですね。○○大学政経学部とは意味が違います。松下幸之助さんが「人生かけてこれをやりたい」といったから、みんなが心を動かされたわけです。 眞柄岡山市の学校教育にはそのような動きはありますか。 萩原岡山市立の中高一貫校に岡山後楽館があります。「岡山後楽館は岡山市の中高等教育の一大機関にする」と位置づけたのですが、実はここに大きな意味があるんです。高等教育というのは高校だけでなく、それ以上の学校も含むんですね。 眞柄大学や大学院ですか。 萩原それに職業学校も含まれます。いま新しい教育委員会で、その方向性について議論しているところです。例えばキーワードとして「マイスター」「情報」などが考えられます。これはマイクロソフトさんと一緒に考えていったら面白い課題ではないでしょうか。「ビル ゲイツ・インスティテュート・イン・オカヤマ・フォー・マイスターズ」とか(笑)。 眞柄小泉内閣の地方分権改革もあって、国と地方のバランスが見直されています。萩原市長はどのようにみておられますか。
萩原明治時代のように4,000万人が飢え死にするとか植民地にされそうだというなら、中央政府が強い責任体制をとる必要はあるでしょう。しかし社会が成熟するにしたがって、地方自治体で民主的に決めたほうがいい場合が増えていくのは当然です。国防などの問題は中央政府に任せても、その他は地方自治体が住民の意思を聞いたうえで政策を打ち出していく。その度合が高まるのは、歴史的な流れや社会発展の中では必然でしょう。 眞柄最終的には、住民の積極性が大きく左右するところもありますね。その意味で、東京はかなり遅れているといえます。 第5回の対談でも紹介したのですが、2月に長野市で開催されたスペシャル・オリンピックス冬季世界大会では当社から100人ほどのボランティアで参加しました。現地で体験した人たちは皆「行ってよかった」というんですね。今回たまたまスペシャル・オリンピックスという器があったから、一歩を踏み出す機会を得て意識づけができたわけです。 これは地域活動への参加も同じだと思います。住民の参加や意識づけには、どのような施策を打たれているでしょうか。 萩原岡山市はもともと住民組織が強いところですが、なかには町内会への加入率が下がっている地域もあります。私たちは市の連合町内会と一緒になって、町内会の加入促進をやっています。「町内会に入ろう!」は基本中の基本ですね。 もう1つ取り組んでいるのが公民館活動です。これは極めて良い。先日も市内のある公民館をみてきたのですが、住民数が約9,500人の地域で1年間の来館者数が延べ4万人を超えていました。それぐらいのパワーがあるんです。 眞柄住民1人が年に4回は足を運ぶ計算になりますね。どんなことをやっているんでしょうか? 萩原語学講座なら英語、韓国語、中国語。それ以外にも踊りや歴史、囲碁、将棋と様々です。環境保全活動や選挙運動などにも利用されています。 いまの課題は男女共同参画です。場所によって差はありますが、総平均では公民館利用者の約85%が女性なんですね。 働く男性は平日利用が難しいでしょうが、それにしても差が激しすぎますから、男性が参加できるように工夫しているところです。 働く男性は会社と家と飲み屋ぐらいしか行くところがない。定年退職して地域に帰ってきても、そのときに行く場所がないわけです。能力の高い方々がローカルの隅っこに隠れてしまう。その方々に出てきてもらえるような講座や活動を設けて、まず公民館で地域デビューしてもらう。子どもが公園デビューするのと一緒です。 公民館デビューすれば、いままで培ってきたことを役立てる場面も出てきます。公民館で講師になっていただくこともあるでしょう。 眞柄自分が培ってきた知識やノウハウを活かせるのはいいですね。 萩原いずれは民生委員会やスポーツ少年団など地域のファンクションに入ってもらうための1つのプロセスですね。私は公民館活動は非常に重要視しています。会社人生が終ったら次は社会貢献してもらいたいですから、その入り口をきちんと作っておく。これがわれわれの政策だし、地域に期待することです。 眞柄電子町内会は住民参加の入り口になっていますか。 萩原こちらはむしろ若い奥さま方や地域に引っ越してきた方が利用されます。電子町内会で一気に地域デビューできますから。町内会への入り口はたくさん作っておくことが大切です。いま電子町内会の参加率は23〜24%で確実に増えています。3割を過ぎたあたりでブレイクするのではないでしょうか。 眞柄完成型を早くみたいですね。最後にまた冒頭の感想に戻りますが、私からみた岡山市は、萩原市長とともに職員の方がかなりのスピード感で仕事に当たられています。市長だけがスピーディでも全体は動きませんからね。 当社は民間のなかでも動きが速い方だと思いますが、私たちの目からみても岡山市のスピード感はものすごい。市長にとってスピード感の重要性はどう捉えていますか。
萩原政策というのは、せっかちでしつこいのが成功の条件です。「せっかち」というのは、思いついてから決断するまでを素早くする。ぐずぐずして時間をかけとチャンスを逃すリスクが増えます。いい話はとにかく決断を急がないといけない。しかし、それが成就するまでは調整やさまざまなプロセスがあるので時間はかかる。ここは「しつこく」です。「せっかち」で「しつこい」というのが政策の成功パターンです。 眞柄これまで私たちが関わってきた点と点が、今日のお話で大きなビジョンに結びつきました。完成が楽しみです。本日はありがとうございました。 |
3)既存のコミュニティにITを組み込む地域のパワーを教育にも活かす
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