ITを活用して営業力を強化しようとすると必ず必要になるのが定量情報と定性情報の使い分けである。定量情報だけを頼りにするとバックミラーで後ろを確認しながら前に進んでいるような危なっかしいことになる。定性情報だけを信じて突き進んでいると、とんだ勘違いで間違った道に入り込むことになりかねない。今回は情報の扱い方について考えてみよう。
■■孫子曰く■■
智者の慮は、必ず利害を雑う。利に雑うれば、而ち務めは信なる可し。害に雑うれば、而ち患いは解く可し。
孫子は、物事には必ず表と裏、良い面と悪い面があり、その両面を合わせて考えることが必要だと説いた。
例えば、どこの企業でも整備されている定量情報である販売実績データで、自社の商品が売れて、業績が上がっているという事実が表されていたとしよう。しかし、現実には、顧客は喜んでその商品を買っているのではなく、不満があるのだが仕方なく買っていたとしたらどうだろう。実際、不満をたらたら言いながら、長い付き合いだからと買ってくれる顧客もいる。他の商品が欲しかったけれども品切れしていたので仕方なく買ってくれる顧客もいるだろう。データは嘘をつかないとよく言うが、データは「事実」を表してはいるが「真実」を表しているとは限らないことを知らなければならない。こういう時にはIT日報(SFA)で定性情報を確認してみる。そうするとそこには顧客の生生しい反応が書かれているだろう。
反対に、IT日報や会議で、営業担当者がある商品の評判が良いと報告したとしよう。定性情報である。そういう時にはそのまま鵜呑みにせず、定量情報で裏をとらなければならない。定性情報には、定量情報では伝わらない微妙なニュアンスや感覚を伝える良さがあるが、主観が混じったり、誤解があったり、意図的に曲げて伝えられたりする可能性がある。
定量情報と定性情報を重ね合わせて見ることで、「真実」が見えてくる。「事実」だけでは、なぜそうなっているのかが分からないので手が打てないが、「真実」が見えれば次にどうすれば良いかが分かる。これが大切だ。我々は評論家ではない。終わったことをデータ化して、ああだ、こうだと評論していては商売にならない。どうアクションするかを念頭において情報と向き合わなければならないのだ。
■■孫子曰く■■
間の事未だ発せず、而して先ず聞こゆれば、間と告ぐる所の者と、皆死す。
そして、情報は戦うために必須のものであり、IT時代だから情報が重要なのではない。2500年前の孫子の時代から情報とは大切なものだった。だから孫子は、情報を漏洩した者とその情報を知った者は殺せと断じた。
現代の営業担当者は、孫子の時代の間諜(スパイ)に当たる。フィールドに出て敵(顧客)の動きを探ってくるのが任務である。この情報によって戦いをどう進めるかを判断するのだ。間違った情報は間違った判断を導くことになるし、その大切な情報を漏洩するような人間は決して許してはならない。顧客情報や営業情報が大切なのは、個人情報保護法ができたからではなく、現代のビジネス戦争においても、その戦いを大いに左右する情報を漏らしてしまうような人間は厳罰に処さなければならないという掟があるからなのだ。
営業とは情報戦である。情報の扱いに対する確固たる指針を持たなければ、ITによってもたらされる大量の情報を充分に活用することができなくなる。
(次号につづく)