このコラムもいよいよ最終回。2500年前の孫子の兵法と最新のIT活用を融合させ、いかに営業力を強化するかを述べてきたが、最後の締め括りとして、営業力強化のためのIT投資の意思決定法とIT活用をうまく定着させる方法について紹介したいと思う。
■■孫子曰く■■
相守ること数年、以て一日の勝を争う。而るに爵禄百金を愛みて、敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり。
前回、現代企業の営業担当者は孫子の時代の間諜(スパイ)に当たると指摘した。孫子はこの間諜に対する報酬を出し惜しんで、大切な情報を取り損なうのは、最も愚かなことだと説いている。敵と何年も対峙して、いよいよ決戦という日がやってくる。この日のために敵情を探らせ、敵の弱点をつかむために間諜を放つわけだが、間諜には当然報酬を支払わなければならない。この金を出し惜しんで敵の情報を集められず、結局何年も準備してきた戦いに敗れるようなことになったらどうだろう。何年も戦いの準備をしてきたわけだから、すでに大金を戦費に投じている。それに比べれば間諜への報酬など微々たるものだろう。それを出し惜しむようなリーダーは「不仁の至り」である。現代風に言えば「馬鹿にも程がある」となるだろうか。
どこの企業でも、営業担当者の人件費やその他経費を考えれば、最低でも一人当たり月に50万円以上の支出をしている。このコラムで紹介してきたIT日報(SFA)の月額利用料は約5千円である。すでに費やしている50万円のコストの活用度を上げ成果を出すために、プラス5千円、このわずか1%の追加投資すらケチる企業がある。すでに50万円投下しているのに、である。もしIT武装しても1%分の成果すら出せそうにない営業担当者がいたら、その人間には辞めてもらい、浮いた50万円で残った担当者にIT武装させてやったらどうだろう。100名分の武装が可能となる。営業強化のIT投資はコストダウンではないので、ITの投資効果が測りにくい。しかし、プラスアルファの効果を狙う投資である以上、わずかな追加投資をケチって、大きなコストを見過ごすことのないようにしたいものである。
■■孫子曰く■■
卒を視ること嬰児の如し。故に之と深谿にも赴く可し。卒を視ること愛子の如し。故に之と倶に死す可し。
そして、IT投資を行ったら、それをしっかり活用し成果につなげなければならない。そこで大切なことは、日報を部下の行動管理ツールにしないことだ。では放置すれば良いのかというとそうではない。部下の頑張りや苦労や日々の気付きに対しフィードバックを与え、部下を見守るのだ。日報と言うとすぐに行動管理を思い浮かべる人がいるが、それでは上手く行かない。行動管理して欲しいと考える営業担当者はいないからだ。ところが頑張っていることは知って欲しいと思っている。苦労していることは理解して欲しいと思っている。「営業は売ってナンボ」「結果数字こそ全て」とは言っても相手のある仕事である。頑張っていても良い結果を出せないこともある。そのプロセスは認めて欲しいのだ。
孫子は、部下は我が子や赤ちゃんを見つめるように、慈愛をもって見守れと説いた。これがなければ部下を死地(深谿)に突撃させることはできないと言うのだ。営業現場は、ここで言う深い谷底であり、厳しい戦いの場だ。そこへ向かって部下が突撃してくれるのは、上司が常に部下を見守り、部下を認め、部下に関心(部下愛)を持つからだ。これを示すためにIT日報(SFA)のコメントを使う。部下の行動は管理するものではなく、見守り、アドバイスをする対象である。部下が書いた日報を読みもせず、コメントも入れないようでは、この上司のために突撃しようという部下を持つことはできないし、組織の勢いを作ることなどできない。それではせっかくのIT投資が無駄になってしまう。
人の心が動いてこそITが活かされる。
(完)