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長尾一洋の「営業・風林火山」〜孫子の兵法とITの融合による営業強化論〜

 負け戦はしない。これが孫子の兵法の根幹と言っても良い。戦争で負ければ死に、国が奪われ、再戦はないからだ。だから孫子は、負けないためにどうするかを必死に考えたのだろう。孫子には負け戦をしないための智恵が詰まっている。

 さて、読者の皆さんは日々どのような戦い方をしているだろうか。ビジネスも戦争である。命までは取られないが、負ければ倒産し、社長は個人保証した借金に負われ、社員は路頭に迷う。決して負けてはならない。

 当然のことながら、営業も同じ。営業に失敗し、「二度と来るな」と言われたらそれで終わり。人口減少時代だから、他で新規開拓して挽回するというのもどんどん厳しくなっている。仮に失注しても「また寄ってくれ」と言ってもらえなければならない。決して負け戦をしてはならないのだ。

■■孫子曰く■■
古の所謂善く戦う者は、勝ち易きに勝つ者なり。 故に善く戦う者の勝つや、智名無く、勇功無し。

 負けないためにどうするか。孫子は、勝ちやすい相手と戦えと説いた。そんなの当り前じゃないか、と言いたいところだが、その当り前に勝つ状況を作り出すのが優れたリーダーなのだ。当り前だから、勝っても「あのリーダーは智恵がある」とか「勇敢な人だ」などと称賛されることがないと言う。しかしそうしたリーダーこそが本物のリーダーである。部下の命(努力)をムダにしない人なのである。

 営業マネージャーが部下に「当たって砕けろ」などと無責任な指示をしていないだろうか。どんな顧客でも良いから、買ってもらおうとするような無理な営業は、時に「大手柄」を生んだり、その努力は誉められることがあるかもしれないが、多くの場合、大した成果も得ることはできない割に、多大な無駄とコストを生む。営業は、お役に立てると確信した顧客に対してのみアプローチすべきなのだ。当たって砕けている暇があったら、事前に顧客のニーズをつかみ、上司−部下の事前検討を行って、お役に立てると確信を持てた先(見込客)を訪問することに時間をかけた方がよい。

 本人がお役に立てるとも思っていない顧客に対し、商談したり提案したりするというのは顧客を馬鹿にしている。だから「二度と来るな」などと言われてしまうのだ。当たって砕けるのは営業マンの勝手だが、勝手に当たられる顧客の身にもなってみよと言いたい。

■■孫子曰く■■ 
明主・賢将の、動きて人に勝ち、成功の衆に出づる所以の者は、先知なり。

 では、どうやったら勝ちやすいかどうかが分かるのか。先に相手の情報をつかむからである。孫子は優れたリーダーが成功する秘訣は特別な能力や運や才能ではなく、相手の情報を先に知ることだと説いた。武田信玄も、諸国使番衆という間諜(スパイ)を周辺国に送り込んで情報を取らせたことで無敵軍団を作った。勝つためには事前情報が必要なのだ。

 現代企業において間諜の役割を果たすのが、営業マンである。社外に出て、情報を集める。この集めた情報を瞬時に社内に伝えるのがIT日報(SFA・CRM)であり、私はこれを「日報神経」と呼んでいる。現場の情報が集まることで、お役に立てる相手かどうか、競合がどのような動きをしているかが経営者やマネージャーに伝わり、そこで正しい意思決定ができる。そこでの決定はまた「日報神経」を通じて現場の営業マンに伝えられ、負け戦を回避する。先に知り、先に考え、先手を打つから勝てるのであって、気合や根性で勝てるようになるわけではないのだ。IT日報の活用によって、「勝って当り前」「売れて当然」の状況を作り出すことが経営者や営業マネージャーには求められる。
(次号に続く)

長尾一洋

コラム概要

(株)NIコンサルティング代表取締役、中小企業診断士
珠玉の兵法「孫子」を現代企業の営業改革に取り入れ、既に1600社以上の 企業において実績をあげる営業のスペシャリスト長尾一洋が語る“温故知新” 営業改革コラム。現代経営に必須であるIT活用を孫子の兵法と融合させた ユニークな視点で会社経営を解説。

筆者プロフィール

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