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エグゼクティブ対談 【第6回】萩原誠司氏 (岡山市長)

骨太のビジョンで地域コミュニティの充実と人づくりを図る(2/3)

長距離ランナーの地道さで「情報水道構想」を進める

眞柄私どもIT業界では、官の取り組みとして「e-Japan戦略」に注目しています。その中で岡山市は「情報水道構想」を打ち出し、情報化評価の各種ランキングでは常に自治体の上位に顔を出していますね。

萩原私たちのやり方は基本的に地道です。「e-Japan戦略」が最初に出されたとき、かなりビックリマーク「!」がつくような感じでしたが、我々の取り組みにはビックリマークが全然つきません。「当たり前のこととして進めていく」という発想です。

 「情報水道構想」の「水道」というは、整備されて当然のライフラインという意味です。また活動自体も、水道のように市民生活に直接かかわる部分から進めようと意図しています。「ブロードバンドスクール」でも、学校に新しくコンピュータ教室を設置するのではなく、日常の授業に情報機器を入れていくという発想でした。昔でいえばソロバンを使うのと変わりはない。実はえらく地道な発想なんです。

ITが手段なのか目的なのか、民間企業でも逆さまになることが見受けられますが、ITが目的化するとうまくいかない。

眞柄おっしゃるように、情報技術はあくまでツールです。ITが手段なのか目的なのか、民間企業でも逆さまになることが見受けられますが、ITが目的化するとうまくいかない。

萩原市民生活や教育のために素直に使うとしたらどうすればいいか。そこからすべて発想しています。「e-Japan戦略」で国から補助金が出れば使うし、出なくても自分たちで進めていく。長距離ランナーの地道な走り方ですよ。世の中の流れがどう変わろうと、市民が求めることを着々と進めていけば、息切れしないはずです。

眞柄岡山市のITを活用した市民のインフラ作りというのは施策そのものに表れていると思います。今年8月の岡山国体開催に合せて、岡山駅西口に「岡山市デジタルミュージアム」が開館しますね。ポスターなどには「人とまちの博物館〜市民が主役の博物館〜」と謳われています。2002年3月にスタートした「電子町内会」も含めて、地域コミュニティにITを取り入れていく基本姿勢は同じですね。

萩原「デジタルミュージアム」「電子町内会」「市役所の情報化」は一連の取り組みです。水道に水源地があるように、「情報水道構想」では「デジタルミュージアム」が水源地に当たります。情報は水道と違って双方向で流れますが、だいたい似たようなイメージです。電子町内会で精製された情報が「デジタルミュージアム」に溜まり、やがて別の使い方をされることも考えられます。岡山市全体の情報ユーザーにとって巨大な情報水源地になるということです。

 歴史を重ねていくことで、これは面白いことになりますよ。今はゴミにみえる情報でも、蓄積しておけばやがて価値が出てくる。それが「情報貝塚」の発想です。貝塚は大昔のゴミ捨て場です。貝を食べて殻を捨てた場所が、6,000年後は宝の山になっている。それと同じで、市民情報というのはいま価値がなくても、時間経過とともに別の価値が出てくる。例えば、集まる情報量を追ってみるだけでも歴史的な波がみられますよ。

眞柄スケールの大きな発想ですね。これまで私が断片的に伺ってきた岡山市の取り組みが、実は1つの大きな絵に収まるのだと理解できます。「情報水道構想」のどこでコンテンツが生まれ、どこを流れ、どこに蓄積されていくか。最初から萩原市長の頭の中では明確だったんですね。私には点と点が結ばれた気がします。

萩原元々一本の流れとして発想したものです。もちろん時間はかかりましたけどね。

眞柄そのビジョンがみえると、うなずけることもたくさんあります。例えば「ブロードバンドスクール」で子供たちが作った研究成果も「デジタルミュージアム」に収められますよね。子どもたちは自分の研究成果が新しくできた施設にあると自慢できる。各家庭でも、お父さんお母さんは「うちの子が作ったものがある」、お祖父さんお祖母さんは「孫の作ったものがある」と話題になります。これは家庭や地域コミュニティに浸透しやすい。

変化も許容しながら、実は大きな姿は統合されているというのが本来のビジョンだと思います。

萩原そこは重要なポイントです。イベントを開催するとき、保育園や幼稚園の音楽隊を呼んでおくと、その3倍の観客が集まりますからね。子どもが努力する姿や子どもの笑顔には、それだけすごいパワーがあります。

眞柄「情報水道」のインフラは、子供たちを取り巻く環境を変え、家庭や地域コミュニティを変えそうですね。住民活動も活発になり、冒頭の「未来を担う人が育ち」にもつながってきます。

萩原すべて統合されたアイデアですから。もちろん統合されながらも、細部では遊びの部分があり、挫折する部分もある。現実の動きにはそういったことが起こります。同じ統合でも人によって個性の違いが表れる。そうした変化も許容しながら、実は大きな姿は統合されているというのが本来のビジョンだと思います。

眞柄本当に骨太のビジョンですね。各計画が実現するたびに全体像が明らかになっていくでしょうね。

萩原すべてが関連していますから、一歩一歩進んでいくうちに「あぁ、こういう姿の山だったのか」と判ってもらえるはずです。

用語解説
「岡山市デジタルミュージアム」が、今年8月オープンします!
 

岡山駅西口正面の「リットシティビル」4・5階に平成17年8月27日、「岡山市デジタルミュージアム」がオープンします。

ここは岡山の歴史と今をデジタル技術の活用・実証を通して記録・保存・展示・発信し、市民の営みや誇りを次世代に伝える文化と教育の拠点であり、そして何よりも岡山のまちと市民が主役の博物館です。

8月のオープン時には開館記念企画「おかやまと桃太郎展」を開催します。”桃太郎といえば岡山”といわれるほど地域のシンボルとして親しまれてきた桃太郎を、単に昔話だけでなく様々な分野から多角的にとらえた全国初の展覧会です。

また、10月には東京、神戸とともに全国3会場の一つとして開館記念特別展「新シルクロード展」を開催します。近年の遺跡発掘で発見された出土品や、陝西省における唐代の壁画をはじめ世界初・日本初公開の文物を中心に展示する今年を代表する展覧会です。

同じく10月には、ミュージアムの常設展示も姿を現します。展示のメインである「情報宝庫コーナー」では床一面に広がる巨大な航空写真の上を鳥になった気分で散策し、そこに埋め込まれた岡山の歴史・文化・自然などの情報を移動型情報端末で楽しみながら取り出せます。また、岡山の誇りである吉備の文化、岡山城、備前焼、児島湾干拓などの展示コーナーでは、実物資料に加えデジタル技術でわかりやすく解説します。

国宝や重要文化財の展示も可能な企画展示室や、200インチのハイビジョン対応大画面を備えた講義室など、IT先進都市・岡山のランドマークとなるこのミュージアムで、岡山の歴史、文化、風物との意外性を持った出会い、そして世界一級の展示物をどうぞお楽しみください。

◆岡山市デジタルミュージアム:
http://www.city.okayama.okayama.jp/dm/

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対談目次

1)世界に輝く都市となるため人づくりと国際貢献に注力する

2)長距離ランナーの地道さで「情報水道構想」を進める

3)既存のコミュニティにITを組み込む地域のパワーを教育にも活かす

4)政策を成功につなげる「せっかち」と「しつこさ」

ゲスト:萩原誠司氏
岡山市長

プロフィール

聞き手:眞柄泰利
マイクロソフト株式会社

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