半年にわたってきたコラムも今回が最終回です。
最後は、女将塾という事業組織がどういった目標に、どのようにしてたどり着こうとしているのか、その戦略について述べたいと思います。
女将塾は97年にスタートし、来年で10周年という大きな節目を迎えます。
これまで、私が所有する「城泉閣」や「銀花」といった旅館をベースに女将塾という場を用意し、運営受託先の他の旅館、料亭との連携で女将教育という事業をなんとか続けてくることができました。しかしながら女将塾という小さな組織がこの事業モデルを回して行くにはいくつもの限界が見えてきました。従来の女将塾ではどうしても効率が悪いのです。私がここでいう効率とは、女将塾という私的な組織のお金の稼ぎ方のことを指しているのではありません。日本の旅館にもっと元気になってもらいたい、という女将塾の夢に到達するのには、あまりにも時間がかかるという意味です。

女将塾の立ち上げと小さな実績を積み上げてきたこれまでの10年を創生の第1期とすれば、これからの10年を加速のための第2期にすべく私は大きな決断と実行をしました。
それは、私が所有していた2つの旅館を事実上売却したことです。
つまり私は、旅館業ではなく、女将育成業そのものに専念していくと明確に事業ドメインを定めたのです。これまで業務委託先のオーナーには旅館の所有とその経営の分離について説いてきましたが、私自身、それに100%準じていなかったこともあり、このシンプルにして大胆な結論に対してはあまり迷うところはありませんでした。周囲からは、倒産したのではないか、気が狂ったのではと憶測を呼んだようですが(笑)
私としては、愛する旅館を手放したというセンチメンタルな気持ちよりも、借金がなくなったという開放感の方が大きいほどです。旅館の体質はたしかに保守的ではあるのですが、その背景の1つには莫大な借金という要素があります。私は女将になって以来、すっと背負っていたこのプレッシャーと決別したからには、女将塾の大きな夢の実現に対し、これまで以上に積極的な仕掛けや新規投資を行おうとワクワクしているところです。
夢の実現加速のためのもう1つの決断は、強力なビジネスパートナーと業務提携を行ったことです。この上場企業は全国に約30カ所のホテルや旅館を保有し、その事業拡大にあたり女将塾にお声をかけていただきました。今回の提携により、これまでの女将塾では実現できなかった規模のオペレーションに挑戦することや、女将だけでなく旅館運営にあたる中堅マネージャーの育成といった新規事業の展開も視野に入ってきました。
さきの旅館売却の話も、実はこのパートナーへの売却でして、運営指導は女将塾があたるという契約ですので、所有は変わるが、運営は引き続き私たち女将塾がサポートするというからくりになっています。
私自身は、11/15に新規オープンする「季の湯 雪月花」という旅館で、15名の女将候補生を新規採用し、女将育成・運営指導を行う予定です。住み慣れた城崎を離れ、箱根強羅温泉に主となる活動拠点もすでに移しました。
マニュアルのない女将塾をどのように運営し、志のある女将を輩出し、日本の旅館をいかに元気にしていくか、私たち女将塾も知恵を絞り、チャレンジを続け、変化をしていきます。
最後になりましたが、これまで不定期発行の本コラムをご愛読いただいた辛抱強いみなさまに御礼とお詫びを申し上げます。また、期せずして女将塾の大きな転機となったこの半年間で、私たちの思いやノウハウを整理する機会をいただいた「経革広場」編集部に感謝いたします。
【お知らせ】
箱根強羅温泉 季の湯 雪月花
全161室に檜の露天風呂つきのすてきな旅館です。
ぜひお越しをいただき、女将塾の指導が実っているかどうかお確かめいただければと思います。