「パソコンをカチャカチャと打っていて営業なんかできるか!」と反論を受けることがある。ITを活用して営業力を強化しましょうと提案すると、足で稼いで来た営業の姿とIT活用している営業の姿が合致しないのだろう。確かに個々の営業担当者だけに注目すれば、ただITを持たせたからと言って、急に営業力が高まったりはしない。IT活用によって強化するのは、「営業組織力」であって、部門全体、会社全体の営業力を強化することを考える必要がある。そして、ここでも孫子の兵法が役に立つ。
■■孫子曰く■■
善く戦う者は、之を勢に求め、人に責めず。 故に能く人を択びて勢に任ず。勢に任ずる者の、其の人を戦わしむるや、木石を転ずるが如し。
人の何倍も売る「凄腕営業」がいれば助かるし、業績を上げるのも簡単かもしれないが、そうした属人的な能力に頼るのではなく、組織全体の勢いを作ることが重要だと、孫子は説いている。どんなに優秀な営業担当者であっても、生身の人間である以上、病気をすることもあるし、事故に遭うこともある。そして、いつかは辞めて行くし、退職時に人脈や顧客情報まで流出してしまっては、組織とすればマイナスを生むことになる。
何しろ、優秀な営業担当がいれば業績が上がり、担当者のレベルが低いと売上が上がらないというのなら、経営者や営業マネージャーは必要ないことになる。上に立つ者が考えるべきことは、優秀な営業担当者がいてくれる内に、「いついなくなっても大丈夫なようにしておこう」と組織力を高めることである。真のリーダーとは、部下を批評する人ではなく、どのような部下であってもそれを活かし、動かしていく人のことを言うのだ。こうした属人的営業から組織的営業への転換は、ITツールなくしては進まない。生身の人間の限界を超えようとするものだからだ。今は、どんなに凄腕でも営業担当者だけで価値を提供できる時代ではなくなっており、コンプライアンスの問題もある。営業を営業担当者任せにしていてはならないのだ。
■■孫子曰く■■
衆を闘わしむること寡を闘わしむるが如くするは、形名是なり。
そして、組織全体を動かすために必要なことは、情報共有と情報伝達だ。孫子は、大軍や大組織を、少数精鋭部隊のように動かすには、旗を立てたり、鐘を鳴らしたり、太鼓を叩いて合図をするなど、情報共有と情報伝達が肝要であると説いた。ITがブームだから情報共有や情報伝達が必要なのではなく、2500年も前から組織運営の基本だったのだ。現代組織では、今さら旗を立てたり、太鼓を叩く訳には行かないから、道具としてITを使う。それを紙や口頭でやっていたのでは遅いし、情報の再利用もできないから、厳しい戦いを勝利に導けない。時代が変わっても原点は変わらないが、やり方や道具は変えなければならないのだ。
全社営業体制を作るためには、部門間や拠点間で生じる矛盾や摩擦を乗り越える組織体制を作ることが必要であり、そうした組織で統制のとれた動きをするためには、情報を共有し、情報伝達スピードを上げ、必要な情報がきちんとやりとりされる仕組みを作ることが欠かせない。SFAやCRM、IT日報といったITツールはそのための道具である。
(次号に続く)