経革広場は情報化で経営革新を目指す中小企業、活性化を目指す全国の地場産業、自治体・公的団体を支援します。
従業員数が 10 名程度の地方都市における中小零細企業の社長、これが私の接するお客様だ。そんなお客様といろいろお話をしていると、そこには理屈で割り切れない生身の人間の生き様が見えてくる。頭では理解できても、いざ決断しようとするといろいろ目先の欲なりエゴなりがでてきて合理的な判断ができない。そこには奥様の意見が影響したり子供の事情があったり、まさに人間の欲とエゴの渦巻く中で経営を考えている社長の生き様が見えてくる。
30 代で創業した社長が 40 代に入ってくる。今までがむしゃらに上へ上へと登っていたと思った道が、急に下り坂になって見えてくる。今まで気にならなかった書類の文字がかすんで見えなくなる、急に虫歯になりやすくなる、まわりから厄年は気を付けろといわれ始める。40 代はまだそんな程度だが、今度は 50 歳になるとき、ふと 60 歳が見えてくることに気づく。60 歳という「定年」の文字が見え隠れする。そんなことを感じ始めるといろいろ考え出す。50 歳になる今何かをやらなければ、自分の人生は何もなくて終わってしまうのではないか、今こそ何かやらなければならない人生の時ではないか。そんなことを考える時期、社長が 40 代から 50 代前半の企業は成長期から成熟期にある企業といわれる。
社長はあちこちで企業はどうあらねばならないかと聞きかじってくる。社員の前ではそれを受け売りして「我が社も IT 化を進めて、次なるステップに進まねばならない」などと話をする。人前ではどんどん IT 化を進めた方がよいと口では言う。それではと具体的なことを社長に提案すると、「そんなやり方をしたら社員が戸惑って返って効率が悪くなる」「あまりにも変化がありすぎてお客様に驚かれてしまう」などと、いろいろ理由を付けて踏み切らない。社長は社員やお客様のことを口実にするが、実は一番抵抗しているのは社長自分自身なのだ。
IT 化を進めていくということは、実は情報公開が基本になる。今までは、全ての情報が社長のところに集まって、社長が決断して社長の指示で社員が動いていた。だから社長が会社の全てのことを熟知しており、社長こそが「会社」そのものなのだ。ところが社長しか持ち得なかった情報を社員が共有できたとすると、社長にいちいち指示を仰がなくとも判断基準さえ明確になっていればその場で社員が即決することができる。お客様の要望に素早い対応が可能となりビジネスチャンスを逃すことがなくなる。ここに IT 化の狙いがある。だから IT 化を進めるということは、トップダウンのピラミッド型組織からフラットな組織へと変わってゆくことを意味する。
この組織のフラット化が IT 化を進めていく場合の方向性となるわけだが、このことを社長が十分認識していないと、IT 化は進んでいかない。フラット化という意味では、例えばグループウェアの導入などで社長自身のスケジュール情報も公開されることになる。ここのところが社長から見るとおもしろくない。いままで自分のことについて社員からどうのこうのと言われることはなく、せいぜい奥さんが愚痴を言うくらいが関の山だったのだが、自分のスケジュール情報がグループウェアに掲載されるようになって情報がオープンになると、社長の自由がきかなくなる。建前上、情報を公開して共有すると社員に公言しているモノだから、自分だけの情報をクローズにするわけにいかない。実はこの点が社長にとって一番の気がかりとなって結局グループウェアの導入に消極的になってしまったりする。社長が自分の中のエゴや欲を押さえて、会社のため、お客様のためにはどうしなければならないのかをきちんと意識できていれば、IT 化を進めることによる組織のフラット化は当然の流れと認識できるはずではあるが、現実の中小零細企業においてはフラット化に一番抵抗しているのは、実は社長自身なのだ。
経営者は会社を発展させるために何を考えなければならないかというと、それは社長自身の欲やエゴをどうやって押さえてゆくかという「自分との戦い」が一番大きな課題となる。そんな人間くささが顕著に表れる中小零細企業のオヤジを相手に、私は地方都市で IT コーディネーターとして活動している。
2011/11/29 14:29:58