
「中小企業には本当によい人材が来ない」と嘆く経営者が多いです。
しかし、私がいつも疑問に思うことがあります。中小企業に本当に優秀な人材が要るのでしょうか。そもそもどんな人材が優秀、なぜ優秀でなくてはならないでしょうか。
知人は15店舗ほどの飲食店チェーンを経営しています。彼は口癖のように「優秀な人材が集まらない」と言います。しかし、ここの店は挨拶こそ元気ですが、何回か通ってみると初歩的な問題が散見します。
注文と違ったものを持ってくるケースもありましたが、注文そのものを忘れたケースもありました。各店長には皆知人の旧知や親戚を採用して仲は良いですが、その職場には厳しい視線や熱い議論はありません。
原価や在庫の管理もいい加減ですし、店長や店員の評価も曖昧でした。
こんなところでは、よい人材は来ないに決まっていますし、来ても使えません。そもそも経営と業務のあり方をきちんと決めていないので、それに用いる人材のあり方は当然決まりません。問題点やそれを解決する方法も研究しないまま、単に人を集めても、それは集まるかどうか以前の問題です。そのような状況で人が集まったら悲劇です。集まらない方がいいくらいなのです。
ビジネスの成功には確かに人材は必要不可欠です。しかし、それはあくまでもそれぞれの発展段階に相応した人材でなければなりません。相応かどうかは会社のステータスとかの問題ではなく、その時点の最適可能なビジネスプロセスによって決まるのです。
まだ赤字ぎりぎりのすし屋チェーンの経営は規模拡大や多角経営よりも確実なサービス品質の管理が必要です。注文が間違ったことは社員の質の問題ではなく、厨房とウェイターのやり取りに明確なルールがないからです。注文を忘れたのは「忘れ」ではなく、テーブル番号を間違ったからです。これも業務の設計とそれに基づくトレーニングがないからです。
こんな簡単な問題が発見されず解決しないのは経営者が現場を観察し、勉強しないからです。これを解決するにはせいぜい専門家にアドバイスを求めるくらいで十分です。社員は現状のままで十分です。これ以上に優秀な社員を求めても問題が解決しないですし、人件費の上昇を招くのみです。
店長は知人や親戚を使うと給与の査定は市場価格でやりにくい点があります。それならアルバイト社員から店長を抜擢した方がましです。評価方法や店の基本を叩き込み、各店の仕入れや品質管理などの、難点を全体一括管理すれば一気に問題が解決されます。しかもコストが下がります。
難点の一括管理に人材がいなければ社長が勉強してやればいいのです。社長が「できない」といって逃げるならば、中小企業を経営すべきではありません。
中小企業でありながら大手病にかかる会社はたくさん見てきました。5人しかいない会社なのに全員が取締役。会長、社長、副社長、専務、常務です。お互いに目の前に座っているのに稟議書を回して判子を押し合っていました。こんな会社によい人材が来るはずもないですし、来てもすぐ逃げ出します。
中小企業はよくも悪くもワンマン経営でないとうまくいかないです。そのワンマン経営とは決して社員を無視する傲慢な経営ではなく、社員のレベルに合わせず、自分があらゆる社内業務の社内専門家になり、社員に外部の知恵と明日への希望を与えなくてはなりません。
このような経営者の下には普通の社員が一番いいのです。経営者は尊敬され、企業の行動力はますます強くなっていきます。やがて業績が伸び、会社は成長し、少しよい人材が自然に入ってきます。これにあわせて社長はさらに次の段階へと社員より先に進みます。
気がついたら自然によい人材が入り、定着していく会社になります。この過程が中小企業の成長する過程だと思います。