「兵とは詭道なり」。前回は、顧客の期待を良い意味で裏切ることをお勧めした。今回は、敵をも欺いて戦いを優位に進める方法と、戦わずして勝つ究極の戦略をご紹介しよう。
■■孫子曰く■■
千里を行きて労せざる者は、無人の地を行けばなり。攻めて必ず取る者は、其の守らざる所を攻むればなり。守りて必ず固き者は、其の攻めざる所を守ればなり。
微なるかな微なるかな、無形に至る。神なるかな神なるかな、無声に至る。
孫子は、敵が防御していない所を攻め、敵が攻めてこない所を守り、敵にとってつかみどころのない「無形」となり「無声」となれと説く。無形、無声とは、形なく声ない状態、最近の言葉で言えば「バーチャル」だ。これはまさにITの出番である。
例えば、競合企業が、東京と大阪に拠点を持ち、大都市を中心に展開し、地方には出張対応と代理店活用で営業展開をしているとしよう。自社は、規模も小さく、拠点も東京一ヶ所だけである。何社か代理店はあるが、充分に活用できているとは言いがたい。
そこで、競合との直接対決を避け、地方重視の展開を図る。札幌、仙台、新潟、名古屋、京都、広島、高松、福岡に拠点を出し、地方のマーケットを競合に先んじて押さえる戦略だ。しかし、自社は、小規模、少資金力、人材薄だ。ここにITを活用するのである。各拠点は、レンタルオフィスを借りたり、マンションオフィスで住所を確定させ、電話は東京の本社へ転送とする。CRM・SFA(IT日報)があれば顧客対応も問題ない。これにより、拠点を借りる費用・電話番が不要で、コストをかけず全国の拠点網が整備できる。
逆パターンもお勧めだ。地方企業が首都圏や中京圏、関西圏に進出する時は、バーチャル進出からスタートする。地方の景気が悪いと泣き言を言っていても誰も助けてくれないなら、景気の良い大都市圏に侵攻だ。「地方から出てきました」と言ってしまってはなかなか相手にしてもらえないが、「拠点も出して、しっかりフォローします」と言えれば商売の信頼感も違う。
■■孫子曰く■■
百戦百勝は、善の善なる者に非るなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。
敵と戦って勝つことは良いことだが、一番良いのは、戦わずして勝つことだと孫子は説く。敵が多いところで、勝った、負けたとやっているばかりでなく、敵のいない独自のエリア、土俵を作ることを考えたい。ITやネットワークを活用して、バーチャルに攻めてみたり、新しいビジネスモデルを構築してみるのも良いだろう。敢えて売れ筋から外れた商材を、コストをかけずに細く長く売っていく「ロングテール戦略」なども戦わずして敵を屈する方法であり、ITがあってはじめて可能となるビジネスモデルである。
2500年前の孫子の兵法をIT活用で現代に甦らせると、(経革広場にふさわしい)経営革新を実現していくことができるのだ。
(次号につづく)