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眞柄日本は知的財産で今後グローバルなマーケットでの競争力を高めていくと期待されています。しかしその一方で、今年5月に開発者が逮捕されたWinny事件など知的財産にかかわる問題が、いま国内ではいくつもみられます。 Winny事件でいえば、ファイル共有の技術そのものは悪くないという見方と、著作権侵害を横行させるという見方がいまぶつかり合っている状況だと思います。知的財産立国へと進む以上、法律を遵守し、対価を払ってコンテンツやソフトを利用するのが正しい姿なのでしょうが、そうかといって、ITの技術的進歩を権力や圧力で封じ込めるのもまた問題だという気がします。いまはその微妙なバランスを問われいるのではないかなと思うんです。
中川Winny事件は私にとっても関心事項で、新聞記事など詳しく読みました。開発者の逮捕について、賛否両論が巻き起こったことも承知しています。知的財産の問題をどのように捉えるか、と改めて考えさせられる事件だったと思いますね。 逮捕者は優れた技術者だったのでしょうが、しかし著作権という知的財産をあからさまに否定したことが逮捕理由であるなら、その逮捕はやはり正当だったと判断するしかありません。 逮捕に批判的な人たちの中には、技術の進歩発展を妨げると指摘する人もありました。しかし先ほど申しましたように、技術進歩だけがITの目的ではありません。いまは知的財産立国という国家戦略があり、知識創発社会を発展させるという目的があるのですから、著作権を含む知的財産を否定するような行為は、国民がより豊かになり幸せになることに反します。誰もがモラルを守りながら、公正な競争を進めていける社会を本来目指すべきです。 Winny事件は情報モラルの問題、法整備の問題、政策の問題といくつものテーマから捉えることができますので、単なるIT関連の事件というより、もっと大きな視点で捉える必要がありますね。 眞柄もっと大きな視点といいますと。 中川これは政府の問題でもあります。知的財産への取り組みは、わが国だけの問題ではなく、プロパテント先進国であるアメリカとの政策協調にもかかわってきます。他国の知的財産にも、また互いの国益とも密接に関連してくる問題です。 眞柄中川先生はここ数年、アメリカの政策担当の方とも頻繁に話し合われ、知的財産を含めた政策協調にも力を入れておられるとお聞きしています。いまのお答えを聞いて、中川先生の知的財産に関するお考えは非常に明確だと感じました。 中川先日、科学技術基本計画の見直しについて議論していて驚いたことがあるんです。ある統計によれば、いまの日本に研究者や技術者と呼ばれる人たちが280万人から290万人いるそうなんです。人口1億2600万人のうちに2パーセント強いるということですね。 ところが、あと20〜30年もすれば、160万人ぐらいまで減少するというんですよ。そのとき日本の人口は約1億人に減っているとしても1パーセント台の半ばになる。要するに、研究者や技術者の人材確保が難しくなるということです。 このことは知的財産の問題とも関連してきます。日本は人的資源以外に目立った資源はありませんから、技術を支える人材の確保は国家戦略を考えるうえでも大きな問題です。知的財産が保護されない社会であれば、自然とその分野から人的資源は逃げ出していくわけで、深刻な事態を招くおそれもあります。努力しても報われない社会ということですからね。そうなると、次世代が安心して生活できる基礎というのは崩れてしまうと思うんです。 われわれ政治家の役割としても、いかに知的財産を保護して発展させていくか、また次世代に伝えていくか、これは長期的な国家戦略としても考えなくてはいけないと認識しています。経済安全保障の問題でもあるんです。 眞柄長期的な国家戦略という意味では、いま私どもが注目しているのはやはり中国の動向ですね。WTO加盟以降、急速に法整備が進んできたと認識しております。ただその一方で、法律が厳格に運用されているかというと、少し違うところもあると見受けられますね。この点について先生はいかがお考えですか?
中川たしかに法的整備は進んでいますが、新聞紙上で話題になっているように、実態はすさまじいものですよ。あらゆるものがコピーされる状態ですからね。先ほど経済安全保障の問題だといいましたけど、知的財産先進国であるアメリカとやはり政策的に協調すべきではないかなと思っています。これは情報安全保障ということができるかもしれませんね。 そこでのプライオリティは非常に大切です。よく標準化といわれますが、知的財産に関する標準化、ルール化をしっかり進める。それは一種の覇権闘争かもしれませんが、その点を通過しないで先に進めるはずがないと私は思うんですね。これは不可避の問題ですよ。 そうであるなら、中国も含め世界各国がお互いに胸襟を開き、知的財産の問題について話し合っていく必要があると思っています。 眞柄おっしゃる通りだと思います。世界的な流れという意味で、関連する話題にオープンソースがあります。 オープンソースに関しては、個人的には存在の是非を問うつもりは全くありません。ただ残念なのは、その成果物に対して知的財産を必ずしも肯定しているわけではないことです。そこに若干の矛盾が生じているという気もいたします。 最終的な判断はマーケットに任せるべきだと私は考えていますが、将来の知的財産立国を考えますと、いまのオープン的な流れを認めることと、知的財産を認めることの間には、非常に難しい問題があると思います。中川先生は以前から、オープンソースの論争については「国の政策は中立的な立場であるべき」とおっしゃっていましたが、改めてご意見をうかがうとしたらどうでしょうか。 中川私も、ビジネスは市場原理に従うものだという強固な考え方をもっていますし、それ以外に富は生まれないと考えています。基本的に政府が干渉すべきものではない、という立場に変わりはありません。 ところが、2003年ごろから既存のソフトウェアに代わるものとしてオープンソースのブームが叫ばれ、一部に偏った政策が進行したようです。 しかしながら去年ぐらいから、オープンソースの問題点がいろいろ指摘されはじめています。1つはセキュリティですね。いままで「オープンソースはソースコードが開示されているから安全である」という議論が横行していましたが、ソースコードが開示されていようがいまいが、セキュリティの問題とは無関係なわけです。当然ハッカーに攻撃されるし、企業情報や個人情報が盗まれてしまいます。
いまはオープンソースについて、セキュリティの問題をきちんと議論していこうというのが主流になっていますね。つまり、コストや性能だけではなくセキュリティの問題、それから知的財産の取り扱い、法的安定性といったことも含め、総合的に実利的な観点から議論しなおそうという動きです。個人であろうと国や地域社会であろうと、ユーザーという意味では同じですからね。 ここでも日米の政策協調を踏まえながら、官僚に任せるのではなく、日本やアメリカの政治家がリーダーシップを発揮していくべきだと思っています。 眞柄本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。 |
1)わが国初のIT戦略「e-Japan戦略」はこうして生まれた
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