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眞柄エグゼクティブ対談の第2回は、自民党幹事長代理の安倍晋三先生にお越しいただきました。森・小泉両内閣において内閣官房副長官を担当された安倍先生は、自民党の改革についても推進されており、現在、まさに国政の中心となってわが国の進路をつくっていらっしゃいます。本日は今後の日本、将来を担う子どもたちの教育現場、また自民党の改革推進についてもお聞きしたいと思います。 まず私が最近のニュースで驚いたのが、OECDがまとめた学習到達度調査の結果です。これは各国で15歳の学習能力を測っているわけですが、私にも小学生と中学校の子どもがおりますので、非常に気になる調査です。このたび発表された2003年の調査によりますと、日本がなんと読解力に関して8位から14位に落ちているんですね。 それから国際KI研究所の調査もあります。これは経済活力や政府の効率性、事業環境、インフラと4つほどの側面からみたものですが、92年には日本は1位だったのが、今回は23位にランキングが落ちているわけです。ここでも日本の国力が落ちているという結果が出ています。 安倍先生としても非常に危惧されておられる部分がおありかと思いますが、日本の国力が落ちているといわれるなか、この国の方向性をどのように打ち出していったらいいか、最初の質問としてご意見を伺いたいと思います。
安倍いま眞柄さんからご指摘があった点というのは、日本の力がだんだん弱くなっているのではないか、ということですね。資源の乏しい日本にとって国力の源泉は何かといえば、まさに人です。優れた人材こそ国の力だと思います。 しかし少数精鋭という言葉があるように、たとえ人口が減ったとしても優秀な人材がたくさん育てばいいわけです。つまり、教育をどうしていくのかがいま問われています。 かつて日本は、義務教育レベルはもちろん、高校生卒業時の学力レベルは世界最高水準でした。しかし学習の習熟達成度がたいへん低くなっているという数字が出てきている。その他、政府行政側の効率においても低くなっているという数字が出ています。 今年はちょうど戦後60年を迎えますが、われわれは戦後にいくつもの目標を立ててきました。それは豊かな国になるための目標でしたが、それなりに達成してきたと思います。80年代後半にはバブル経済の宴があり、それも崩壊して長い不況を経験しました。そして、いまは目指すべき目標を失っているのではないかと思います。この60年間で失ったものがたくさんあると思いますし、ここでしっかりと、もう一度足元を見つめ直すべきだと思います。 古色蒼然と思われるかもしれませんが、60年前、政府は敗戦した段階で、戦後の制度をいろいろとつくってきました。憲法もそうですし教育基本法もそうです。ここにきてそれでいいのかと、みんな思いはじめているのです。 私たちが戦場体制を精神的にも卒業するためには、新しいしくみをもう一度自分たちの手でつくっていく必要があるのではないかと思います。そのためには、例えば教育においては教育の改革、教育基本法の改正が必要でしょう。 いま、小泉さんとともに進めている大きな構造改革のなかで、力強い日本を再建する動きがあります。この国に生まれたことを誇りに思える、そういう日本をつくっていきたいと思っています。 眞柄私どもは日々、各種の調査データやメディアからの情報を聞きますが、元気が出るような話がどうも少ないという気がします。ですから、いまの先生のご発言は、おそらく中小企業の方々にとって勇気づけられる話ではないかと思います。
眞柄冒頭に安倍先生がおっしゃったとおり、日本は元来もっている資源が乏しいなかで、戦後は加速度的に発展してきました。その礎になったのは知力だと私も思います。 小泉政権になってからは、ITの発展に取り組み、矢継ぎ早に知的財産についても非常に力を入れられました。この知的財産戦略というのは、今後の日本の国際競争力という点においても非常に重要なポイントだと思います。日本の国際競争力を高めていく、あるいは再生し成長していくためにはどういう形で取り組んだらいいのでしょうか。政治の取り組みもそうですが、民間に向けて先生から何かご提言があれば、ぜひお伺いしたいと思います。 安倍小渕内閣ができるまでは、政府が何かに戦略的に取り組むというのは、なかなかできませんでした。実際には戦略的に取り組んでいても、表立って「戦略的」という言葉を使えませんでした。いまから考えればおかしな話ですけれども、そういった雰囲気があったのも事実です。 眞柄そういわれてみますと、政府が「戦略」という言葉が使いはじめたのは最近のことですね。 安倍そう、「戦略」といったらまるで戦争でもするのかと受け取られたわけです。例えば「ODAを戦略的に使う」という意味で「戦略的ODA」といったら国会でたたかれ、使えなくなったということもありました。けれども小渕内閣のときに「経済戦略会議」ができまして、これは官邸が主催する会議で「戦略」という言葉を使った最初だったと思います。 その後、森政権で「IT戦略会議」をつくりました。日本はITでは世界に遅れているけれども、そこに追いつき追い越せ、ということです。キャッチアップは日本の得意技ですから、それを活かして進められたものです。みごとに、5年間でインターネットの接続料が世界で一番安いという結果をもたらしました。これだけ一気にIT化が進むとは誰も考えていなかったでしょう。いまは政府も電子化を進めています。 そしてさらに小泉内閣では、知的財産においても「戦略的に考えていく」という知財戦略を打ち出しました。眞柄さんがおっしゃったとおり、やはり日本人のもっている一番の財産は知恵ですよね。この知恵をまさに富に換え、それをしっかりと守っていく。そのことを奨励していく必要があると思います。いま着々とその基盤ができているのではないでしょうか。 かつて、日本国内にIT企業は5社しか残らないといわれましたが、いまは世界で5社しか残らないとまでいわれています。そのなかに日本企業がいくつ残るのか、という状況を迎えています。勝ち残っていくためには、政治が企業に負わせている税制や規制などのハンディキャップを取り除いてあげなければならない。世界の大きな流れのなかで日本企業が活躍できる環境をいかにつくるかは、われわれの仕事だと思います。 一方、経営者の皆さんがこれまで政府に対して要望してきたのは、「こういう規制で守ってもらいたい」というのが主たるものでした。しかしそういう「守ってもらいたい」と助けを求める業界は、いくら守っても守りきれない時代になってきたと思います。むしろ、「自分たちが伸びていくためにはこういう規制をやめてくれ」という人たちが出てきました。このような産業をいかに強化していくかが求められていると思います。前者の「守ってもらいたい」という業界に含まれていた皆さんも、後者の「規制をやめてほしい」という立場で闘っていただきたいと思います。 眞柄そうですね。たしかに伸びの遅い業界に合わせる、あるいはそこを守るのではなくて、これから伸びそうな業界をきちっと伸ばしてあげるサポートが大切ですね。それから私たち自身がアイディアや知力を切磋琢磨して養う、というのが非常に重要だと言うことですね。
安倍すでにいろんな情熱をもった若い経営者たちが出てきています。例えば山陰地方で小さな建設業を営んでいた方がそうです。 山陰地方はもっとインフラ整備が必要だと私は思っていますが、財政改革のためには公共事業を減らさなくてはなりません。ですから山陰地方も、大きな流れのなかでは減らしていかざるを得ないというのが実情です。しかしそんな状況でありながら、生き残りをかけて自分たちにしかできない技術をつくりだそうと努力している人たちがいます。一例をあげますと、まだ事業化してはいないのですが、ナノテクノロジー分野で山口大学と共同研究してパテントを取った人がいます。私はそういう意欲をもった人たちがいることを初めて聞きました。 建設業界といえば、かつては「何とか守ってもらえないか」という一方だったわけです。それが、「何か新しい分野はないですか」となってきました。こうした変化は大きいと思いますし、これが日本の新しい力強さをつくっていくことになると思います。 眞柄先ほどのご回答とともに、非常に勇気づけられるお言葉ですね。また、われわれ自身が積極的に、そのような言葉を出していかなければいけません。やはり守りの姿勢でなく、攻めの姿勢に転じていくことが重要だと思います。 |
2)日本の知的財産戦略は国際競争力を高めるうえで重要なポイント
3)学校、家庭、地域で求められる子どもたちへの情報モラルの教育
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