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長尾一洋の「営業・風林火山」〜孫子の兵法とITの融合による営業強化論〜

 日報をIT化し、「計画書」にすることで受注率を上げ、顧客対応スピードを上げ、営業マンの思考訓練を行うことができれば、営業部門全体の「営業組織力」が高まり、業績アップにつながることは間違いない。更に今回は、顧客のダムによって将来的に安定した顧客基盤を作ることを孫子の「積水の計」を使ってご紹介しよう。この「積水の計」はIT活用の極意と言っても良い手法であり、企業業績アップという成果が出ることは疑う余地がない絶対、確実な方法である。

■■孫子曰く■■
勝者の民を戦わしむるや、積水を千仭の谷に決するがごとき者は、形なり。

 IT日報を「計画書」にするために必要なことは、「今日どうだったか」という報告を書くだけでなく、「次にどうするのか」という次回予定を書くことであった。実はその次回予定を書くことによって、オマケが付いてくる。それが顧客の反応である。次にどうするかを書こうと思えば、どうしてもその日の相手の反応を書いておかなければならない。意味が通じないからだ。例えば、営業マンがAという商品を提案したとしよう。そうすると顧客が「良い商品であることは分かったけど、ちょっと高いな」と言ったとする。これが顧客の反応だ。価格に懸念を示されたわけだ。そこで次回予定は、「次回は、イニシャルコストとランニングコストのコスト比較表を作って、イニシャルでは高いように見えても、ランニングまで考えれば2年で元がとれる、という提案をします」となる。この次回予定を書く時には、必ず相手の反応を書いておかなければ話の流れが分からない。次回予定を書くことを徹底させれば、自ずと顧客の反応を書くことになるのだ。

 これがITで処理されているわけだから、当然顧客の反応は蓄積されていくことになる。顧客の反応とは、もう少し具体的に言うと「顧客のニーズ」と「競合の動き」である。この情報がITによって蓄積される。これが孫子の「積水の計」を現代に活かす「顧客のダム」作りである。

 孫子は、勝利のためには、ダムを作ってせき止めた水を谷底に向け一気に流すような仕掛けが必要だと説いた。ダムを作ることで勢いを作る。それが孫子の戦い方だ。顧客の情報がダムになれば、営業の戦いは楽になる。見込客が釣り堀に溜まって、時期が来れば浮いてくるような感じだ。

 今売れなくても、来年には買ってくれるかもしれない。競合に負けた先でも次の入れ替え時期にはリプレースできるかもしれない。商談の中で聞き出した顧客のニーズや競合の動き、何をいくらで買ったのか、なぜ買わなかったのか、などの情報をITに蓄積する。そうすると例えば、5年リースで競合商品を購入していた場合には、4年経過したところでIT日報から他社からの入れ替えターゲットリストとして表示される。営業マンはそのリストに当たって、「実は4年前に私共では実現できていなかった機能があって、他社に負けていたのですが、新機能が追加になりまして、御社のニーズを満たすご提案が出来るようになりました」と蓄積された情報を元に話しを切り出す。全くの新規に飛び込むよりも余程効率が良いし、相手の事情もつかんだ上での提案だから、提案の精度も高くなる。

 ITを活用する時には、将来再利用した時に有効な情報を入力しなければならない。それがIT活用の基本だ。情報を蓄積するだけなら紙でも良い。しかし再利用することを考えればITの方が断然便利だ。逆に言えば、ITを活用する以上、後で再利用する情報を入力しておかなければ、せっかくのITの力を活用できないことになる。ほとんどの企業は営業マンにIT日報を打たせるとなると、営業マンに自分の行動内容を報告させて行動管理をしようとするがそれは間違いである。大切なことは、次にどうするかと、顧客の反応である。この情報処理がIT活用の極意であり、孫子の「積水の計」を現代に活かす方法なのだ。
(次号に続く)

長尾一洋

コラム概要

(株)NIコンサルティング代表取締役、中小企業診断士
珠玉の兵法「孫子」を現代企業の営業改革に取り入れ、既に1600社以上の 企業において実績をあげる営業のスペシャリスト長尾一洋が語る“温故知新” 営業改革コラム。現代経営に必須であるIT活用を孫子の兵法と融合させた ユニークな視点で会社経営を解説。

筆者プロフィール

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